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病める時も、健やかなる時も  作者: 生家 モノ
6/9

6話 真君とお出かけ

 絵画展を楽しんでホール内の喫茶店で食事する事になりました。久しぶりに絵画展で集中しすぎてしまい足が痛くなってしまい、店の奥のソファ席に座ります。


 使い込まれて柔らかくなったソファの背もたれに甘えつつ、遅めの昼食のホットサンドを食べながら向かいの席の真君の話を聞いています。あの絵にそんなエピソードがあったとは…


「早く言ってくれたら、もっとじっくり見たのに~」

 そう訴えていたら具のチーズが冷えて伸びが悪くなってしまったので食べることに集中します。


 真君はナポリタンを早々に食べきって、口の端にソースが付きっぱなしのまま、見たばかりの作品と学生時代の話を熱く語っています。最後の1口、圧縮されたトーストの耳の香ばしさを堪能し、ストレートティーを飲んで私の食事も終わりました。


「真君、口拭きなよ~色々と童心にかえりすぎ」

 全然気付いていなかった様子で慌てて紙ナプキンで口元を拭い「どう?」っと眉と目尻を下げて聞いてくる姿が先程までのテンションとの差が激しくて可愛い。


「多分、綺麗よ…拭きすぎで赤くなってるからよく分からないけどね」


 そう伝えると鼻から下を手で隠して壁の方を向いてしまいました。赤みが引くまでは動きそうにないので、店内に流れるオルゴール風のBGMに耳を傾けて待ちます。


 数年前に流行った恋愛ソングのアレンジで真君専用の着信音に設定していた曲だと気付いてしまった私は顔が熱くなってしまいました。お水を飲んで誤魔化します。


「あ!永世君達じゃない!何してるの~?」

 予想外の声が聞こえ、反射的に背筋をピンと伸ばした真君と共に声の主の方に向きました。赤いショートヘアーの黒のマキシ丈のスカートの女性が右手を振りながら立っていました。

「あ~びっくりした、奇遇だね。」

「奏さん、お久しぶりです」


「休みの日に会うのは珍しいね!」

 真君の忘れ物を届けに会社に行ったときにお話しした時と変わらず気さくに笑う彼女の手に絵画展のパンフレットが握られていることに気がつきました。


「奏さんも絵を見るんだね、僕たちもさっき見てきたんだよ。」


 そう真君が伝えると、彼女は顔を赤らめて目を泳がせていました。普段の奏さんらしくない様子が気になったようで真君が席に座るように促していました。家で聞く彼女の様子と違うので私も気になります。メニュー表を渡して何か頼むか訪ねたところ、レモンティーをと聞いたので、定員さんに声をかけ3人分頼みました。


 定員さんが厨房に入った後、奏さんがポツポツと話し始めました。たまたまホールの前を通っていたら、パンプレットを読みながら出てきた“男性”とすれ違い、気になって立ち寄ったそうです。

「格好よかったから…」

 日頃の彼女と違う様子に戸惑いながらも優しく相槌を打ちながら真君が話の続きを促します。営業職って怖い…本人は心配している様子ですが無意識に情報を引き出しています。


 物思いに浸るようにパンプレットを眺め、その後ホールを数秒間じっと見て去って行ったその男性が“何を”見てきたのか興味が湧いた。そういう事の様です。


「あんな雰囲気の人、近くにいなくて気になったんだもん!」

 そう言って少し冷めたレモンティーを一気に飲み、奏さんは逃げるように去って行きました。レジでお会計をきっちり済ませる姿が可愛らしくて「ふふっ」と笑うと真君とタイミングが被りました。


「じゃあ僕らも帰ろうか」

「そうしよっか」


 帰りも真君の運転で、奏さんが見た人がどんな人だったのか話ながら同じ道を通って家に帰ります。朝に見た白いモフモフのわんこが通っていないか歩道を眺めながら…

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