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43、おじさん、街を掃除する

 今回のお話はお食事前後の方はご遠慮いただいた方がよろしいかもしれません><


・・・・・・・・・


 今年最後の投稿となります。


 本年は、私の初めての投稿作品となる「異世界 軽トラおじさん」をお読みいただいて本当にありがとうございました。

 皆様から頂いた感想や評価、ブクマのおかげでとても励みになりました。

 どうか来年もよろしくお願い致します。


 来年は1日にお正月SSを投稿する予定です。


 


「さ~て、我らが元帥閣下の玉言で総論たる基本方針が決まったところで、各論たる具体的な動きについて詰めていくわよ!」


 頼むから『元帥閣下』とか言うのはやめて欲しい。それに俺のイキった発言で自らダメージを受けているところにさらに追い打ちをかけるのはやめてくれと声を大にして言いたい。前から思っていたがクウちゃんにはぜったいSの気があると思う。


 ともかく、俺の黒歴史の中に名を刻んだ『解放戦線』の今後の対策会議はどうにか終了した。

 ちなみに、『メオンの街解放戦線』の名称だが『メオンの街』はすでに解放されたのでメオンの街という接頭名詞は取り外される事に決まった。新たな名称については、メオンの街が属している国家である『メッツクシィー王国』を冠に付けるという案も出たのだが、『メッツクシィー王国解放戦線』という呼び名がどこかで漏れてしまえばいかにも国家を転覆するために暗躍している組織としていらぬ認識をされてしまう可能性が高いため、あえてシンプルに『解放戦線』とすることで合意した。

 たかが名称にそこまでこだわらなくてもいいとも思えるが、名は体を表すとも言うし、国の民衆や子供たちを闇の勢力から救い出そうとする俺たちの意思が歪んで伝わり、単なるテロリストと認識されてしまうのは皆の本意ではないのでこれでいいのだと俺も思う。


 で、『領民たちを大切に敬い遇する事で民の生活の質を保証し、並びにその能力の向上が図られる事をもって、領内全体の総合力を高める』という基本方針に則った具体的な動きをすすめていく事となった。


 

 まず初めに取り掛かったのは、領都でもあるメオンの街全体の「清掃」だ。

 もともと、メオンの街は掃除が行き届いた清潔な町並みであった。しかし副領主が派遣されてからは街の清掃などという奴らにとって緊急性も必要性も低い予算などが執行されるはずもない。それまでは冒険者ギルドへの依頼や、比較的所得の少ないいわゆるスラム街の住人が行っていた清掃という仕事が街から消えてしまっていたのである。

 

 増税により生活も困窮している中で自発的に自分の敷地でもないところを無償で掃除するような奇特な人間など多くはない。しかもこの異世界は中世のヨーロッパのような時代観に近く、上下水道も完備されているとはいいがたい。街の中心部の行政府や領主の館、貴族が多く住むような一帯にはそれなりの整備はなされているのだが、一般の家庭などには上下水道などあるわけもなく、飲み水などは集落に数箇所ある井戸からのくみ上げであり、下水にあたるものも同様に、家庭で出た糞尿を含む下水や汚物は集落にある堆積所にまとめられ、ある程度まとめられた汚物を依頼された冒険者やスラムの住人が公共事業として片付けや処理を行っていたのだ。

 

 その公共事業の予算が執行されなくなるとどうなるか。街の堆積所には糞尿があふれ、もはやそこに糞尿を捨てに行く気には誰しもならない。そうなると家庭で出た下水や糞尿は各家庭の庭に捨てられる。庭などがある家は極少数であり、では庭のない家ではどうするかと言うとそれを窓から通りに投げ捨てるという手段しかないのである。

 

 ということで、街並みは酷いありさまだった。石畳のあるメイン街道の上にも糞尿がこびりつき足の踏み場を探すのにも苦労する。当然街中を悪臭が覆っている。雨が降れば少しは流されて改善されるのだろうが、雨水で流されるそれらが向かう先は高低差の低い所に集まるのが道理であり、低い所に家を構えている者からすればたまったものではない。雨が降るたびに雨水や汚水が家に入らないように並々ならぬ苦労が忍ばれる。


 よく今まで疫病なんかが流行らなかったものだ。そう、街をきれいに保つことは単に景観だけの問題ではなく、病気の予防等の公衆衛生の観点からも必要なのだ。


 そういうわけで、俺は街の居住区に点在する『堆積所』に軽トラと共に向かう。

 数年前から処理をされていない堆積所はそれはもうひどいありさまだ。あふれかえっているといった表現ではなお足りないような状況がそこにはあった。悪臭が目に染みる。気を失いそうな臭気が鼻や口の周囲に纏わりつく。軽トラの固有スキルの≪搭乗者保護≫がなければ本当に気絶してもおかしくないだろう。


