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学園心霊ミステリー『幽子さんの謎解きレポート』  作者: しんいち
Report4 契約の箱

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五箱目 お屋敷

「到着したよ!」という静馬さんの声が響くと、自分たちは思わず「ありがとうございます」と口を揃えてお礼を言い、外へと足を踏み出した。


目の前に広がるのは、噂に聞いていた黒気味山のお屋敷。まるで時が止まったかのように、荘厳に佇んでいるその姿は、自分の心を一瞬で捉えた。大正時代に建てられたというが、近年の改修によって古さは感じられず、むしろ新たな息吹を宿しているようだった。


しかし、その美しさはただの新しさではない。重厚な木材で作られた扉や、精巧な彫刻が施された窓枠は、歴史の重みを感じさせる。まるで映画のセットのように、非現実的な美しさを放っている。


メンバーの中には、思わず「おーーぉ!」と感嘆の声を上げ、目を輝かせながらキョロキョロとお屋敷を眺める者もいた。


そんな自分たちに、関口さんのお父さんが優しい声で言った。「じゃあ、みんな一旦お屋敷の方に上がって。荷物を置きたい人もいるだろうし、着替える人がいたら言ってね。」


まさか町の都市伝説の舞台となっている場所に足を踏み入れることができるとは思ってもみなかったため、思わず「入れるんですか?」と口をついて出てしまった。

すると、お父さんはにっこりと笑い、「もちろん!遠慮せず上がって」と答えた。その声には、どこか誇らしげな響きがあった。


お屋敷の中に足を踏み入れると、畳の良い香りが鼻をくすぐる。心地よい香りは、まるで時を超えた静けさを運んでくるようだった。

関口さんのお父さんの案内で、自分たちはお屋敷の中を見て回ることができた。

古い作りではあるが、木造の構造はしっかりとしていて、まるで有名なお寺にでも来たかのような緊張感が自分の心を包んだ。


部屋は和室だけでなく、洋間も多数あり、宣教師が滞在していたという噂が本当なのかもしれないと、ふと考えさせられた。壁に飾られた絵画や、重厚な家具がその歴史を物語っているように感じられた。


自分たちは大広間に通されることになった。

畳が敷かれたその広い部屋は、高級旅館の宴会場のように広く、壮大さを誇っていた。

天井は高く、光が差し込む窓からは柔らかな日差しが差し込み、部屋全体を温かく包み込んでいる。広間の中央には、豪華な座卓が置かれ、周囲には美しい屏風が立てられていた。


その光景に、自分は思わず息を呑んだ。目の前に広がる景色は、まるで夢の中にいるかのような幻想的な美しさを湛えていた。「凄いねぇ!」、「おーぉ!」と、周囲から上がる驚嘆の声が、心の高鳴りを一層引き立てる。自分たちは一旦荷物を置き、目の前の景色に心を奪われていた。


少しざわついているメンバーたちの様子を見ていた関口さんが、ふと口を開いた。「じゃあ、5分くらいしたら、玄関前に集合にしようか?」その提案に、自分たちは一斉に動き出した。軍手を取り出したり、トイレに行ったりと、準備を始める。期待と緊張が入り混じった空気が漂っていた。


準備が整ったメンバーは、次々と玄関先に集まっていく。全員が揃ったところで、関口さんの案内で蔵の方へ向かうことになった。蔵はお屋敷の裏側に位置しており、敷地に入った瞬間から「あそこかな!」と、なんとなくその場所を感じ取っていた。しかし、実際に蔵の前に立つと、その圧倒的な存在感に言葉を失った。


初めて見る蔵は、想像以上に大きかった。普通の二階建ての一軒家よりも、頭一つ大きい印象を受ける。横から見ると、その奥行きもまた驚くべきもので、「1日で終わるのか?」という不安が胸をよぎった。


蔵の外観は確かに古びており、時の流れを感じさせる。ひび割れた箇所が何ヵ所かあり、壁の一部は剥がれかけて、まるでこの蔵が長い年月を耐え抜いてきた証のようだった。


自分たちがその蔵を興味深く観察していると、関口さんのお父さんと静馬さんが作業着と軍手を身にまとい、颯爽と合流してきた。


「じゃあ、みんなこれからよろしくね。」静馬さんの声は、どこか頼もしく響いた。「あとから家族の方も手伝いに来るから、それまでに少しずつ始めようか。」その言葉に、自分たちの心に一層の期待が膨らむ。静馬さんの笑顔には、これからの作業への決意が溢れていた。


「じゃあ、やりますか!」自分たちは気合いを入れ、蔵の掃除に取りかかることにした。言葉にした瞬間、心の中に湧き上がる期待感が、始まりを告げる鐘の音のように響いた。


その声を聞いた静馬さんも、少し気合いが入った表情を浮かべ、ポケットから蔵の鍵を取り出した。鍵は古びていて、手のひらに収まるその重みが、これからの作業への決意を象徴しているかのようだった。


重厚な扉がゆっくりと開かれる。


内部からはほのかな湿気と、長い間忘れ去られていた物たちの香りが漂ってきた。

自分たちは、始めて見る蔵の内部を想像し、胸が高鳴るのを感じた。暗がりの中に隠された宝物や、過去の物語が待っているのではないかと、ワクワクが止まらなかった。



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