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捲り屋   作者: 伊藤洋助
15/17

デカダンス

「おい! ()()()()()()()()()()()!』が入ってんだよ! ふざけんなよ! ちゃんと晒せよ!」

 教室のスクリーンを見ていた大人しそうな男子生徒が、思わず机に両手を思い切り叩きつけた。

 するとそれに共感するように周りの生徒達からも納得できないような不服の声が次々と湧き起こる。

 それを見た美華が思わず縮み上がるように、表情を強張らせた。

 明らかに親友が晒されようとしている状況を察知していた金髪女子が、庇う様に男子生徒に向かって罵声を浴びせた。

「きもいんだよ! 陰キャが!」

 そう言ってまたその机を蹴り上げようとした時だった。

 逆に男子生徒に机を蹴り返され、その角が金髪女子の腹部に直撃した。

「……! てめぇ! やりやがったな!」

 目を剥いて反駁しようとすると、

「ギャルだが何だか知らねェが、調子こいてんじゃねェぞ! このビッチが!」

 そう言って駄目押しのごとく、目の前で机を蹴り倒した。

 中から教科書などの書類が床にぶちまけられる。

 すぐさま見逃せないように黒髪とボブカットの女子も横から参戦した。

「誰に喧嘩売ってんのか、わかってんのか! キモ男!」

 男子生徒ににじり寄って行くと、二人でその胸倉を掴んで揺さぶろうとする。

 力はあるのか。

 少し太った彼はあっさりその手を振り払った。

 勢いそのままに二人は後方につまずき、床に倒れると短いスカートが捲りあがる。

 その光景を見て、気持ちが高ぶったのか、彼は咆哮するように周囲に向かって声を上げた。

「陰キャ陰キャうるせぇよ! ()()()()()()()()()()()! ごらぁ! 文句がある奴はかかってこいよ!」

 床にぶちまけられた教科書を拾い上げると、床に尻餅をついたままの彼女らの眼前でそれをビリビリに引き裂き、辺りにぶちまけた。

 茫然とした彼女らの頭上で、紙片がヒラヒラと舞い降りる。

 流石に見かねたのか。

 担任が背後から、彼を窘めようと戸惑った口調で割って入ろうとした。

「こ、こらっ……、山崎!? 自分が何をやっているのか、わかっているのか? ……おい?」

 その腕を掴んだ瞬間、男子生徒の肘が顔面に直撃し、華奢な担任は鼻血を出しながら膝をついて地面に崩れた。

「俺は最強だぁ――! 陰キャ最高!」

 叫び声を上げて、拳を突き上げる。

 あまりに異様なその姿に感化されたのか。

 いつも控え目にしていた大人しそうな眼鏡をかけた小柄な男子が立ち上がった。

「……陰キャ最高……」

 ぼそっと呟くように言うと、次に大柄な高身長の女子生徒も起立する。

 二人が三人。

 三人が四人になると、一気にその数は膨れ上がった。

 皆が一斉に拳を突き上げ、声を張り上げ始めた。

「陰キャ最高! 陰キャ最高!」

 気づけば、美華達は多くの生徒達に取り囲まれていた。

 そのままクーデーターが完遂されるかと思った矢先だった。

「ああ。きめぇ、きめぇ」

 カーストトップ集団の前に、背の高いイケメン生徒が立ちはだかった。

 左耳にピアスを嵌め、髪はサラサラだ。

「土田!」

「ツッチー!」

 助け舟を得た美華達は、その頼もしさに歓喜の声を上げた。

 彼は即座に扇動の先陣を切っていた山崎の耳を掴み上げた。

 その瞬間、彼の上半身がくの字になる。

「あ? 陰キャ最高? 馬鹿なの? 先生に暴力まで振るっちまってよ。お前終わりだぞ。あ? わかってんのか?」

 漸く事が収まったかのごとく、安堵の吐息をつくと美華は周囲を取り囲んでいた生徒達に睨みを利かした。

「おい? いつまで立ってんだよ? ()()()()()()()()()()

 その一言に再び震えあがるように、大人しい男女たちは一斉に目を伏せた。

 その時だった。

 イケメン男子の背に、()()がおんぶのように乗りかかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、子なきジジイのごとく背中にしがみつくと、イケメンの上体が反れそのまま仰向けに床に倒れた。

 皆が唖然としている中、細い両脚がイケメンの両脇から飛び出し、即座にアナコンダのように胴体に絡む。

「……!」

 イケメンは何が起こったかわからず、目が点になったままだ。

 次の瞬間、()()()()()()()()()()()()

「うごごごご……!」

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 仰向けに倒れたまま必死に何かを伝えるように、片手で床を強く数回叩く。

 瞬く間に白目を剥き始めた彼は、その数秒後には口から泡を吹き出してぐったりとした。

 あまりの一瞬の出来事に、美華達は茫然としたまま言葉も出ない。

 するとその小柄な男子生徒は気絶して倒れたイケメンの背からすり抜けるように立ち上がると、全員に告げるように言った。

「大丈夫です。生きてますよ。()()()()()()()

 その一言でようやく目を覚ましたように、一軍女子達が目を剥いた。

「このサイコ野郎!」

 途端に箍が外れたように、彼女達が一斉に小柄な生徒に掴みかかろうとした。

 すると横から援護するように、体の大きな女子が割って入った。

「一軍とか、六軍とかもううんざり! ここはあんた達だけの教室じゃないんだからね!」

「んだとこらぁ!” 黙ってろよ! ブス!」

 その高身長に掴みかかろうとしたが、逆にその金髪が掴まれ強く引っ張られる。

 一触即発の空気がぶち破られ、瞬く間に陰キャと陽キャが互いに入り乱れ掴み合い殴り合いになった。

 その光景をカメラで見ていた白衣の男は、しみじみと語った。

「絶対的なピラミッドが崩壊していく様を眺めるのは、いつ見ても耽美的で癖になります。ある種の芸術、()()()()()といってもいいくらいの()()()()()()()()()()()()()()

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