ずーっと以前に書いた創作怪談シリーズとショートショートシリーズ
hitoribochi
たくやくんは、ひとりぼっちでした。
みんながあそんでいるのを、ブランコの上からみていました。
まいちゃんも、ゆたかくんも、えりちゃんも、けいたくんもいます。
みんな楽しそうです。
いれて、って言いたいけど、たくやくんはじっとブランコの上からうごけません。
たくやくんは、つまらなくって目をとじました。
そうすると、なぜだか耳もきこえなくなってしまいました。
こわくなって、たくやくんは目をあけました。
そこでは、まいちゃんが泣いていました。
「どうして泣いているの?」
そうきいたのは、ゆたかくんでした。
「たくやくんが、たたいたの」
え?ぼくはブランコにずっといたのに、どうして?
いつのまにかたくやくんは、おへやのなかにいます。
「どうしてまいちゃんをたたいたの?」
まゆみせんせいが、こわいかおでたずねます。
「どうしてって、ぼく、わからないよ」
たくやくんは、そういうとまた、めをとじました。
また耳もきこえなくなります。
まっくらでこわくて、たくやくんは、まためをあけます。
するとこんどは、けいたくんが立っていました。
幼稚園のうらにある、野原でした。
けいたくんは、手をふってむこうへ行ってしまいます。
まって、といおうとしたけれど、たくやくんは声が出ませんでした。
さみしくってたくやくんは、また目をとじます。
こんどは、さらさらとかぜのおとがきこえました。
たくやくんは、いつもひとりぼっち。
つまらなくなって、たくやくんはめをとじたままあるきだしました。
するとどこかからおんがくが聞こえてきます。
ちゃっちゃ、たらーり、らら。
おとのするほうへ、たくやくんはめをとじたままあるいていきます。
ちゃっちゃ、たらーり、らら。
どんどん、どんどんあるいていきます。
「さあ、たくやくん、めをあけて」
そんなこえがきこえて、たくやくんは、ぱっとめをあけました。
そこには、しらないおんなのこがたっていました。
「ぼくのことを知っているの?」
たくやくんがたずねると、おんなのこは「うん、しってるよ」とこたえました。
「どうしてぼくをしっているの?」
「だって、ずっとみてたもの。ずっとひとりでぶらんこにのっていたよ」
「そうなのか、どこにいたの?なまえは?」
おんなのこはくびをふってこたえました。
「わたしはなまえがないの。それにきのうまではだれにも見えなかったの」
「どうして?」
「わたしは、ゆうれいだから」
そうこたえると、ゆうれいのおんなのこはさみしそうにわらいました。
「ここはどこなの?」
「どこでもいいよ。たくやくん、あそぼう?それからわたしになまえをつけて」
ちゃ、たらーり、らら。
どこからか音楽がきこえます。
ふしぎなおとです。きいたことのないおんがくです。
たくやくんは、おんなのこに「ゆうこちゃん」となまえをつけました。
ゆうれいのゆうこちゃんです。
それからふたりはいっしょにおんがくにあわせてダンスをしました。
たくやくんは、それまでダンスをしたことがなかったけど、ゆうこちゃんはダンスが
とってもじょうずでした。
たくやくんの手をとって、こうするのよっておしえてくれました。
ゆうこちゃんの手は、とってもつめたくって、たくやくんはさいしょはいやでした。
でもたのしくって、すぐにきにならなくなりました。
ちゃ、っちゃ、たらーり、らららら。
たのしくって、たのしくってたくやくんは、ゆうこちゃんといつまでもあそんでいたいな、っておもいました。
ちゃっちゃ、たらーり、らら。
「たくや、たくやくん」
たくやくんはめをひらきました。
「だいじょうぶ?」
めをひらくと、ゆうこちゃんはいなくなっていて、まゆみせんせいがしんぱいそうな顔でたくやくんをみおろしていました。
たくやくんは地面にねていて、なぜだかあたまがいたいのでした。
「きゅうにぶらんこからおっこちて、びっくりした」
まいちゃんも、しんぱいそうな顔でたくやくんをみていました。ゆたかくんも、えりちゃんも、けいたくんもいます。
「おちた?」
「めをつむってブランコにのっちゃだめでしょ、たくやくん」
「ごめんなさい、まゆみせんせい」
まゆみせんせいは、やさしくわらってあたまをなでてくれました。
「それから、ごめんなさい、まいちゃん。たたいたりしてごめんなさい」
「いいよ、もういたくないもん。いっしょにあそぼ」
まいちゃんは、そういうとたくやくんの手をひっぱって走り出しました。
たくやくんは、みんなといっしょにあそんでいます。
けいたくんも、ゆたかくんも、まいちゃんも、えりちゃんもいっしょです。
まゆみせんせいがラジカセをもってきました。
「さあ、みんなでダンスをしましょう」
ちゃっちゃ、たらーり、ららら。
たくやくんは、どこかできいたことがあるっておもいました。
「わあ、たくやくん、ダンスじょうず!」
まいちゃんが大きな声をだしました。みんなも口々にいいました。
まゆみせんせいも目をまるくしています。
たくやくんは、どうしてダンスができるのか、ぜんぜんおぼえていませんでした。
ゆうれいのゆうこちゃんは、きょうしつのすみっこから、たくやくんの様子をみていました。
「ああ、あ。たくやくんったら、もうわたしのことみえなくなっちゃった」
つまらなそうにゆうこちゃんは言いました。
「でも、しょうがないよね。あんなにたのしそうなんだもん」
ゆうこちゃんは、ふわっと浮かび上がると、ほかのひとりぼっちのこをさがしに飛んでいきました。




