第30話 「ダイレクトメッセージ2」
※更新をお待ちいただいている読者の皆様には、大変お待たせしております。
全ての精密検査が終了致しました。診断結果と今後の体調管理を含め、投稿にお時間を頂いてしまいますが、ぜひ完結までお付き合いくださいませ。
冷蔵庫から缶コーヒーを持ってくると、机に置いて椅子に座る。中身を見なくても、書かれている内容がある程度想像できてしまう在過だったが、一口コーヒーを口にすると、届いた順番でダイレクトメッセージを開いた。
１通目のタイトル「死ぬよね？」と書かれた内容を見る。
【いい歳して女の子殴るとか、きみ死ぬよね？】
２通目のタイトル「相談」と書かれた内容を見る。
【俺達の姫様を苦しめた償いどうしてくれんだ？ 毎日俺に電話で相談してきてたんだ、お前知らねーんだろ。ゲームで負けたくらいで姫様を殴るとか死んで詫びろ】
３通目のタイトル「シスコン」と書かれた内容を見る。
【彼女より妹優先しちゃうって、すごく気持ち悪いんですけどwww。え？ もしかして妹と結婚しちゃうとか言い出すのかな？ きっしょｗｗｗ】
４通目のタイトル「脅迫罪」と書かれた内容を見る。
【近藤君って名前で合っていますよね？ 近藤君のしていることは虐めです。友達を消せと言ったそうですが、それは脅迫罪になります。捕まりますよ？ 神鳴ちゃんが、泣きながら教えてくれました。言うことを聞けと脅され、友達全員消せと脅迫したこと知っています。世間一般的に近藤君のような人を、DV彼氏と言うんです。最低ですね。それでも、神鳴ちゃんは近藤君が好きだから、自分の事を理解してもらえるように努力すると言っていました。私は、許せないです。あんなに泣いている神鳴ちゃんは初めてです。近藤君は謝罪して、二度と神鳴ちゃんに近づかないでください】
５通目のタイトル「君の味方だよ」と書かれた内容を見る。
【僕は君の味方ですよwww。神鳴ちゃん虐めて興奮しちゃうんでしょ？ 大丈夫大丈夫、そんな性癖持っている人でも僕は君の味方ですよwww。ほら、イエス様も仰ってるじゃないですか、自分の敵を愛しなさいって】
６通目のタイトル「犯罪だからね」と書かれた内容を見る。
【マジでお前やばいね。自分の思い通りにならないからって、神鳴の首絞めるとか犯罪だからね？ お前も同じ苦しみ味わった方がいいよ、通報しました】
７通目のタイトル「なにしたの？」と書かれた内容を見る。
【ダークエンジェルさんの彼氏って君ですよね？ 泣きながら相談されるし、数分おきにツイートしてるし、なにやったの？ 精神が壊れちゃって、このままだと自殺まで追い込まれて取り返しつかないよ？ 責任とれるの？ 】
8通目のタイトル「サブ垢」と書かれた内容を見る。
【君のアカウント名と、断罪ってハッシュタグで音声データが共有されてるよ】
在過は、音声データが共有されていると言う一文に血の気が引く。検索画面から、アカウント名と断罪のハッシュタグを入力し検索するが、無関係の投稿も大量に表示されている。それらしい投稿内容をチェックしながら下へスクロールしていくが……音声データは見つけられなかった。
単純に見つけられなかっただけなのか、知り合い同士のみに流れているのか。もしかしたら嘘で、悪戯の可能性もあるだろ。
在過は、謎の音声データを探し出すことを一旦諦めた。
再度、9通目のタイトル「ロリコン犯罪者」と書かれた内容を見る。
【妹ちゃんが大好きくぅ～ん。正論言われてぶちギレちゃっているのかなぁ～www。でもねぇ、首絞めるのはよくないなぁ……それ殺人未遂だからね？ おまわりさぁ～～ん、ここに人殺しがいますよぉ、捕まえてくださぁぁい】
10通目のタイトル「僕ちゃんの恋人は二次元です」と書かれた内容を見る。
【僕ちゃん彼女いるけど、美少女ゲームが大ちゅきです！ だから、ゲーム捨てたくありまちぇーん。僕ちゃんの大ちゅきなゲームを批判されて、捨てろとか言わないでよ！ 泣いちゃうんだから、えぇ～んえぇ～ん。そんな彼女にはお仕置きだ！ 友達全員消せよこのやろぉ！ふざけんな！ 僕ちゃんの握りこぶしはデカいんだぞ！ 僕ちゃんの右手が首を絞めちゃうぞっ！ マジ草wwww】
ゆっくり、ゆっくりと深呼吸をして息を吐き出す。頭に血が上る感覚が在過を襲い、怒りを超えて恐怖。まだ一部のメールだけであったが、可愛そうな神鳴を助けてくれる友人と言う仮面の裏に、優越感と言う麻薬が気持ちよくさせる。
それは、誰が言った言葉だろうか。
――相手を馬鹿にするほど、気持ちいがいいと。
――相手が自分より馬鹿であるほど、楽しいと。
――相手の欠点を探し出して、伝えるのが楽しいと。
顔も知らないネット上の相手ならば怖くない。何を言っても、どこの誰かわからないのだから。拡散すれば、より沢山の賛同者が仲間になってくれる。より安全で、より安心して自分の意見が正しいと押し付ける。
本当にその内容が、真実なのかも確かめることなく、みんな言っているから正しいのだと錯覚し拡散され、嘘が真実となり真実が嘘となる。
「けほっケホッツ……」
乾燥したのか空咳をする在過は、冷えたコーヒーを飲んで喉を潤す。その後も、数回咳き込むことで症状が治まった。
