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2.あの悪夢の始まりの日に

冷たい刃が首筋に落ちる感覚を思い出して私は飛び起きた。


ここは・・

良く知っている自分の部屋だった。


夢?


いや夢にしては生々しく覚えている。

間違いなく自分が歩んだ人生だと確信を持てる。


だとしたらこの状況はどういう事だろう。

私の無罪が証明されて助かったの?

いやあり得ない、首筋に落ちた刃の感触を覚えているのだから。


しかも良く見れば少しばかり部屋の様子が違う。

違うと言うか妹が癇癪を起こして割ってしまったお気に入りの可愛らしい花瓶が戻っていたのだ。


戻っていた?

もしかして私は過去に戻ったの?

そんな突拍子もない事を考えていると部屋のノックがされたので返事をした。


「お嬢様もう起きてらっしゃったのですね、

昨日も遅くまで勉強なされていたので、てっきりまだお眠りかと。

せめてアーサー様がいらっしゃる日の前日位はしっかりお眠り下さい。


少し目に隈が出来てますよ、朝食をお持ちしますので済んだらばっちり化粧でかくしましょう。

多分ですが今日は婚約の申し出にいらっしゃたと思いますので、

少し気合いを入れるくらいがちょうど良いです。」


そう言って私より一回り年上の侍女マーサが

朝食を運びに部屋から出て行こうとしたので声をかけて止めた。


「マーサ、今日このあと直ぐに、その花瓶をお父様の司書室に移して置いてね」


マーサは少し不思議な顔をしたが、分かりましたと私の部屋を出て行った。


だって仕方ないじゃない、今日アーサーと正式に婚約が決まった事に腹を立てた妹のベロニカが

私のお気に入りのその花瓶を叩き割ってしまうのだから。


きっと今日があの悪夢への始まりの日ね。

私が今日アーサーからの婚約の申し出を断りさえすれば救われる。


だけど王家からの申し出を断れば、

我が家はしばらく王族が出席する催しに呼ばれる事は無くなってしまい家に迷惑をかけてしまう。

何よりあの日に誓ったのだから、仮に怨霊となって生まれ変わってでも必ず復讐すると。


せめて自分が味わった苦しみの半分でも味合わせてやると。


もう既に失うものなど何も無いじゃない。

私は出来るだけ王子様を引き立てられる様に、極力控えめで質素な装いをしてきた。

その結果があれなのだ、あんな品性のかけらもない格好をするつもりは無いが、

今回は自分らしく、自分の為に生きて行こう。


少し派手かなと思って前回避けていた、ピンクと赤の色合いが可愛いらしいドレスに着替える事にした。


さあ、復讐の始まりよ。

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