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学園心霊ミステリー『幽子さんの謎解きレポート』  作者: しんいち
Report6 前編 生き写し

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119/121

四枚目 調査開始

幽子に関口さんの事を話をした数日後、ミステリー研究部の調査が始まった。そしてその場には幽子の姿もあった。


自分が関口さんに幽子も協力したいと話したところ、彼は少し驚きつつも「本当かい?幽子くんが協力してくれると本当に助かるよ。」と喜んでいたのだ。


そして、机の上には、棚の中にあった資料と関口さんが集めた資料が無造作に並べられていた。その山のような資料の中から、どこから手をつけて良いのか、みんな戸惑いの表情を浮かべていた。


そんな時、副部長の木村さんが「まずは、資料を種類別に整理しよう。」と提案してきた。

その言葉に、みんなは納得したように頷き、雑談を交えながら整理を始めていく。いざ始まってしまえば、こんな作業も楽しいものであった。


すると、資料はおおよそ4種類に分けられることがわかった。


一つ目は、新聞や学校新聞のコピーの切り抜き。古い記事の中には、この学園で起こったとされる集団パニック事件や、学園の七不思議にまつわる興味深い記事も混ざっていた。


二つ目は、古い写真を撮り直したと思われる写真だった。関口さんに尋ねると、「この写真は旧校舎の二階にあったものを撮り直したんだ。新しい方は、僕が最近撮ったものだよ。」と教えてくれた。


三つ目は、ウィキペディアや本をコピーしたと思われる資料で、特に目を引いたのは731部隊に関するものと、自分が住んでいる黒気味町の歴史にまつわる資料だった。


そして四つ目は、メモ書きの数々だった。そこには「陸軍」、「孤児院」、「731部隊」といった単語と、何人かの人の名前が書かれた物が並んでおり、まるで書いた本人にしか分からない暗号のように感じられた。これらのメモが何を意味するのか、誰もが興味を抱いた。


そして各自が分けられた資料を手に取り、担当する学年ごとに役割を確認していった。


副部長の木村さんが一つ目の新聞の切り抜きを手にし、彼を中心に二年生たちが集まっている。彼の指示に従い、皆が真剣な表情で資料を読み込んでいく。


一方、三年生の関口さんは、ウィキペディアと本のコピー、さらにはメモ書きの資料を手にしていた。彼が中心となり、同じく三年生たちがその周りに集まり、意見を交わしながら作業を進めていった。関口さんの落ち着いた声が、部室の中に響いていた。


そして、二つ目の写真の資料を担当するのは一年生の仕事になった。いつも部活に顔を出している自分と椿ちゃんが中心になって、写真の内容を調べるためにみんな意気込んでいた。


そんな中、幽子が自分のところに近づいてきた。彼女は耳打ちするように、「しんいち、すまないが、私は少し別行動して良いか?」と尋ねてきたのだ。


自分は思わず笑みを浮かべ、「なに!早速サボるの?」と冗談めかして返すと、幽子は「ムッ」と睨んできた。その瞬間、慌てて「冗談!冗談!」と手を振り、彼女の機嫌を損ねないように気を使い、「何か気になることでもあるの?」と、少し真剣な表情で尋ねてみた。


幽子は少し考え込むようにしてから、「気になるって訳ではなくてな、私は少し旧校舎で見た化け物のことと、旧校舎の周りを調べておきたいんだ。」と告げた。


「旧校舎の周り?」と自分は驚きながら聞き返す。幽子は頷き、「あれだけのヤツがなんで外に出て来ないのか、なんで学園祭の時に木村さんに影響を与えたのか気になっていたんだ。もしかしたら旧校舎の周囲に結界でも張られているかも?と思ってな。」


その言葉に、自分は思わず、「確かに、これは幽子にしか分からないことだ。」と納得して、そこで、関口さんに相談してみた。

彼はすぐに理解を示し、「分かったよ!幽子くん、じゃあそっちは頼んだね。」と力強く言った。


幽子は微笑みを浮かべ、「あと、化け物の正体の方も少し探ってみるよ。家に呪術関連の本もあるからな。分かったらまた知らせるよ。」そう告げると、彼女は部室を後にしていった。


その背中を目で追っていた椿ちゃんが、少し不安そうに「あれ?ゆ、幽子さんは、どうしたんですか?」と尋ねてくる。自分は軽く肩をすくめて、「ちょっと調べたい事があるんだってさ!」と軽く答えた。


椿ちゃんは「何だろう?」と言う表情を浮かべていたが、自分は気を取り直すように「じゃあ、自分たちも早速やろうか。」と、周りの一年生たちに声をかけた。彼らは一斉にやる気を見せ、調査に入っていった。


一年生は自分を含め5人いる。幽子と椿ちゃん、そして、「長谷川 啓介(はせがわ けいすけ)」と「鈴木 智之(すずき ともゆき)」、通称ケイスケとトモと呼ばれている2人がいる。


