2人組の配信者
一応自己紹介しときますか。
村澤、24歳です。
僕は相方の井之口と一緒に某動画サイトを中心に2人組のストリーマーとして活動してます。ジャンルは心霊・オカルト系ですね。そこそこ人気ですよ。登録者数30万人くらい……あ、こないだ一気に50万超えました。〇✕△◇って知りませんか?
――まあ別に自慢したい訳じゃないんで知らなくてもいいですけど。終わったことですし。
あ〜えっと、僕らの1番人気のコンテンツって心霊スポット凸なんですよ。精神病院の廃墟とか手掘りのトンネルとかカメラ回して配信したり、色々撮影して、撮れ高なかったら帰ってからちょこっと”編集”して……うまい具合に怖くなればおっけーって感じで。でも編集はめんどいんで、だいたい心霊スポットで雑談配信してスパチャ貰ってあとは切り抜き動画置いとくのが多いです。楽なんで。
活動は順調でしたよ。無許可凸の盛り上がりは半端なかったですね。廃墟入るのって普通許可いるんですけど、無許可で行ってバレずに帰れるか〜みたいな配信が馬鹿な視聴者に大ウケで……自覚あります、色々オワってますよね。
配信は井之口がガンガン行くボケタイプで僕は盛り上げながらも冷静な、クール系ってキャラで役割分担してました。その方が面白いって、井之口のアイデアでそうなりました。
僕とあいつ、元々高校の同級生でそんな話したこと無かったんですけどね。井之口の方から「動画撮らないか? 心霊とか」って言われたときはめっちゃビックリしました。まさかこんな風になるとは、当時は全く思ってなかったですねー。
動画のネタは基本ぜんぶ井之口が考えてます。僕は台本読んで、向こうにノリを合わせて撮影してます。だから仕方ないんですけどね、でも、ちょっと僕の取り分が、配分がどうなのかなぁって……しばらく前から思ってて、どうにかしようと考えてました。
あぁだけど、動画やり出して人気になって……ぶっちゃけかなりモテました笑
高校は陰キャだったんで、女子がホイホイ寄ってくるのは夢みたいで……それだけは良かったですね。
――そんな話はどうでもいいんですよ。自慢しに来たんじゃなくて、どうしても誰かに聞いてほしいことがあるからわざわざ来たんです。
まず。結果的に最後の配信になったのが今から1ヶ月前でした。いつも通りの心霊スポット探索。始まってからも特に変わったことはなかったです。
”そこ”に行くのは僕の提案でした。
僕が見つけてきた場所で、廃墟としては普通な感じのとこです。切り立った崖を背中にした、山奥の限界集落の跡地……なんですかね? 歴史はよくわからないんですけど。
グーグルマップとか廃墟サイトを探し回って、やっと条件通りの場所を見つけました。次に撮るなら絶対ここがいいって。気乗りしない井之口を強引に説得したんです。
言い出しっぺの僕が一人でロケハンも済ませて、あれこれ道具の準備も万端。日も暮れていよいよ配信開始――ほんと特に話すことはないです。あいつが喋ってふざけて、僕がツッコんで進行して、コメント拾いながら夜の山道をてくてく歩いていきました。
冬の山って眠ってるみたいに静かなんですよ。”シーン”ってマンガの擬音があるじゃないですか。まさにアレなんです。聞こえるのは僕らの声と落ち葉を踏む足音だけ。夜だとなおさら音が無くて、世界に僕らしかいないんじゃないかって、あいつが言ってましたっけ。つまんねー。
廃墟集落に着くまでだらだら歩いてたんで30分くらいかかりました。
木に囲まれた家が3軒だけ、形をなんとか残しているのがライトに照らされました。昼間見た時は開けた空間にボロい小屋が建ってるだけで怖くもなんともないのに、夜の廃墟は何回見ても怖いです。人がいなくなった場所はもうダメですね。
廃墟を近い所から順番に見ていきました。これもいつもの流れですね。あいつの台本だとだいたい家の中に仕込みをしてるんですが、僕は人形置いたりお札を貼ったりはしてないです。大事なことが別にあるんで。
何も起きないとイライラしだすのはあいつの悪い癖です。それは予想済みでした。最後の家に仕掛けをしてたんです。成功することを内心ずっと祈ってました。そればっかり考えてたので、あの瞬間何が起きたのかすぐに理解できなかったです。
最後の家に入りました。古い民家としてはよくある内装。引き戸を開けたら土間、廊下を通って畳の部屋、襖、箪笥、散らかった衣服、入り込んだ蔓植物、死んだ鼠みたいな動物の骨……下見の時に僕は全部見てます。驚かない。何も動かしてないし新しく置いたりしてません。
居間っぽい部屋に入ったときです。前を歩いてたあいつが止まって急に黙りました。
僕はやばい、仕掛けがばれたと焦りましたが早とちりでした。
懐中電灯の明かり、あいつの目の前に首が長ーい全裸の人間が立ってました。いやすみません、人間じゃないです。人間の形をしているだけで人間じゃない。毛が生えてなくてツルツルしてました。腕は指先が畳につくほどダランと伸びてて、逆に脚は縦に潰されたみたいに短くて、それで顔は……
「うおおおおお、あっ」
あいつの叫び声が途中で聞こえなくなったのと同時にあいつの姿が影に隠されたみたいに消えました。僕がアレに気を取られている間の、ほんの2、3秒のことでした。
アレもいなくなってました。僕は深夜の山に取り残されたんです。
足元にあいつが持ってたスマホが落ちてました。ずっと配信されてたんですが、あとで確認した限り、僕らが見たものは何も映って無かったです。ただあいつが叫んだあと、ボトッてスマホが落ちて天井を映すだけでした。
配信はすさまじく伸びました。登録者も増えましたが僕は車まで転びながらかすり傷だらけで走って、自宅まで逃げました。配信もアーカイブは何故かすぐ削除されてしまってもう見れません。撮影データ自体、エラーが起きて破損しちゃいました。
あいつ、井之口は神隠しに遭った。そうとしか考えられない。
死体は見つかってないです。僕が疑われても嫌なんで警察には話してあります。調べてもらいましたけど何も残って無かったって聞きました。行方不明者リストに載ってます。
一瞬でどこかに消えたあいつは死んだかどうかすらわからないんです。
それが本当に、悔しくて……気が狂いそうです。
あいつを殺すために場所を探したり方法を考えたりしてたのに……まさか神隠しに遭うだなんて、ふざけんなよって思いませんか?
2人で活動してんのに動画収益もスパチャも2等分じゃないっておかしいでしょ。
あの廃村の最後の廃墟。奥の部屋まで行くと落とし穴みたいに床が抜けて崖に転がっていくように細工したのに、ぜんぶ無駄になっちゃいました。夜なら家が崖ギリギリに建ってるってわかんないしいいアイデアだと思ったんだけどな~。真冬に一人で頑張ったのに報われねぇ。はぁ。
”もしあいつが生きてたら?”
絶対殺しますよ。今度は自分の手で、直接。
滅多刺しにするのが確実っぽいですし、やっぱり刃物が一番いいんですかね?
詳しい人がいたらぜひ教えてくださーい。