 ……さて、気は進まないが、とっとと処理してしまうか。



『カスタムスキル「バキュームカー」が発現しました。CP20を使用して「バキュームカー」を有効化しますか  Y/N?』



 はぁ。俺はため息交じりに「Yes」を選択する。とうとう発現させてしまった……。もはや軽トラ関係ないだろこれ……。確かに大局的に見て便利は便利なのだが、マイカーがバキュームカーって……。いや、深く考えるな俺! 街の人たちの助けになるならそれでいいじゃないか! おじさんは地域に愛されてなんぼのもんだ!


 無理やり自分を納得させた俺はバキュームカーを作動させる。といっても地球にあるそれとは違い、異世界の軽トラバキュームは非常にスマートだった。


 『自動積載』の機能で汚物を集め異空間の入口へと送る。異空間の出口は以前に発現した『簡易トイレ』と同様に「しかるべき場所」へとつながっている。おそらくは山の中とか海の中とか、自然発生するバクテリアなんかでスムーズに分解してくれる環境に送ってくれているものだと信じたい。

 収集用のホースを使う事もなく、俺の手や軽トラを汚物で汚すこともなく無事に一瞬で堆積所の清掃は終了する。その一部始終を見ていた街の住民からは歓喜の声と拍手が巻き起こる。


「ありがとー!」「助かったぜ!」「さすが魔道具の英雄さん!」


 うむ、英雄と呼ばれるのはこっぱずかしい以外の何物でもないのだが、こうして感謝してもらえるのはうれしい事だ。俺は軽く手をあげて声援に応え、次の堆積所へと軽トラを向かわせる。


 こうして、俺は街中にある堆積所をきれいにして回った。一番不潔な所をどうにかクリアーにすることはできたが、まだまだやることは残っている。街の街道や裏通りなど、不潔な状態のところはまだまだ残っているのだ。単純にその面積だけで考えてもすべての清掃にはとてつもない手間がかかるのは予想できる。


 俺は軽トラのスキル一覧を確認する。

 道路を清掃する、地球でいうところの『路面清掃車』あたりを発現させるのも一つの手なのだが、いかんせんここは異世界だ。中世の街並みに近いこの街では、馬車が通るようなメイン街道はいいとしても裏道などには軽トラの車幅でも進入できないような狭い道幅の道が多く、すべての道を清掃できるかといえば答えはNoだ。なるべく効率よく、広範囲をきれいに出来るスキルはないものか。


 ふと、『洗車(1)』のスキルが目に入る。洗車はわかるが、なぜスキルランクを示す(1)という数字がついているのか? 軽トラの車体を洗うだけの洗車なら、スキルランクなど関係なく普通に『洗車』で充分ではないか。ランクを上げる事でなにかできる事があるのではという思いに至る。


 洗車のスキルは『水魔法』と『火魔法』で温水を作って車体を洗い、『風魔法』で水圧をあげて洗浄効率を上げさらに洗浄後に乾燥させる仕組みだ。洗車のスキルランクを上げるには、各属性魔法のランクを上げればよいはずだ。


 『水魔法』と『風魔法』は既に(4)ランクなので、まだ(1)だった『火魔法』を(1)→(4)に上げてみる。すると、予想通りに『洗車』のスキルランクも(1)→(4)へと上昇する。


 

 さて、『洗車』のスキルランクを上げて何ができるようになったのか検証だ。


 軽トラの各魔法ランクは、スキルランク(3)までは対象が単体だが、(4)から範囲攻撃となり多数の対象を相手に攻撃や回復を行う事ができる。魔法の発動距離は、


〈魔法射程〉

・単体魔法は(保護距離)×(魔法ランク)

・範囲魔法は(保護距離)×(魔法ランク-3)

※範囲魔法は各魔法のランク4から発動可能。

〈魔法範囲〉

・範囲魔法の範囲は対象を中心に半径(保護距離×1/2)


 だったはずだ。ということは、今の軽トラのレベルは「25」、つまり保護距離は25mだ。


〈保護距離〉

・保護有効距離は初期値半径5m。

 軽トラレベル6からレベルアップで保護距離1m増。

 例)Lv5→保護5m  Lv6→保護6m  Lv100→保護100m



 ちなみに保護距離とは俺が軽トラから離れても死なない距離の事で、この範囲内であれば俺は軽トラの『搭乗者保護』の恩恵を受けられ物理や魔法攻撃から状態異常などありとあらゆる敵からの干渉が効かなくなる。



