第0章プロローグ2「決別の刻」
からめるです!
2連続でのプロローグになりますが、前回より短なります。次から本編です!
激しい雷鳴が、山々の谷間に反響していた。
雨は容赦なく降り注ぎ、大地はぬかるみ、空は深い闇に染まっている。
その中を駆ける人影が三つ。
一人は、金髪の髪を持つ男――カイ。
もう一人は、紅いローブを纏った女――リラ。
そして、彼らの腕の中には、小さな少女の姿があった。
「アイン、道を外すな! ここから先は川沿いを辿る!」
「了解です、師匠!」
アインと呼ばれた男は、まだ若さの残る顔立ちに深い焦燥をにじませていた。
彼の腕の中で、少女は深い眠りについているようだった。
だが――その背後。
音もなく迫る、巨大な“気配”があった。
ぬるりと現れたのは、漆黒の衣を纏い、血のように赤い瞳が三人を舐め回す
「……もう、終わりか?」
低く、嗤うような声が空間を震わせる。
振り返った瞬間、空間が裂けた。
「まさか、ここまで楽しめるとはなァ。いや、あの時から興味はあったが……うん、やはり面白い」
「……ッ」
カイは咄嗟に剣を抜く。リラも魔術の構えを取った。
「アイン。娘を連れて、逃げろ」
「ですが――!」
「いいから行けッ!」
アインは一瞬躊躇したが、カイの眼を見て頷いた。
そして、少女をしっかりと抱き直し、川の方向へと走り出す。
「行かせると思うか?」
黒服が一歩踏み出そうとした、その瞬間。
リラの手元から鮮烈な光が放たれた。
「ルーン魔術・結界封印!」
大地に走る魔術文字。
爆発的な魔力の奔流が男を包み込むが――
「甘い」
その結界は、黒服の手払いで崩れ去った。
「やっぱり壊れるか……!」
「もっと、できるだろ!」
黒服の手が閃いた。
一撃。カイはなんとか受けたが、完璧に受け流すことができず、片腕を失った。だが、黒服に少しの傷を与えていた。
「カイッ!」
リラが駆け寄るが、黒服は楽しげに笑った。
「やるじゃないか!楽しいな!」
「だけど殺さなきゃいけないなんて勿体無いな……お前は天才だ。俺が鍛え上げれば、もっと楽しめたのになぁ」
「あいつとは大違いだ」
黒服はぽつりと呟いた。
そして、黒服の周囲に、空間が歪む。
「そろそろ終わりにしようか」
空間が開いた。赤黒い雷が空から降り注ぎ、大地を割る。
カイは必死に剣を振るい、リラも最後の魔術を放つが――
雷が二人を包み、世界が白く染まった
その瞬間、遠くの川辺で、ひときわ高い水音が響いた。
◇ ◇ ◇
アインは、血まみれのまま川辺にたどり着いていた。
その腕にいる少女は、まだ目を覚まさない。
「……師匠、リラさん……」
彼の左腕は肘から先が失われていた。
右目も、光が見えない。
「でも……この子だけは……!」
アインは最後の力を振り絞り、川へと飛び込んだ。
水流に飲まれながらも、少女をしっかりと抱きしめて離さない。
「この命に代えても……絶対に……!」
川は、二人をどこか遠くへと運んでいった。
――誰にも、行き先などわからないまま
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