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11、おじさん、風呂に入る

他の方の小説を読んで勉強しています。

おもしろすぎて夢中になります。

自分の作品を書く時間が無くなります←今ここ





 このところ数日続けて魔物退治の日々だ。ちゃんと朝には村の子供たちを乗せて牧場からミルクを運ぶ日課は続けている。


 

 さて、今日は魔法を試してみよう。この世界では魔法を使えるはずだ。といっても正確に言えば魔法を使えるのは俺ではなく軽トラという設定になっているのだが。

 

 いままで魔法のことをすっかり忘れていたのは内緒だ。



 

 本日一匹目の獲物を見つける。スライムだ。

 

 スライムに軽トラの正面を向け、意識を集中する。軽トラの中にある魔力を火の玉に変換するイメージで魔法を放つ!


 おじさん(軽トラ)は初めて魔法が撃てました!






「いっけーっ!!……って、あれ?」


 

 意気揚々と放った火魔法はスライムには届かなかった……。





 うーむ、解せん。なぜ魔法が途中で止まるのだ。

 

 俺は取扱説明書のスキル欄のページを開く。




〈魔法射程〉


・単体魔法は(保護距離)×(魔法ランク)


・範囲魔法は(保護距離)×(魔法ランク-3)


※範囲魔法は各魔法のランク4から発動可能。


〈魔法範囲〉

   ・範囲魔法の範囲は対象を中心に半径(保護距離×1/2)





 ふむふむ。「保護距離」とは軽トラが俺を守ってくれる範囲の事だな。範囲は……



・保護有効距離は初期値半径5m。


 軽トラレベル6からレベルアップで保護距離1m増。

 例)Lv5→保護5m  Lv6→保護6m  Lv100→保護100m




 なるほど。今の軽トラレベルは3になったばかりだ。という事は保護距離は5mだな。


 火魔法のスキルはまだ(1)なので、今現在の火魔法の射程距離は


      5(保護距離)×1(火魔法スキルレベル)=5m   となる。





 射程距離5mって……。


 

 まだそこらの石ころ投げた方がはるか遠くに飛ぶぢゃないか…








 魔法の射程距離を取扱説明書で確認し、その距離の短さに落胆していた間に軽トラの周りには魔物が寄って来ていた。


 2体の角ウサギが軽トラの側面を角でつついている。ここ数日魔物と戦って思ったのだが、軽トラは敵に側面に回り込まれると戦いづらいのだ。


 前か後ろならそのまま軽トラで跳ね飛ばせるのだが側面だとそうもいかない。軽トラを切り返して方向を変える必要がある。


 ウサギを轢き殺すべく方向転換しようとしたときふと気づく。



「この距離なら魔法が当たる!」


 




 俺は火魔法を発動。



 一体のウサギさんに着弾する。


 ウサギさんは真っ黒になる。


 ウサギさんは動かない。


 一発で倒せたようだ。




 もう一体のウサギは驚いて逃げ出したが、距離が空けば魔法は届かなくても軽トラを方向転換させて轢き殺す。逃げる魔物を追いかけて轢くのはなんとも後味が悪い。

 俺は鬼畜なおじさんになってしまったのだろうか。



 2体のウサギを荷台に回収。


 焼けた方は肉が売れるかわからないが魔石だけでもゲットできれば御の字なので一応持ち帰る。








 スライムに近づいて火魔法を放つ。


 スライムは焼け焦げ魔石を落とす。うん、スライムは火魔法で倒した方が魔石についた「でろでろ」な粘液が燃やされていい感じだ。



 ちなみに水魔法を使ったときはスライムは水系統に耐性があるのか、倒すのに4発ほど要した。しかも、あたった水の塊を体に取り込んでどんどん体が大きくなっていくのだ。

 巨大化していくスライムに驚き、火魔法に切り替えようかと考えていた矢先に4発目の水魔法で倒せた感じだ。耐性はあってもダメージは与えていたということだね。


 土魔法で土塊を作ってぶち当てたら魔石まで割れてしまった。風魔法ではスライムが吹っ飛んでしまい魔石を見失ってしまった。

 

