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1.断罪の日

「なあソフィア、僕達の為に死んでくれないか?」


王城の地下にある暗いジメジメとした牢屋。

廊下に灯された蝋燭の光でわずかながらに周りが見える程度で

今が昼なのか夜なのかさえ分からない。


排水管さえマトモに管理されていないのだろう、

夜中にはネズミがキィキィ鳴いて、恐ろしくてこの数日まともに寝れなかった。


こんな思いまでして目の前にたつ男を信じて待っていた私に今何と言った?

私は聞き違いかと唖然としてしまった。


「ねえソフィア姉様、仕方ないのよ。

あのまま陛下が生きていたらアーサー王子様といつ結婚出来るか分からないじゃない」


そこには派手な赤いドレスで男の腕に胸を押し当てる様にしがみついて

ニタニタと笑っている私の実の妹がいた。


全てを悟った。


私は実の妹に婚約者を奪われたばかりか、この女の犯した罪を被せられたんだ。

私の妹は出来が悪くて栄養の全てを胸に取られてしまっているのではないかと本気で思う。


この国の国王陛下は頭の悪い妹より、優秀な私が国母に相応しいと思っていたが、

息子のアーサー王子が全く聞き入れ無い為に、渋々ながらも王責で王子と私の婚約破棄を認めたのだ。


破棄を認めたと言うか、王家主催の催しで既に婚約破棄は宣言されてしまった。

もはや婚約解消による穏便な解決手段も取れなかった。


陛下はあまりの愚かさにアーサー王子を廃嫡しようと本気で考えていたが、

第二王子のレオンが病弱で真面目なレオンに心労をかけたく無かった様だ。


苦渋の思いで、ある条件を満たせばアーサー王子と妹の婚約を認めると王子に告げた。


『妹のベロニカに教育係を付けるので王太子妃としての教養振る舞いを覚える事。』


王太子妃になるんだから、王太子妃としての教養振る舞いを身につけろと言うのは至極当たり前だ。

だけどそのあたり前が私の妹には出来ない。


遺伝子レベルで無理なのである。


私も姉として今まで妹を放置していた訳では無かった、

これでも少しは、ほんの少しはまともになったのだ。

だけどスプーンに皿いっぱいのスープを注ぐ事が無理な様に

人には器の大きさが定められている。

耳かきの先端のヘラの部分くらいしかない。

耳かきは耳をかくときに使えば良い、適材適所だ。


私は自分で言うのもあれだけど非常に優秀だった。


頭の出来が物凄い良いと言う訳では無いけど

与えられた課題は努力して時間がない時は寝るまも惜しんで勉強した。


その努力が報われて王太子妃どころか王妃の秘書として

外国の要人とのパーティーにも呼ばれるレベルになっていた。


陛下も王妃もそんな私を実の娘の様に思ってくれて

婚約破棄に関しては、どんな事をしても私の名誉を回復してくれると言ってくれたのだ。


そんな陛下はその後第二王子と同じ様に体調が優れなくなり

一日の殆ど眠った状態になってしまったのだった。


陛下も第二王子もこの二人に毒を盛られたのね。

まさか実の家族にそこまで非道な行いをする訳がないと油断した私が馬鹿だった。



数日後、時折霧雨がふる天気の中で私の斬首刑が行われた。


「悪女ソフィア、婚約を破棄された腹いせに我が父上の国王陛下を毒殺するとは、

なんと卑劣な行いをしたのだ、最後に申し開きがあるなら聞いてやる。」


「いいえ何も、心よりお慕いしておりましたアーサー様。

私を騙して掴んだ束の間の幸せを今だけ楽しんでいて下さいな。

必ずこの恨みを晴らしに戻って参ります。」


そう私が言い放つと首筋に刃の感触を感じた。

ゴロリと回る視界の中で怯えるアーサー王子を睨みながら

私はその日、確かに死んだのだった。

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