22、おじさん、心のケアをする
もはや当初のプロットは崩壊しています(-_-;)
クウちゃんおそるべし
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軽トラの荷台で意識が戻った冒険者たち。
俺は事の顛末の説明と、合わせて軽トラの蘇生能力を隠匿するための「設定」への口裏合わせを依頼しようと軽トラの荷台に回り込んで彼ら彼女らに相対する。
しかし彼らはこちらを向いてはいなかった。
一番体の大きい、おそらくこのパーティーの中で最年長と思われる20代半ばの男性は青い顔をして両手の手のひらを凝視している。
もう一人の男性、中肉中背で体は引き締まって全身がバネのようなしなやかな筋肉で構成されていそうな、恐らくは20代前半の彼は両手を床につき、顔を上げることなく真下の床に顔を向けている。この場からはうかがい知れないが顔は青く目は虚ろなのだろう。
20歳そこそこと10代後半に見える女性二人は膝を両手で強く体に寄せ、頭を可動域の最大まで前に俯け、まるで自分を必死に何かから守るかのように体を丸くしている。
心が折れている。
絶望を知っている。
自分が生きている事に戸惑っている。
彼ら彼女らは―― 弄ばれ殺された記憶がある。
このまま彼らの回復を待つのも一つの手ではある。だが、それは得策ではない。
今、彼らの心の中には思考が占める割合はほとんどない。ただ恐怖、諦め、口惜しさ、絶望といった感情のみが支配している。
たとえ時間の経過と共に思考を取り戻したとしても、ネガティブを振り切った感情に誘導された思考はさらに負のスパイラルを高速で描き、健全な思考とは真逆の到達点、つまりは未来の生への絶望。
この世から自らの手で自らを消滅させる行動へと至りかねない。
どうにか、深い負の感情という海溝に沈み込む前に、思考のできる浅瀬へと引きずり上げたい。
「みなさん、気が付きましたか」
俺は言葉が彼らの聴覚を通して心にしみ込むよう願いながら話し掛ける。
「ゴブリンキングは俺が倒しました。」
まずは、彼らの心を今も進行形で蝕んでいる最大の脅威が排除された事実を告げる。
「ゴブリンたちも全部倒しました。集落も焼き払った。もう命の危険はありません。」
次いで、すべての脅威が排除された事実による安心感と、もう恐怖を感じていなくてもよいという許可を同時に与える。
今、彼らの心を支配していた暗い感情は霧散した。正確には今後の長い時間をかけても完全に取り払う事は出来ないであろうが、それでも思考が自我を取り戻す余地は確保できた。
そこで彼らの心に浮かび上がるのは現状を把握したいという疑問。自己の生命を維持するといった健全な本能に基づいた健全な思考の働きの一つである。
彼らは顔を上げて俺の方を一斉に見上げる。その疑問を解消したいという欲求に従い、その欲求をかなえてくれるであろう俺の顔を。
「みんなを生き返らせたのは、この『軽トラ』という俺の魔道具の力だ」
俺は彼らの最大の疑問に対する答えを端的に伝え、疑問という心の動きが興味というベクトルに変化しながらその対象が『軽トラ』に移っていく心の動きを感じ取る。
そこで俺と『軽トラ』の関係性、軽トラという魔道具の制約で一定距離軽トラから離れれば俺は死んでしまう事や、軽トラの持つ能力についても説明する。
軽トラには荷台に乗っている人のHP・MPを徐々に回復する効果や、状態異常効果を無効にする能力があることについて話したあたりで、彼らは自分たちの体力が全快している事と、もはや負の感情に支配された「恐慌」状態から解放されている事を自覚する。
うん、軽トラの≪搭乗者保護≫の「状態異常無効」の効果が精神面の恐慌状態に発揮されていないようで少し焦ったけど、「こういう効果がある」と本人たちに認識させることで効果は倍増になったみたいだ。プラシーボ効果てやつだね。ちなみにおじさんは「これは万病に効く薬だ!」と自分に言い聞かせながら毎日酒を飲んでいた実績がある。血圧?計らなければどうという事はない。
自分たちの現状を確認したいという生存要求を満たすための疑問、自分たちの命を再生させてくれた『軽トラ』という魔道具とその持ち主である俺への知的好奇心からくる興味。それらの要求をすべて満たす俺の話は、砂に水が浸み込むがごとく彼らに浸透していく。
そのタイミングで俺はクウちゃんをこの場に呼ぶ。
冒険者たちには、クウちゃんも同じくゴブリンの集落にさらわれてきていた女の子であり、彼らと同じく助け出したという説明をする。
詳しくは語らない。人は情報の中に空欄があると、それを無意識のうちに予想や想像で補完する。
彼らにとって、クウちゃんは彼らパーティーの二人の女性が受けたと同じように凌辱を受け、命を失い軽トラの能力によって蘇生させられた存在なのではというストーリーが自動生成され、それは真実であろうと確信を持つ。内容が内容なので、その確信を言葉をもって確認する事ははばかられて実行に移すことはできず、確信はさらに深まっていく。
考え込むような表情をする男性冒険者二人。クウちゃんに自分と同じ境遇であるために哀れみと気遣いが合わさったような表情を向ける女性冒険者二人。
俺はそのまま、冒険者たちに提案という形をとった依頼をする。
「俺から皆さんに提案がある」
俺とクウちゃんで話し合った、冒険者たちとクウちゃんの「設定」
