前菜
突然、下校帰りの女子高生の列の中に、開いたジッパーから陰部を突き出している金髪男が投げ出された。
「キャ―――! 変態!」
その悲鳴も気に留めないように、次々と柄の悪い男達がバンから放り出される。
女子高生たちが慄然とその場で動けなくなっていると、ハッチから誰かが飛び下りた。
風で揺らめくスカート。
しっかりとしぼられた健脚美。
思わず視線を上にあげる。
顔は普通におっさんだった。
「ぎゃ―――! もっと変態!」
叫び声と共に、女生徒達は一目散に逃げて行った。
「……誰がもっと変態やねん……」
彼女らの背中を見ながら束元が呟く。
ふと、視線に気づき振り返ると、依頼人である少女が少し青ざめた表情でこちらを見つめていた。彼女は瞬きながら躊躇いの言葉を漏らした。
「……セーラー服に着替える必要ってあったわけ……?」
その言葉に、束元は自身の身なりを再度確認するように目を遣ると、悪びれずに顔を上げた。
「おいおい。言っただろ。やるんだったら徹底的にやるって」
そう言いながら、直下で顔を上げようとしていた金髪に向かってブッと思い切り屁をかました。
その勢いに負けるように再び金髪の頭が地面に沈む。
「やり過ぎ……じゃない?」
目を丸くしたまま束元の身なりをまじまじと見つめる。
「何を言ってる? 全然百万円分の仕事なんてしてないぞ。まだまだ前菜だ」
固まった少女の顔を得意気に見つめると、彼は言い放った。
「こっからが、本当のサプライズだ」