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学園心霊ミステリー『幽子さんの謎解きレポート』  作者: しんいち
Report4 契約の箱

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九箱目 謎の小部屋

2階から現れる不思議な物に翻弄されながらも、時間は刻々と過ぎていき、関口さんの方から「あと少ししたらお昼だから切りの良いところで終わりにしよう」と提案が出た。


関口さんの提案が耳に入ると、時間の流れが一瞬止まったように感じた。周囲の雑音が遠のき、心の中で「もうすぐお昼か」と思いを巡らせる。二階の荷物は、少しずつ片付いてきたものの、まだ完全には終わっていない。自分は、残された時間を無駄にしたくないという気持ちが強くなり、思わず関口さんに声をかけた。


「関口さん、最後にあの場所を調べておきませんか?」指差した先には、二階の角にひっそりと佇む板張りの小部屋があった。そこには大きな段ボールが縦に二つ置かれ、明かりが点いた瞬間、何か不思議な違和感を覚えた場所だった。


関口さんは少し考え込んだ後、頷いた。「僕も気になっていたんだ。みんなで調べてからお昼に行こうか。」その言葉には、彼の探求心が色濃く表れていた。


「何だろう?」と呟きながら、自分たちはその小部屋の周りに集まった。幽子が刀が入った箱を抱えながら、「トイレじゃないのか?」と冗談交じりに言うと、みんなも思わず笑ってしまった。

しかし、実際のところ、その小部屋の大きさからしても、確かにそれは十分にあり得る話だった。


笑い声が静かな二階に響く中、関口さんが言った。「取りあえずこの大きな段ボールをどけてみようか。しんいち、反対側を持ってくれるかい?」その言葉に「はい」と答え、自分たちは二人がかりで段ボールを動かすことになった。しかし、手をかけた瞬間、何か違和感を覚えた。


関口さんもその違和感に気づいたらしく、驚いたように言った。「これ、空だよね?」自分が頷くと、彼は一人で軽々と段ボールをどけてしまった。


その時、関口さんが目を丸くして言った。「しんいち…、ドアがある。」彼の声には興奮が滲んでいた。段ボールはまるで小部屋の入り口を隠すように置かれていたのだ。


自分はすぐに下の段ボールの中を覗き込んだが、これもまた空箱だった。すぐにその段ボールもどかすと、ついに小部屋のドアが姿を現した。ドアは古びていて、まるで長い間誰にも開けられることなく、静かに待っていたかのようだった。


幽子はドアを見つめながら、真剣な表情で言った。「本当にトイレなんじゃないのか?」その言葉には冗談の影はなく、彼女の目はドアの向こうに何かを求めているようだった。


自分は心の中に湧き上がる好奇心を抑えきれず、「開けてみようか?」と全員に問いかけた。すると、関口さんが興味津々の様子で「頼むよ!」と声を上げた。


幸いにも、ドアには鍵がかかっていないようだった。自分は錆びて赤茶けたドアノブに手をかける。幽子はその様子を冷静に見つめて。椿ちゃんは幽子の後ろに隠れるようにして、不安げにドアの方を見ていた。


心を決めた自分は、一気にドアを開けた。「あれ?」思いがけない光景が目の前に広がり、拍子抜けしてしまう。3人も「えっ!」と驚きの表情を浮かべ、小部屋の中を覗き込んでいた。


そこにあったのは、一本の梯子だった。


梯子の先を見上げると、天井にはさらにもう一つのドアが見えた。この蔵には、どうやらもう一階上があるらしい。予想外の状況に、自分は思わず関口さんに尋ねた。「関口さん、この上のこと何かお父さんから聞いてますか?」


関口さんは首を振り、少し困惑した様子で「いや……、始めて知ったよ。」と答えた。その瞬間、幽子が平然とした口調で言った。「梯子上がって確認すれば良いんじゃないのか?」彼女は冷静に正論を提案してきた。


しかし、幽子のその提案に自分と関口さんは一抹の不安を覚えた。先程の奇妙な人形や、異様な刀、訳の分からない物が次々と発見されているこの状況で、果たして何が待ち受けているのか。興味よりも恐怖が心を支配していく。「今度は何が出てくるのか?」その思いが胸を締め付けた。


そんな自分の気持ちを察したのか、関口さんが「僕が上がろうか?」と言ってきた。しかし、古びた梯子の様子を見るに、関口さんよりも軽い自分が行くのが良いだろうと考えた。ましてや、危険かもしれない場所に幽子や椿ちゃんを行かせるわけにはいかない。「いや!自分が見てみます」と、勇気を振り絞って宣言した。


一呼吸おいて、梯子に手をかける。幽子も少し心配してくれたのか、「しんいち、気をつけろよ」と声をかけてくれた。椿ちゃんも「しんいちくん、気をつけてね」と声援を送ってくれる。心強い言葉に少しだけ勇気が湧く。


登る前に梯子の様子を確かめるが、思いのほか丈夫そうに見える。自分は少し安心し、ゆっくりと登り始めた。「ギィ、ギィ、ギィ」と、梯子がきしむ音が耳に響く。心臓が高鳴り、手のひらに汗がにじむ。自分は天窓に手をかけ、押してみた。「ギーィ、バタン!」と天窓が開き、恐る恐る三階と思われる場所を覗いた。


当然、その場所には暗闇が広がっていて、何も見えない。まるで、何かが潜んでいるかのような不気味な静けさが漂っていた。自分は一旦顔を引っ込め、関口さんに「懐中電灯貸してください」とお願いをした。関口さんは電気を点けて「はい!」と自分の手に渡してくれた。


懐中電灯の光を頼りに、再び三階付近を覗き込む。天井は思いのほか低く感じ、まるで自分が小さな子供になったかのような錯覚に陥った。「屋根裏部屋なのかなぁ?」と考えながら、周囲を照らす。薄暗い空間には、棚や家具は見当たらず、ガランとした静けさが広がっていた。


「やっぱり屋根裏部屋かぁ!」と安心した瞬間、懐中電灯の光が何か異様な物体を捉えた。

「えっ!」自分の動きが止まり、心臓が一瞬止まるような感覚に襲われた。目の前に広がる光景は、想像を超えたもので、自分は目を奪われて金縛りの様に動きが止まってしまった。


その異変に気づいたみんなが、心配そうに口々に問いかけてくる。「どうした?」「何かあったのか?」「どうしたの?」その声が遠くから聞こえるようで、まるで自分の意識が別の世界に引き込まれているかのようだった。


そんな時、「おい!しんいち!」と一際大きな幽子の声が響き渡り、その瞬間、自分は我に返った。「あぁ!ゴメン」と、やっとの思いで答える。心臓がドキドキと高鳴り、冷や汗が背中を流れる。


「何が見えるんだ?」と幽子が問いかける。その声が、まるで自分を現実に引き戻すかのようだった。自分は、恐る恐る口を開く。


「教会がある……」


その言葉が、静寂の中に響き渡る。自分の声は震えていたが、確かに懐中電灯の照し出す先には、古びた教会の姿があった。薄暗い空間の中で、十字架のシルエットが不気味に浮かび上がり、まるで長い間忘れ去られた場所が、今まさに目を覚まそうとしているかのようだった。

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