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2話 1日の終わり
―須川光サイド―
夜の川沿いには、人の気配がまったくない。
その川沿いを光は走っていた。
周りに意識を配りつつ静かに駆ける。
物音を立てず、しかし素早く。
周りの草木はそよ風に拭かれているかのように優しく揺れている。
身体を思いっきり動かし、全力で一直線に進む。
そうかかと思いきや、突然、両足に力が入り、飛び上がった。
3mほどジャンプ。
綺麗な弧を描き、ふわりとシーツが靡くかのように着地する。
その動作を数回繰り返した後、今度はさらに高くあがり、
空中で拳と脚を交互に繰り出した。
まるで見えない何かと戦っているかのように。
光「ふう」
日課の修行を終え、俺は一息ついた。
光「疲れたー」
美影「お疲れ様でした」
そう言いながら、和装に身を包んだおしとやかな女性がタオルとスポーツドリンクを渡してくれた。
夜になると出てくる彼女は、俺の身の回りの世話をしてくれる。
光「いつもありがとう」
労いの言葉をかけると、彼女は優しそうに微笑んだ。
二人で帰路につく。
とても静かな夜。
何事もない平和な一日の終わり。