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愛×哀集  作者: 緋和皐月
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濾過


 あんなに私を(おとし)めて あんなに私を嘲った

 冷たく酷いあの人が

 私の好きな可愛い人には 優しくしているようでした


 正直言って 吐き気がしました

 湯水(ゆみず)のように湧き出ていた 魅力的なアイディアも

 ふわふわ暖かな 綺麗な気持ちも

 心の中の素敵なものは 火に近づけた白雪みたく

 全て一気に 消えました


 嫉妬しました

 私は 嫉妬したのです

 私の好きな可愛い人は 私を放り

 憎きあの人の元へ駆け 天使のように笑むのです

 これが 嫉妬せずにいられるでしょうか


 私の純粋な気持ちを踏みにじり

 私の言葉を最悪の形で否定して

 私の心に深く消えぬ傷を残し

 私の大好きな人をも 奪っていく

 涙ひとつも 出てきません

 そんなもの とっくの昔に消えました

 何度も苦しめられて泣き 涙なんて枯れました


 楽しい会話をしてくれた 私の好きな可愛い人は

 私と距離を取り始め

 私の元から 去りました


 醜い気持ちを 抱いたまま

 私は更に 醜く 醜くなりました

 ありえないくらい嫉妬して

 ありえないくらい悔しくて

 ありえないくらい傷ついて

 そんな自分に気づいても

 見たくなくて 目を逸らした



 いつも陽気で穏やかな

 素敵な私は もう居ません


 いつも静かに微笑んだ

 綺麗な私は もう居ません


 いつも全てを癒してた

 優しい私も もう居ません



 私の中の良いものは 悪く 悪くなっていく

 私の中の綺麗なものは けがらわしく 濁っていく



 もう 私の好きな可愛い人も

 私を見ようとしないでしょう


 もう 私の好きな可愛い人も

 私と会おうとしないでしょう


 もう 私の好きな可愛い人も

 私と生きたくなんて無いでしょう



 今夜 私は 命を断ちます

 自らの命を 自らの手で

 月の無い 暗い夜に


 美しく 生まれたはずなのに

 醜く 私は死んでいく



 醜く 醜く 堕ちていく

 醜く 醜く



 ねぇ


 こんなに醜い私を こんなにもけがれた私を

 見つけた貴方は誰ですか


 慌てて 腕を伸ばしては

 私の身体を 包もうとする

 見知らぬ貴方は誰ですか


 こんなに醜く けがれた私を

 柔く大事に抱きしめて 安堵の息を漏らしてくれる

 優しい 貴方は誰ですか


 やめてください

 私の声を聞いたふりして 私に酷いことをする

 貴方も あの人と一緒でしょう


 やめてください

 私はもう 誰の手も借りずにいられるよう

 消えるのです


 離してください

 もう 独りになりたくない

 もう 温もりなんて 求めない

 どうか 離してください



 綺麗な 綺麗なその人は

 私が壊れないように そっと 静かに抱きしめて

 間に合った って微笑んだ


 私の荒ぶる心を癒し 穏やかに在る貴方の姿

 けがれを知らず 純粋に在る その姿

 誰かに似ている気がして 私は笑う

 けがれる前の自分だと そんなことも気づかずに



 月の出ぬ 星も出ぬ 黒で染まった綺麗な夜に

 聖なる姿で現世に落ち 冷えた哀しみに溶け込んだ

 私は最後に 濾過(ろか)されて

 澄みきり この世を去りました







どこまでも透明で、ときどき水面が震えて、零れてしまうようなあなたへ贈る。

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