検体
「それでは早速デモンストレーションを」
男はそう言って七人の男達の傍で止まった。
小さく細い棒を手に持ちながら、
「今からやることは、実際にあった光景です。保健室で児童達が男女問わずパンツ一丁で一列に並び、一番前に座ったよーわからん白衣のおっさんによって尻穴に棒を突っ込まれるのを順番待ちしている」
男は指を鳴らした。
すると、その合図とともに七人の男達が座っている椅子が自動的に画面に向かって倒れ始めた。
座っている彼らの目が激しく動揺で泳ぐ。
椅子に胴を縄でくくりつけられた状態のまま、直角で止まった。どういう仕組みになっているのか、椅子は倒れない。男達は全員頭頂部をこちらに向けたまま尻を向こう側へと突き出している。
すると進行役の男は言った。
「この椅子は検便仕様に設計されており、特別なシステムが設けられております」
突然、画面が切り替わった。
それを目の当たりにした教室の生徒達の表情が固まる。
中央に大きな穴が開いた七名の椅子の裏側が映されており、そのすぐ向こう側には下着を丸く切り取られた男達の各々の菊門が横に連なっている。
「……最低……」
黒髪ピアスの女子が顔を震わせながら思わず言葉を漏らす。美華の表情も固まったままだ。
「さぁ、それでは早速参りましょう。名付けて、七連ごぼう刺し」
そう言い放つと、勢いをつけて傍にいた男の肛門に棒をぶっ刺した。
「ふぉおぉぉっ……!」
その反応を一瞥すると、男はすかさずその隣へと進行し始めた。
「このように」
「うぐぁっっ!」
「直角に!」
「くぅゔぅっ……!」
進むごとに掛け声により弾みがつく―――
「奥までしっかりと!」
「うおぉぉぉっ!」
「捻りを入れて!」
「いぎぃっあぁぁ!」
「力を込めて!」
「ぐぐがぁっ!」
「さらにぶっ刺す!」
「ゔぅぐぅぁぁ―――!」
あっと言う間に一番端まで到達した進行役は立ち止まり、七人の尻穴をぶっ刺した各々の棒を光に翳すようにまじまじと見つめると、元いた位置までスタスタと戻って行った。
そして机の上に置いてあった顕微鏡らしきもので、その棒を見つめ始めた。
「……何してるの……?」
画面を見つめていた金髪女子が茫然と呟く。
スクリーンの向こうの男は、何やら得心がいかないように首を傾げると、顔を上げて言った。
「……うーん。……どうやら検査用の棒が小さぎて、検体が上手く採取できなかったようです」
突然、男は拍を二回打った。
「ワンサイズ大きい棒を」
少しの間があった後、画面の左端から同じ白衣を着た助手らしき眼鏡をかけた地味な女性が控え目に出てきたかと思うと、男に向かって何やら耳打ちしている。話を聞いている男の眉間に皺が寄った。
その様子を七人の男達が気掛かりそうに横目でちらちらと見る。
助手が退場すると、男は何かを堪えるように鼻から吐息をついて開口した。
「……失敬。えーどうやら、ワンサイズ上の検査棒もあいにく切らしているようでして、今報告された在庫状況によりますと、さらにツー、あ……いや、スリー、……ああ、違う……」
軽く咳払いすると、
「一番特大のフリーサイズなら確実にあるということで、それで代用していきたいと思います」
そう言い直し、ステージの袖に向かって無言で合図を送った。
すると、画面左端からさっきの助手が車輪付きの台を押してきた。
その上に載せられた小型ミサイルのようなものを目にした七人の口は完全に開いたままだ。
海斗が思わず声を震わせる。
「……嘘だろ……」
進行役の男は画面の向こうに語りかけるように言った。
「ご安心ください。これだけの面積があれば、検体は確実に採取できるでしょう」