冒険者たちがゴブリンの集落を見つけ、ちょうどどこからかさらわれてきた女の子を助けるべく戦いを挑んだがゴブリンキングが現れて窮地に陥り、そこにたまたま現れた俺と軽トラと協力してみごとゴブリンの集落を殲滅する事が出来たが、クウちゃんはゴブリンにさらわれた恐怖で記憶を失ったというストーリーだ。
この提案は、俺とクウちゃんだけでなく冒険者たちにも強力なメリットがある。
全滅して命を失ったという事実、つまりはパーティーとしての敗北が、ゴブリンの集落を壊滅させさらにはゴブリンキングを討伐したという実績にすり替わる事がひとつ。
さらに大きいメリットは、女性二人の今後の人生にかかわってくる。ゴブリンという魔物に凌辱の限りを尽くされたという事実は、たとえ命が助かっていたとしても周囲からの好奇の目に晒され続ける。
このまま冒険者を続けるにせよ、市井の中でひっそりと生きていくにせよ、それは彼女らの人生に筆舌しがたい生きづらさをもたらすことは想像に難くない。俺からの提案は、本人たちが語りさえしなければこの事実を永遠に隠し通すことができるのだ。
また、彼らにはこの提案を飲むであろうもう一つの要因がある。それはクウちゃんの存在。
彼らが提案を飲まなければ、パーティーの二人と同様ゴブリンに凌辱された(と思われている)年若い少女の今後の人生も暗雲に閉ざされる。
彼らが自分たちのみが救われるために虚偽を振りまくことを良しとしない人となりであったとしても、うら若き女性の人生を守るという大義名分があれば受け入れるのはやぶさかではないであろう。
冒険者たち4人は互いに視線を交わし全員が頷いたところで年長者と思われる体の大きな男性が俺に向き合い口を開く。
「……その申し出、とてもありがたい話だ。こちらからもぜひお願いしたい……」
よかった、受け入れてくれた。だが、なにか男の歯切れが悪い。
「だが、これではあまりにも自分たちに利が多すぎる。命を助けられ、妹たちの名誉も守られ、冒険者としての討伐の実績まで盗んでしまう。ここまでしてもらって、自分たちにはあなたに返せるものが何もない。もちろん、今の手持ちも、町に預けてある幾ばくかの金も、すべて支払わせてもらう。それだけでは足りない。これから一生かかっても足りないとは思うができるだけの金を、誠意を、忠誠を、敬意を、そして自分たち全員の命を、人生のすべてを、報酬として支払わせてほしい!」
そう言うと、年長者の男性はがばっと音を立てて頭を下げて俺にひれ伏す。他の3人もそれに倣う。土下座という文化がこの異世界にもあるのかはわからないが、目の前の光景はまさにそれだ。
それにしても今「妹たち」って言ったよな。言われてみれば全員髪の色が薄い金色かかった茶色で同じだし、この4人は全員兄妹なのだろう。それを聞いて少し安心した。
もしこの4人の男女が恋人なり夫婦なり三角関係なり色恋の関係であったのならゴブリンに汚されることによって何かしらの悲劇が訪れていただろう。もちろん、兄妹であったからゴブリンの一件が大したことにならない訳ではく女性二人がひどい目にあったことに変わりはないのだが、悲劇の再生産の芽が一つ杞憂で終わったという事は少しでも安心材料になる。
と、考え事を巡らせているとまだ目の前には土下座の姿勢から微動だにせずにいる4人の姿があった。そうか、俺が何か言わなければこの4人は体制すら変える事ができない空気だった。
「とりあえず頭を上げてくれ。さしあたり、報酬は必要ない。」
4人は弾かれたように顔を上げる。
「だめっすよ! それじゃオレたちの気が済まないっす!!」
「そうよ! ソヴル兄の言う通りよ!このままじゃ私たち……」
「お願い! 何か恩返しさせて! 何でもするから!!」
次男と思われる男性と、女性二人が声をあげる。兄妹そろって義理堅い性格のようだ。
うむ、確かにお金は欲しい。日本の家に仕送りをしなくちゃならないからな。だが、この兄弟たちから根こそぎ頂くのは違うと思う。彼らだって生活がある。兄妹4人そろって冒険者をしているのだ。何か事情があるかもしれない。それに、せっかく助かった命だ。
俺への恩返しのためにその人生を捧げるのではなく、自分たちなりの幸せで有意義な人生を歩んでもらいたいと切に思う。
「自分たちの稼ぐ額では不足か? いや、力不足は分かっている……。希望の額を言って欲しい。死に物狂いで返させてもらう! ほかにも希望があればなんでも言って欲しい。あなたに救われた命だ。できる事なら何でもさせてもらいたい!」
長男が声を大にして俺に詰め寄り、他の3人も大きく頷いている。
「さっきも言ったが、俺に報酬はいらない。でも……そうだな。そこまで言ってくれているのに何も受け取らないのはあなたたちに失礼になるな……。わかった、じゃあ……」
「妹ちゃん2人はハーレムに入るのよ!!」
クウちゃんがまたブッコんできやがった……。
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受肉した方のステータス
〈助手席要員〉
名称:クウちゃん
年齢:16歳よ!(謨ー縺医k縺ョ繧定ォヲ繧√∪縺励◆)
職業:蜈牙?縺ョ貎懷?蟾・菴懷藤・ハヤトのハーレム1号
種族:繝励Ξ繧「繝?せ譏滉ココ
状態:3次元(受肉状態)
レベル:なし
固有スキル: 事象改変(7次元時)・運転手補助全般
スキル: 蝨ー逅?ココ縺ョ繧ャ繧、繝・蜈峨?蟄伜惠・諢帙?莨晞%閠・螟ゥ辟カ繝懊こ・繝医Λ繝悶Ν繝。繝シ繧ォ繝シ
文字化けしている部分はクウちゃんが自分で隠蔽しました。
ある方法を用いれば開示されますw