 氷魔法の時はスライムがそのまま凍ってしまい、魔石を取り出すために解凍を要した。雷魔法ではスライムの粘液が飛び散ってしまい少し焦ったが魔石は残っていた。




 ひととおりの魔法を試したあと、軽トラから降りてスライムの魔石を回収する。

 

 ふと見ると、軽トラの汚れがけっこうひどいことになっていた。


 


 タイヤ周りには農作業でついた土の汚れのほかに、倒したスライムの粘液がべったりと付いているし、前面には跳ね飛ばしたウサギさんの血がこびりついている。


 地球だったら絶対職務質問されて任意同行のコンボが発動するだろう。





「ここは洗車一択でしょ」




 水魔法で水を出し、汚れが落ちやすいように火魔法で温度を上げる。ノズルを絞って水圧を高めた水塊を軽トラに放射!イメージは高圧洗浄機だ。


 洗った後は風魔法で水滴を吹き飛ばす。



 一連の工程が終わり軽トラをピッカピカにした後にステータスを確認すると案の定、≪カスタム≫の〈機能系〉に「洗車(1)」が追加されていた。





 村に戻り雑貨屋で今日の獲物を換金する。


 焼けたウサギの肉はダメだったが魔石はOKとのことで、ウサギ魔石×2、ウサギ肉×1、スライム魔石×9で銅貨19枚。今日の日給は1,900円となった。



 

 今日も銅貨10枚を払ってペーニャさんの手料理を頂く。夕食をごちそうさました後は食器を水魔法できれいに洗っておいた。






「さて、試してみるか」


 日中に洗車スキルを発動させたことで頭の中に一つのアイディアが浮かんでいた。


 



 水魔法と火魔法でお湯を作り、軽トラの荷台に注いでいく。


 そのままでは荷台の隙間から水が流れ出してしまうため土魔法で粘土をイメージして隙間を埋めて、思惑通りお湯が荷台一杯に満たされた。




「軽トラ風呂の完成だ!!」





 周囲に誰もいないことを確認して服を脱いで全裸になり、軽トラの荷台にお湯を溜めた浴槽に体を浸ける。

 軽トラの荷台の周囲の「あおり」は高さが30センチほどのため、湯船? はとても浅い状態だ。体を全部お湯に浸けるにはあおむけで寝そべる必要がある。





 真上には満点の星空があった。俺の田舎も空気は綺麗な方だったが、異世界の空はそれ以上だ。異世界に来て初めての風呂が星空露天風呂とはおつなものだ。



 足を伸ばして全身を湯船に浸ける様に寝そべりながら、背伸びと共に深呼吸して大きく息を吐きだし、あらためて星空を見上げる。



 やはりここは異世界なのだ。その証拠に、大きな丸い満月と少し小ぶりな三日月が同時に見える。この惑星には月が二つあるのだ。もしかして今は見えないだけで惑星の裏側にもあるのかもしれない。



 

 多数の星がまたたいている。そういえば、この村はこの惑星のどのあたりに位置しているのだろうか。北斗七星か南十字星を探してみるがそれらしき星の並びは見つける事が出来なかった。

 星座の事は良くわからないが、オリオン座みたいな分かりやすい星座も見当たらない。



 

 異世界に転移してからおよそ10日が経過した。転移の原因をクウちゃんに聞き、一緒に転移した軽トラの謎仕様もクウちゃんの付けてくれた取扱説明書のおかげである程度理解できるようになってきた。



「クウちゃん、どうしてるかな……?」


 


 露天風呂が旅愁を誘うのだろうか。人恋しいような寂しさが心をよぎる。


 妻や子供たちはどうしてるだろう。

 地球では俺がいなくなってそろそろ丸1日が経過した頃だ。子供たちは俺がいないからといって寂しがるような年ではないが、どう思っているのかは気になるところだ。


 長男はどうしているだろう。

 だいぶ大学にも慣れたころだと思う。彼女とかできたのだろうか? そういえば車が欲しいとかほざいていたな。今は俺の乗っていたミニバンを乗り回しているからいいだろうが、彼女とかができれば自分の車が欲しくなるだろう。


