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ドワーフの娘 焔の旅鍛冶-旅立ちとドワーフの宝  作者: ま〜ち


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11/14

11 私の決意は

 私の部屋に連れて行ってもらい、ベッドに横にならせてもらった。

 軋む音を立てながら、木のベットが私の体を受け止めてくれてた。

 

 ベッドに横になった瞬間、木の匂いと毛布の匂いが鼻をくすぐり、「帰ってきたんだ」と実感した。そしたら凄く体に疲れがあらわれてきたのを感じる。ベッドで横になりながら顔をすぐ横にある窓に向けたら、2つの三日月が見えた。


 疲れているせいか、ぼやけて見える月が、あの広間の青白い炎のように揺らめいて見えた。


 私を背負っていたリコが部屋を出ようとする。その背中に「ありがとう」とすこし掠れた声で言ったら、リコが振り向いて私を見た。

 しばらく黙ってから、覚悟を決めたように息を吐いて言う。


 「明日の朝、日が少し出てから出発するつもりだから」

 「…うん、わかった」

 私はまだどうするか決めきれていなかった。

 だから、それしか言えなかった。

 ドアの向こうの灯りがリコを照らす。

 反対に、私は灯りもつけずにベッドで横になっている。

 まるで、彼と行かなければ、人生が暗く閉ざされてしまうような気がした。

 思い過ごしだし、考えすぎだと思う。


 だけど――


 天井を見ながら色々と考えようとしたそのとき、ドアをノックする音がした。

 返事をすると、ドアが開く。


 「おう、大丈夫か、ミーシャ」

 親方が部屋に入ってきた。


 「体がいろいろと痛くて、もう無理」

 「本当に無茶したな、ミーシャ。とりあえず、これを飲んでおけ」

 差し出されたのは、私がいつも使っているカップ。

 そこから湯気が立ちのぼっていた。

 たぶん、ドワーフに伝わる回復茶。


 鍛冶屋の手伝いが終わったあと、剣の稽古がある日はいつもこれを出してくれた。

 苦いけど、翌日には動けるようになるから助かるんだよな――そう思いながら、カップを受け取った。

 軋む体を押し起こして「ありがとう」と言い、両手でお茶を一口飲む。

 一息ついたとき、親方が真剣な目で私を見ていた。


 「ど、どうしたの?」

 「いや、何。まあ、あれだ。無事に戻ってこれてよかった」

 親方は歯切れの悪い声で言いながら、視線をあちこちに向けていた。

 「うん。まあ…あ、そういえばアークとは話した?」

 「アーク?…ああ、あのうるさい剣か。少しだけな。あまりにもうるさいから炉に入れてやろうかと思ったわ」


 雰囲気を変えたくてアークの話をしたら、私と同じことを考えていた。


 「私も、そう思った」

 「…そうか」

 少し笑って、緊張が解けてきたのか、それとも覚悟が決まったのか。

 親方は再び、真剣な目を私に向けた。


 次の言葉を聞きたくなかった。


 外から虫の声がして、空には三日月が浮かんでいる。

 木の香りが穏やかに漂うこの部屋で、まだ親方と穏やかに話していたかった。


 「…お前、冒険しに行きたいか?」


 決断の時間が来たみたい。

 私はカップに目をやり、湯気が立ちのぼる液面をじっと見つめる。


 「俺の目を見ろ。真面目な話だ、ミーシャ」


 「…分かってる」


 液面から親方に目を向けると、月明かりで親方の顔が青白く照らされていた。

 一度、息を吸って吐く。あの戦いのときのように。


 「私、冒険者に…なりたい」

 「そうか。そう言ってたもんな…良い目をするようになった」

 「でも…」


 「焔が灯されたのだ、ミーシャ。焔がともったお前は、もう止まらないし、止められない。目を見れば分かる」


 私がまたカップに目を落とすと、親方がそっと頭に手を置いた。


 「ミーシャ。いろいろと悩んだり、不安だったりするかもしれない。

 だけど、それは恐怖に値しない。お前の焔は灯された。暗闇を恐れるな。

 己が持つ焔だけを頼りに、前へ進め」


 幼いころに言われた言葉を、優しく、囁くように繰り返してくれた。

 ドワーフの宝があるって思った時、ゴーレムと対峙した時も、私の胸の奥に確かに焔が宿った気がした。


 「…今日はもう寝ろ。おやすみ、ミーシャ」


 私はまた、何も言えなかった。

 言いたい言葉はたくさんあったのに。

 自分の育ての親なのに。口が石のように固まり、言葉が出てこなかった。


 ただ、部屋を出ていく親方の背中を見送ることしかできなかった。


 そして――


 私の勘違いじゃなければ、親方の背中は少し寂しそうに丸まっていた。

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