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僕と彼女とレンタル家族  作者: Hum_Blake
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第28話 「お見舞い5」

※現在、体調不良の再発に伴い更新をストップしています。

次話をお待ちのご愛読者様には、ご迷惑をおかけいたします。

その期待は、失敗。持ってくるべきではなかった。


在過(とうか)は、ここでカッターナイフを贈ってくる意図は不明だが、明らかにリストカットを連想させようとしている。神鳴(かんな)に妹がリストカットをしていた事を話しているし、これまでの事を考えると母親も知っているかもしれないと考えた。


 それから15分ほど、一緒に韓流ドラマを見ながら過ごした。ベットに横になりながら動画を観ていた友理奈(ゆりな)は、目を閉じで眠っていた。ベットの横にぶら下がっているリモコンを使い、約45度ほどギャッチアップされたベットを下げていく。


 布団を掛けて、再生されたタブレットの電源を切る。在過は、その横で椅子に座り直すとカバンから便箋を取り出し、ふんわりと墨汁の香りが漂う。数枚重なっている便箋を開き、金墨汁で書かれた内容を読んでいく。


妹さんへ。


 君のお兄さんと知り合いの娘の母親です。プレゼントは喜んで頂けましたか? 手首を切りつけることが大好きと伺いましたので、新品のナイフを贈ります。


 私には、自分の体を切る妹さんのお気持ちは到底理解できませんし、理解するつもりもありません。可愛そうなことに、両親が消えて、神様に見放された君達は不憫でなりません。ですが、心配しないでください。最初で最後ですが、今後の道具として新品をプレゼントします。仲良く兄妹で楽しんでください。


 さて、君のお兄さんは悪魔に魂を売っています。可哀そうなことに、君のお兄さんは他人を傷つけて不幸にします。私の娘がその被害者です。殴り、土下座させ、泣かせて、暴言を吐く悪魔なのです。


 悪魔の家族は、みな悪魔。お兄さんのせいで、妹さんまでも悪魔に取り憑かれてしまっている事でしょう。きっと幸せになることは、できません。そんな可哀そうな、哀れなお兄さんを助ける為に、私の娘は君のお兄さんと一緒に過ごしてあげていたのに、それを理解せず苦しめる極悪人でもあります。


 君のお兄さんを悪く言っているわけではありません。君のお兄さんが魂を売った悪魔に、言っているだけなのです。これからも、君のお兄さんは幸せになれませんが、兄妹仲良く、ずっと一緒に暮らしてください。妹さんへ、無理だと思いますが精神病が完治するといいですね。


 近藤君へ。

 

 妹さんを優先し、娘を虐める君のことだから、この手紙も妹さんに見せないようにしていることでしょう。それどころか、妹さんやその他の人には真実を伏せ、娘を悪者扱いとして嘘を吹聴しているんでしょう。


 娘は涙を流して、苦しみながら、君の為にと一緒にこの手紙を書いた優しさを少しでも理解しなさい。気持ち悪い。気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。25歳にもなって、妹さんばかり優先し、妹さんにだけ優しくする気持ち悪いシスコンが娘に触れるな。


 この手紙のことも大袈裟に吹聴するのでしょうけど、覚えておきなさい。いつ、どんな時も神様は私達家族の味方。君が、どんな卑劣なことをしても、倍になって不幸が君に戻っていく。


 大人しく、娘に謝罪文だけ用意して、娘に二度と近づかないと約束しなさい。


「……はぁ」


 読み終えた手紙をカバンにしまい、ベットで眠る友理奈を見守りながら考えた。神鳴も一緒になってこの手紙を書いていたと言う一文が、在過にとって怒りでも、苦しみでもない。


 ただ一言だけ、寂しい言う感情が残る。どんな気持ちで、何を伝えたくてこの手紙を書いたのだろうかと。神鳴が好きと言ってくれた言葉が、最初から嘘なのであれば、何のために付き合ったのか。


 答えは分かっている。しかし、それを認めたくない、信じたくないと言う感情が邪魔をする。


 ただ、誰でもよかったのだと。恋人が欲しいのではなく、彼氏がいると言える存在のみが必要だったのだっと。神鳴が想像している、理想の彼氏と言う存在が欲しいだけ。友人や周りに自慢できる、理想の彼氏象が欲しいだけ。雷華(らいか)神鳴(かんな)亜衣(あい)と話をして気づく気持ちのズレ。


 気付かない。ゆっくり、ゆっくりと神鳴に()()していることに在過は気づかない。


 在過は、家族の話をしても離れることなく、好きだと言ってくれた神鳴の存在が大きくなっていた。この人に抱えている事情をすべて話しても、側に居てくれる。


 嫉妬深く、納得できないこともあるが、それでも、やっと家族になれるかもしれない恋人と出会えたことが……。


 ――たったそれだけの願望が思考を鈍らせ、自身を蝕んていることにも気づかないで、依存していく。


「アイス買って、また来るよ」


 カバンを持って居室を後にした。

 

 この時、もう一枚ベットの下に落ちていた便箋に、在過は気づいていなかった。後に、友理奈が見つけ中身を読むが、意味が分からず次に在過が来た時に渡すために引き出しに保管する。



【オン キリリヒッチリビキリ、タダノウウン サバセットロンノウシャヤ、サタンハヤサタンハヤ、ソバタソハタ、ソバカ】


 書かれていた内容は、それだけであった。

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