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捲り屋   作者: 伊藤洋助
13/17

一番の

「どうです? 答える気になられましたか?」

 白衣の男は巨大検査棒を両腕に抱えたまま、念を押すように再び問い掛けた。

「誰なんです? この女性は?」

 答えを求められた海斗は、呼吸を懸命に整えようとする。

 深く目を瞑った後、思いを振り切るように言葉を発した。

()()()()()()()()?」

 完全に想定外の答えだったのか、白衣の男の目が点になる。

「……はい?」

 海斗は必死に気を持ち直すように語調を強めて言った。

「金だろ? 要するにあんたが欲しいのは。1()0()0()()()()()()?」

 進行役の男は、まだ意味がわからないように瞬きを何度も繰り返す。

「ああ! わかった! 300万! 今回俺が貰った分を全部あんたにくれてやる! 持ってけ泥棒!」

 すると白衣の男は失望したように溜息と共に肩を大きく落とし、(こうべ)を垂れた。

「まだ足りないとでもいうのか! わかった500万!」

1()()

 俄かに被せられた返しに、海斗の動きが静止する。

「……何……?」

 白衣の男は落胆を抑え切れないような表情のまま首をゆっくりと横に振ると、言葉を漏らした。

「……私もつくづく舐められたものです。これだけのセットを用意するだけでも、一体どれだけの手間と時間を要した事か……。それを()()()()5()0()0()()()()()()()()()()()()()と……。人をコケにするにも程があるというもの。あなたがこのままその身を解放される条件は、1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 間をおいて、さらに付言する。

「無論、真実を話していただければ、すぐにでもこの場から解放いたしますよ」

 その助け舟に対し、海斗はまるで何かを堪えるような表情をすると喉奥から言葉を絞り出した。

「……()()()を裏切ることはできない……。俺にとって()()()()だから」

 聞いていた美華は、両手で思わず口を押さえた。

 感極まるように彼女の目尻から涙が溢れ出てくる。

 生徒達の鼻息が互いに聞こえるくらい、教室がシーンと静まり返った。

 教壇の頭上の壁に掛けてある丸時計の秒針を刻む音が、室内に響き渡る。

「クン、クン」

 ()()()()()()()()()()()に、海斗も美華も思わずギョッとしたように顏を上げた。

「……ううん、何だかまた臭ってきましたねぇ。完全に駆除したはずなのに、この()()()()()()()()()いみたいです」

 白衣の男はそう言って、再びリモコンを前方のモニターに向けた。

 瞬時に切り替わったスクリーン上の映像を見て、海斗は目を丸くする。

 またもや、そこには()()が映っていたが、さきほどと背景がガラッと変わっていた。

 自身は見るからに高級そうな革のソファに腰を掛けており、伸ばした両腕の中には瀟洒(しょうしゃ)な出で立ちをした若い女性が彼の方に身を任せるように凭れかかっている。

 ()()()()()()()は言った。

『もっと呑め呑め! どんどん奢るからよ!』

『きゃー。海斗君太っ腹~。絶対離さないんだから! もう!』

『ちょっと! 私の海斗なんだからぁ! 離しなさいってばぁ」

 赤いドレスを着た若い彼女はそう言って彼の片腕を引っ張り駄々をこねる。

 じゃれあうような対抗意識で、反対側にいた白いオフショルダードレスを着た女性が海斗の左腕を引っ張り返した。

『いいよ。二人まとめて相手してやるから。ほら、こっちこい!』

 そう言って海斗は両腕に力を込めて二人を引き寄せると、その双方の頬に軽いキスを交互に連発した。

「きゃ―――! 死んじゃいそう!』

 抱き寄せられた女性達が我慢しきれないように手足をバタバタさせながら歓喜の声を上げる映像を目の当たりにした美華は、完全に頭の中が真っ白になった。

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