 次男はどうだろう。

 あいつは何を考えているのかいまだによくわからない。高校を卒業後の進路とかちゃんと考えていればいいのだが。あいつは特に俺に似てオタク成分が多いからな。ゲームやアニメばかりじゃなくて勉強もそれなりには頑張って欲しい所だ。


 

 俺は日本に戻れるのかな? 子供たちの卒業式には出られるだろうか? 立派な社会人になった姿は見られるだろうか? 長男が無事に大学を卒業して医者になる姿をぜひとも見たいところだ。あいつらに彼女ができるかは分からないが、結婚するとなったとき父親不在のまま結婚式を挙げさせるのは不憫だ。


 妻はどう思っているだろう。この年になり、愛だの恋だの言っている年齢はとうに過ぎ去ってはいるが、別に仲が悪いわけではない。

 子供たちを育てるため、妻は家事、俺は仕事で生活費を稼ぐという役割分担。いうならば、1つの目的に向かうチームでありパートナーといった感覚が一番しっくりくるのだろうか。


 

 幸い、俺が生きている事は家族に連絡する事が出来た。この世界で稼いだお金を送金する事も出来た。

 向こうの1ヶ月はこっちだと10ヶ月もある。つまりは10ヶ月で最低でも銀貨50枚分は仕送りする事が目標となる。


 この異世界でどこまでできるか分からないが、家族の為に少しでも多く生活費を稼いでいかないとな。





 ひとしきり日本の家族の事に思いを巡らせ、ふと視線を足元にやると浅い湯船に寝そべっている為か、お湯の水面からは俺のゾウさんがこんにちはしている。


 うーむ。この姿を誰かに見られたら大変だ。もしペトラあたりが遊びに来たら一生残るトラウマを植え付けてしまうかもしれない。


 ゾウがトラとウマを呼び寄せる事は避けたいので、CP(カスタムポイント)を使って「幌」を発動させて外からの目隠しにする。星空が見えなくなるのは残念だが、トラとウマを未然に防ぐためだ。仕方がない。


 湯上りには「異世界売店」から買ったビールで喉を潤す。最高だ。


 



 荷台の隙間を埋めていた土魔法を解除してお湯を排出し、風魔法で乾燥させる。


 雑貨屋から買った大判のタオルにくるまり荷台に寝そべり眠りにつく。


 

 久々に足を伸ばして眠れる。最初からこの方法に気づいていれば狭い運転席に座って寝なくてもよかったのにね。


 



 明日も晴れるといいな。





〇軽トラステータス


名称:軽トラ 異世界仕様車


レベル:3

 HP ∞ ・MP max/10,000 ・SP 2/2 ・CP 5/10


≪分類≫:魔法道具


≪レア度≫:幻想級


≪運転者≫:橘隼人(専用)


≪固有スキル≫:

・MP駆動

・車体不壊

・成長可能性保持

・搭乗者保護

・積載物保護


≪スキル≫:

・MP自動回復(1)

・火属性魔法(1)

・水属性魔法(1)

・土属性魔法(1)

・風属性魔法(1)

・氷属性魔法(1)

・雷属性魔法(1)

・回復魔法(3)


≪カスタム≫:

〈機能系〉エアコン(1)・MP電力変換(1)・幌(+)・洗車(1)(New!)

〈戦闘系〉轢く(1)・撥ねる(1)・

〈操作系〉なし

〈生活系〉「異世界売店」「異世界CDキャッシュディスペンサー


≪恩恵≫:時空


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― 新着の感想 ―
[一言] 軽トラ生活を存外満喫し始めて笑ってしました。 スライム轢いた時の語彙センスも秀逸でしたね。 少しずつで恐縮ですが引き続き拝見させていただきます。
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