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学園心霊ミステリー『幽子さんの謎解きレポート』  作者: しんいち
Report6 前編 生き写し

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一枚目 関口さんのワケ

自分には少し変わった友人がいる。

名前は幽子、もちろんあだ名である。

彼女には変わった能力が何個かあるのだが、その中の1つに霊感と言われる物がある。

そんな彼女と一緒にいるといろいろと不思議な体験を経験出来る

今回は以前話しをした、学園祭の続き……、あの旧校舎にまつわる不思議な事件について話していこう。


夜の帳が下りる頃、高校生になって初めての夏休みを迎えた自分は、ミステリー研究部の夏合宿に参加していた。周囲は静まり返り、薄暗い廊下には、自分たちの足音だけが響いている。


「何故、文化部であるはずのミステリー研究部に、体育部のような夏合宿があるのか?」その疑問は、合宿の話を聞いた時からずっと頭の中を巡っていた。おそらく、答えは「恒例」という言葉に集約されるのだろう。伝統的な行事として、誰もが疑問を持たずに受け入れているのだ。


そして合宿の場所は自分たちが通う高校の旧校舎。そして今、時計の針は9時半を少し過ぎたところだった。


自分たちは、旧校舎の謎を解き明かすため、地下室への入り口をふさいでいる、棚を撤去する作業に没頭していた。周囲の暗闇が一層の緊張感を生み出し、心臓の鼓動が耳に響く。


「これ、動かせるかな?」仲間の一人が不安そうに声をかける。棚は重く、古びた木の匂いが漂ってくる。


「ダメだね。これは一旦、棚にある本や荷物をどけないと重くて動かないよ。」と、声が飛び交う中、部員総出で棚の荷物を退けて、再度自分たちは力を合わせて、慎重に棚を押しやってみる。まるで、何かが待ち受けているかのような気配を感じながら。


「もう少し、もう少しだ!」部員の声が響く。自分たちの手が汗で滑りそうになる中、ついに棚が動き始めた。暗闇の向こうに、何かが見えそうな気がしてきた。


棚が「ガガ……、ガガガガガ」と、一気に動いていく。


そして……、


床から地下へと続く入り口が姿を現した。古びた鉄の扉は、長い年月の間に錆び付いており、まるで誰の侵入も拒んできたかのような異様な雰囲気を漂わせていた。周囲の静寂が一層深まり、自分たちの心臓の鼓動が耳に響く。


「関口さん、見つかりましたよ。」思わず声をかけると、暗闇の中から懐中電灯を持った関口さんが姿を現した。彼の顔には緊張が浮かび、もう一方の手には鍵の束をしっかりと握り締めている。


「いよいよだね……」関口さんの声は、期待と不安が入り混じった微妙な響きを持っていた。彼の目は、扉の向こうに広がる未知の世界を見据えているようだった。自分たちもその視線に引き寄せられ、思わず息を呑んだ。


☆☆


学園祭の時にひどい目に合わされたのにも関わらず、何故今、旧校舎でこんな事をしているのかと言うとそれには訳があった。


それは少し時がさかのぼり、学園祭の喧騒がようやく収まり、静けさが戻った頃だった。

部室に集まったミステリー研究部の面々は、どこか緊張した面持ちで部長の関口さんを見つめていた。彼の提案は、まるで暗い影を引きずるように、部室の空気を重くした。


「旧校舎の謎を解明しようと思うんだ。」と、関口さんは真剣な眼差しで言った。その言葉に、部員たちの間にざわめきが広がる。学園祭の時、あの恐ろしい出来事があったばかりだ。怪我人まで出し、幽子がいなければどうなっていたか分からない状況だった。反対するのは当然だと、誰もが思っていた。


「それは無理だよ、部長。あんな目に遭ったのに、また旧校舎に関わるなんて…」一人の部員が声を震わせながら言った。その言葉に、他の部員たちも頷く。部長以外、全員が反対の意を示していた。無論、自分も反対だった。


関口さんは、反対意見を聞いて押し黙り、少し肩を落としているように見えた。彼の表情には、何か思い悩むような影が宿っていた。


「何故だろう…」自分は心の中で呟いた。関口さんは旧校舎に対して、少し固執している気がしてならなかった。以前、副部長の木村さんから聞いた話が頭をよぎる。彼は、部活の備品を取りに行くと嘘をついて、立ち入り禁止の二階に上がり、旧校舎の資料を調べているというのだ。


学園祭の準備中、隣で騒ぎが起こった時、関口さんは自分と幽子に何か探りを入れる素振りを見せていた。彼にとって、あの旧校舎の謎は単なる興味以上の、特別な理由があるのではないかと、自分は推理していた。


自分は思い切って、「関口さん、あの旧校舎に何か特別な想いでもあるんですか?気のせいかもしれませんが、凄く固執している感じがするんですけど……。」と聞いてみた。


その言葉が部室の静寂を破り、関口さんの視線が自分に向けられた。彼の目には、一瞬驚きと動揺が浮かんだが、すぐに何かを決意したように、彼はゆっくりと口を開いた。


「あぁ!う~ん……、しんいちは割りと鋭いね。ちょっと待っててくれないか。」関口さんはそう言い残し、部室の隅にある鍵のかかる戸棚へと歩み寄っていく。


その後ろで、三年の先輩と副部長の木村さんは、まるであの中に何が入っているのかを知っているかのように、冷静な表情を浮かべていた。一方、1年生と2年生の一部の部員たちは、興味深げにその様子を見つめている。


関口さんが戸棚の扉を開けると、そこには大量の資料が詰まっているのが見えた。彼はその中から、厚手のアルバムを取り出し、みんなの目の前にドサッと置いた。その音が部室の静寂を破り、全員の視線が一斉にそのアルバムに集中していく。


「これは、旧校舎に関する資料なんだ。」関口さんは、少し緊張した面持ちでみんなに告げた。彼の声には、何か特別な思いが込められているように感じられる。部員たちは息を呑み、そして関口さんは、アルバムの表紙に手を伸ばしていった。


中には、いろいろな切り抜きが所狭しと貼られていた。本物の新聞の切り抜きもあれば、自分たちの高校で発行されている校内新聞と思われるものも混ざっている。後半には、ウィキペディアで調べてコピーしたと思われる記事も多く見受けられた。


「凄い資料だなぁ!」と感心していると、関口さんが一つのページを開き、指を差しながら部員たちに告げた。「これを読んで欲しい。」


そのページには、一枚の小さな新聞記事が貼られていた。タイトルは「地元高校生、行方不明」。内容はこうだった。「黒気味町の高校生Aさん行方不明、警察が捜索を開始

黒気味町在住の高校生、Aさん(17)が8月10日未明から行方不明となっている。警察によると……」と続くその文章は、6年前に地元で起こった行方不明者に関するものであった。


三年の先輩も、副部長の木村さんも、どうやらこの話は初めて聞くようだった。部室の中には緊張感が漂い、全員がその小さな記事に目を凝らして回すように読んでいる。


自分は正直なところ、何も覚えていなかった。

横にいた椿ちゃんや一年生の部員に尋ねてみるが、皆、首を傾げるばかりだった。

三年の先輩や二年生の先輩たちも「知ってる?」と口々に話し合っているが、どうやら知っている者はいないようだった。


その時、副部長の木村さんが口を開いて、「部長、この記事は?」と、まるでみんなの気持ちを代弁するかのように問いかけた。


関口さんは一瞬、静かに考え込むような表情を浮かべた後、ゆっくりと口を開いた。「この記事に書かれている『Aさん』というのは、僕の知り合いなんだ。」

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