プロローグ
俺は馬鹿だった。阿呆だった。
幼稚でペラペラしたおとぎ話に踊らされただけだった。
軽い小説ってよくいったものだと思う
あの時、、前の世界で自殺した日を思い出す。
俺の少年時代はまだよかった。
というか今思えば贅沢過ぎるほど幸せだった。
友達と馬鹿話に明け暮れ、走って寝てれば過ぎる毎日。
中学高校はサッカーに明け暮れた。
サッカーは苦手だが作戦を立てるのは上手く、それなりに一目おかれていた。
そのまま、あまり自慢できない大学に進みあっという間に就職した。……そして地獄が訪れた。
ブラック企業界でもわりと有名なほうのブラック企業に社畜として飼われたのだ。
彼女は大学時代、軽く付き合った2人だけ。
学生時代の友人とは疎遠になった。
俺は1人、人生の7分の6を社畜として過ごし、唯一の休日をゲームやアニメ、ライトノベルに費やした。
5年ほど働いて、その会社をクビになり、それからは引きこもりニートとして自分の人生を歩むことにした。
その日はド○ゴンクエストを全クリし、読み続けていた異世界ものの最終巻も読み終えた日だった。
「ちょうどいいな」
ベランダに出る。
飛び降りるしかないと思った。
もしかしたら、神様が同情して異世界に転生させてくれるかもしれない。
その幼稚な発想に自分で笑う。
そして俺は飛び降りた。
◇ ◇ ◇
簡単に話そう。
俺の幼稚な予想は当たった。可愛いらしく、幼さが残る女神が俺に同情したから願いを聞こうと言ってきた。
俺はすかさず、異世界に転生してほしいと頼んだ。
記憶を残したまま人生をやり直したいと。
俺みたいなクズが異世界で成功する話を何度もよんできた。
この願いに何の疑問も抱かなかった。
女神はいいでしょうと微笑み、俺の体は
粒子のようにばらばらになる、そして消えた。
◇ ◇ ◇
俺は想像通りの異世界に農家の次男として転生した。
俺は幼少期、村一番の神童と注目を集めた。
誉められるのがたまらなくて、30歳の精神年齢を隠そうともしなかった。
しかし、天狗になっていられる時間はあっという間に過ぎていく。
同世代の子たちはいそいそと俺を追い抜き、都市に出たり、家を継いだり、冒険者になったりとそれぞれの道を進んでいった。
俺は、剣も魔法も向いていないと諦め、勉強も放り投げていた。
天狗になっていたせいで友達もいない。
農家は兄が継ぐと決まっていたので、俺は選択肢を見つけることすらできないでいた。
ライトノベルの幻想を諦めきれず、ギルドに冒険者登録はしたが底辺ダンジョンで死にかけて以来、顔も出してない。
よく考えれば当たり前のことだった。
この世界は、環境や自然法則が平成とはちょっと違うだけだ。
平成で底辺だった俺が舞台が少し変わっただけで成功するなんてあるはずがない。
転生してから17年目、そんなことにようやく気づいた俺は今、絶賛ニート中である。