ケイスケとトモは部活に入る前からの友人で、同じ中学校で同じバンドに入っている仲間同士らしい。


ケイスケは、ワイルド系のイケメンで、少し子供っぽいところがあるが、どこか憎めない面白いヤツだった。

そして対照的に、トモは180cmの長身で、100キロ近い体型を持つ。見た目は少し怖い印象を与えるが、実際は細やかな気配りができる優しい性格の持ち主だった。


うちの学校には軽音部もあったが、音楽性が合わないことや、二人が所属しているバンドの練習が忙しいため、ケイスケとトモは軽音部には入らず、融通が利くミス研に入部したという。

オカルトに興味がないわけではなく、むしろこの二人はその分野に対して非常に興味を持っており、知識も豊富だった。


彼らはバンドの練習があるため、週に二回ほどしか部活に顔を出さなかったが、幽霊部員が多いミス研にとって、定期的に参加してくれる彼らは貴重な存在だった。


特に、前回の学園祭では音響関係を全て担当してくれ、途中で姿を消した自分よりもずっと活躍したと思う。彼らの活躍は、部活の仲間たちにとっても大きな支えとなっていた。


今回の調査においても、、ケイスケとトモは「しばらくはイベントがないから、出来るだけ手伝うよ」と言ってくれたのだ。その言葉に、自分は心強さを感じ、「頼りにしてるよ」と自分の思いを伝えた。


まずは四人で、大量にある写真を種類別に整理する作業に取りかかることにした。まるでババ抜きをしているかのように、次々と写真が種類別に分けられていく。笑い声が部室に響き、和やかな雰囲気が広がっていく。


そして写真の種類は大きく分けて三つあった。


一つ目は、人物を撮った写真。

二つ目は、建物や風景を撮った写真。

そして三つ目は、本の中身を撮った写真であった。


先ずは一つ目の人物を撮った写真を見つめるが…、全く分からない。


白黒の写真の中には、医者か博士のような白衣を着た男性、昭和初期の服装をした子供や女性、さらには神社の宮司のような袴をまとった人物が数枚写っている。どれもこれも、まるで異なる時代や場所から集められたかのように、全く繋がりが見えなかった。


そんな時、トモがふと気付いた。「この写真の人、やけにいろいろなところに写ってないか?」と問いかける。彼の指摘に、みんなが興味を持ち、次々と確認し始めた。「これもそうですよぇ」と椿ちゃんが言い、ケイスケも「この人もそうですよねぇ」と続く。気が付けば、全体の四分の一ほどの写真にその人物が写っていることがわかった。


何か手がかりがないかと探していると、椿ちゃんが突然「あ、あのぉ、これ」と言いながら、その人物が写っている写真の裏面を見せてきた。そこには「高畑 龍之介」と小さくボールペンで書かれていた。


その名前がこの人物のものなのか、確証は持てなかった。しかし、真新しいボールペンで書かれていることが気にかかる。「この荷物の前の持ち主、田中さんが書いたものなのか?」と、誰もが思いを巡らせた。謎は深まるばかりだった。



そして、二つ目の写真の束を手に取るが、これも一つ目同様に良く分からなかった。ただ、その中に興味深い写真が数枚あり、自分はその写真を手に取った。


それは、あの旧校舎が孤児院だった証拠を示す写真だった。旧校舎の前には、たくさんの子供たちが整列している。その中には大人の女性が何人かいて、中心には「高畑」と書かれた写真の男性が子供たちと一緒に座って写っていた。


写真の裏面には、ボールペンで「孤児院 輝望の里 昭和18年開園」と刻まれていた。木村さんから以前、学園祭の時に聞いていた話が頭をよぎる。点と点が繋がったような感覚を覚え、思わず「これかぁ!」と声が漏れてしまった。


一年生のみんなはその声に驚き、「なに?なに?」と自分が持っている写真に群がってきた。写真を見せると、椿ちゃんが「あ、あの校舎……、孤児院だったんですか?」と呟く。自分はコクリと頷くと、トモとケイスケも「俺にも見せてよ。」と取り合いになった。


そんな二人を尻目に、自分はあと二枚の写真を見つめた。一枚は、病院の手術室のようなベッドがあり、棚にはたくさんの書類が置かれている一室を撮ったものだった。


もう一枚は神社の祭壇を写した写真だった。

自分の横で椿ちゃんがその二枚の写真を一緒に見てきて、「なんですかねぇ?」と聞いてくるが、自分は肩をすくめて「さぁ?」と答えるポーズをとった。


そして最後の本を写した写真なのだが、これもまた良く分からなかった。ただ、これは謎というよりも、単純に読めないものであった。

細かい上に、昭和初期の難しい文字で書かれており、「解読するには虫眼鏡がいるなぁ」と思わず呟いてしまった。


「うーん。これはけっこう大変な作業になるかも」と自分が感じていると、関口さんの方から「今日はこれくらいにしようか!みんなお疲れ。」と号令がかかった。


その言葉を聞いて、自分たちは一斉に片付けを始めた。周囲が慌ただしく動く中、ふと横にいた椿ちゃんに、「これ、何とかなるのかなぁ?」と弱気な声を漏らしてしまった。


すると、椿ちゃんは少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに笑顔を向けてきて、「だ、大丈夫ですよ。私も頑張りますから。」その言葉に自分は少しだけ心が軽くなるのを感じた。

彼女の明るい笑顔が、どこか不安を和らげてくれるようだった。



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