2話 私の真くん
「寝過ごした!!」
私、永世 縁 は洋服関係の内職をしています。
納品先に手渡しに出かけるために、早起きする予定だったのですが…日数に余裕はあるので問題はありません!
「たいら、行ってくるね~」
お気に入りの『クマのぬいぐるみ』を撫でて寝室を小走りで出て行き、身支度を手早く済ませる…いつも通りの日常です。
10分後、準備完了!
自転車で受け渡しに向かう。これも恒例行事と化しています。
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「あ!ゆかりちゃん、いらっしゃい♪」
私の依頼主、木平さん 32才、ハンドメイドの雑貨店の店長さんで、服のオーダーやお直しも請け負ってもいます。セミロングのブリーチされた髪と切れ長の目から漂う貫禄が強い方です。さらに不思議なご縁もあって…旦那さんが私の夫、真くんの高校の美術部仲間だったんです。
『依頼品』を渡し、確認作業の後で世間話をしたのですが、久しぶりに旦那さんの『卒業アルバム』を見たそうで…真くんの顔にあまり変化が無いと言う話題で盛り上がってしまいました。
「では、また次が出来たら連絡下さい!」
そう言って、家に帰る。いつのも流れです♪
帰り道で食材を買って、夜に真くんと話す事を考えながら…
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「お帰り~」
今日も、真くんは“へろへろ”になって帰ってきました。
職場の同僚、川村さん と仕事の効率の事をケンカして来たらしいです。
これも、時々あることなので問題ないようです。最後は仲直りしてきた様ですし…
今日はおしゃべりする事がいっぱいです。晩ご飯を食べながら少しずつ会話をするんです。
「木平、知らない間に結婚してたんだよ。」
「奧さんのタイプも予想外だった、彼奴は無口だから。」
真くんも、おしゃべりが好きなんです。食事中に話すので、よく口の中を噛む!彼らしいんですが…
「川村さんと、今回は何のケンカしたの?」私が聞くと…
「在庫管理と営業の優先順位!いつものヤツだよ。」
そう言う真くん…平行作業が苦手で、よくミスをするんです。
ただの恋人の時、緊急の休日出勤が入って…
事もあろうに『私との待ち合わせ』を忘れたんですよ!3時間も連絡無し、別れなかったことが奇跡です。私は未だに根に持っていますけどね。
しかし…私も『彼の誕生日』を忘れていた事があるんです。
「明日、会える?」っと電話があった時…
「良いけど、何でわざわざ聞くの?」っと…
“やらかした”んです…あれは、未だに申し訳なく思っています。
いつの間にか、晩ご飯を完食していたので、2人で片付けをします。今日の献立も質素でしたが、真くんもあっさり系が好きなので問題ありません♪
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「まる~久しぶりに“お前”も一緒に寝よう~」
リビングのソファが定位置のクマのぬいぐるみで『たいら』とデザイン違いの子です。『たいら』は直立したような平たい形で、『まる』はうつぶせ寝で顔を上げて立体的だから各々名付けました。2人ともUFOキャッチャーで、同じ日に取れた景品なんです。
4人で仲良く眠ります、限界ギリギリまでおしゃべりしながら…
あぁ、真くんが静かになったので今日はここまで、私も眠ることにします。
年齢の割に“ふわふわ”した髪を撫で、着けっぱなしの眼鏡を外して枕元の目覚ましの隣に置いて『たいら』と『まる』を撫でてお終い!
「おやすみなさい」