 範囲魔法の公式に数字を当てはめて計算してみる。


・範囲魔法(保護距離【25m】)×(魔法ランク-3【(4)-(3)=1】)=【25】

・範囲魔法の範囲は対象を中心に半径(保護距離【25m】×1/2)=【12,5】


 

 という計算結果になり、『洗車』のスキルは『25m』離れたところまでを中心に半径『12,5m』の円状に発動可能、つまりは軽トラから最大37,5m離れたところまで洗車の範囲を広げる事ができるということだ。しかもこの範囲は軽トラからの直線距離なので、平面上だけでなく、縦方向にも発動ができる。道路だけでなく高層の建物までも洗えてしまうのだ。まあ、この異世界に3階建て以上の高層の建物は存在しないのだが


 よしよし、これで効率よく街並みを清掃する事ができる!


 俺は『洗車(4)』のスキルで街中を清掃する。汚物にまみれた街道や裏通りの路上はもちろん、行政府や領主様の館の壁や天井に至るまで。もちろん、孤児院や冒険者ギルド、トランティニャン商会の建物や倉庫、民家の一軒一軒までをもスラムと呼ばれる一角にあるものまでを分け隔てなく清掃する。

 単に温水で洗っただけならばその汚水が低所にある民家などに流れ込む可能性もあるが、『洗車』のスキルでは乾燥までがワンセットだ。乾燥を経てなおも残った固形物は集めて『バキュームカー』で処理。下手な2次災害を巻き起こすことなく街は清潔に清掃され、清掃前と比べると見違えるような光り輝くような街並みへと変貌した。


「よし、こんなもんだろう」


 街の清掃を終えた俺は、街の住民たちの感謝の声を背に受けながら領の行政府で別の案件に取り組んでいたクウちゃんのもとに戻ってきた。


「ハヤト! 街のお掃除お疲れ様! 確かにこれで街並みは元通りにはなったけどまだまだこれからよ! 単に元通りにするだけじゃ足りないの! なんたってこの街はわたしたちの本拠地であり愛の巣にもなるんですからね! そう! 来た時よりも美しく! もっと完璧な街にしないとね!」


 クウちゃんによくわからない気合が入っている。う~む、面倒くさい事にならなきゃいいのだが……。



〇軽トラステータス


名称:軽トラ 異世界仕様車


レベル:25

 HP ∞ ・MP max/30,000  ・SP 13/29・CP 125/145


≪分類≫:魔法道具


≪レア度≫:幻想級


≪運転者≫:橘隼人(専用)


≪固有スキル≫:

・MP駆動

・車体不壊

・成長可能性保持

・搭乗者保護

・積載物保護


≪スキル≫:

・MP自動回復(1)

・火属性魔法(1)→(4)(Up!)

・水属性魔法(4)

・土属性魔法(4)

・風属性魔法(4)

・氷属性魔法(1)

・雷属性魔法(1)

・回復魔法(4)

・光魔法(1)

・精神干渉(1)→(4)(Up!)

・時空干渉(1)


≪カスタム≫:

〈機能系〉

・エアコン(1)

・MP電力変換(1)

・幌(-)有効化必要CP5

・洗車(1)→(4)(Up!)

・無限積載

・自動積載(1)

・カーナビ(通常)(-)有効化必要CP20

・カーナビ(索敵)(-)有効化必要CP40

・インターフォン(-)(New!)有効化必要CP1(New!)

・カーナビ(ヘッドアップディスプレイ)(-)(New!)有効化必要CP40

・野外ステージ(-)(New!)有効化必要CP100

・ドライブレコーダー(-)(New!)有効化必要CP40

・高所作業車(-)(New!)有効化必要CP100

・カーナビ(検索)(-)(New!)有効化必要CP40

・キッチンカー(-)(New!)有効化必要CP100

・中継車(-)(New!)有効化必要CP100

・バキュームカー(+)(New!)有効化必要CP20



〈戦闘系〉

・轢く(3)

・撥ねる(3)

・隠蔽(-)


〈操作系〉

・悪路走破(1)


〈生活系〉

・異世界売店

異世界CDキャッシュディスペンサー

・簡易トイレ(-)有効化必要CP10

・ゴミ箱(-)有効化必要CP5

・キャンピングカー(通常)(-)有効化必要CP100


≪恩恵≫:時空




いつもありがとうございます。

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今後ともよろしくお願い致します。



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