(84)オオクラ
あとは外国に逃げるだけ。なのにどこから嗅ぎ付けたのかオオクラからの使い!アイル、ロイ、大丈夫?
オオクラの邸につくと応接間からは人払いがされた。オオクラは主人の椅子にもたれてパイプをくゆらせている。
「まあ座りなさい」
アイルとロイはソファに並んで腰かけた。
「まず、なぜお前達の居場所が分かったか教えようか。
不動産屋を全て洗ったのさ。これが結構骨が折れたよ。そしてようやく見つけたって訳だ」
二人は顔色一つ変えずに聞いた。
「国ではお前達のことは特に捜してはいない。万朶亡き後たかが官吏一人には何も出来ない。しかも姿を消した…小粒だから放っておかれたんだろう。その活用法も知らずに」
万朶というのはアイルに研究所を与え、この前処刑された議員だ。
ロイが眉をひそめた。オオクラはニヤリとして続けた。
「だが私はそれを知っている。お前達の力を、な」
二人は悟った。万朶が秘密をこの男に喋っていたのだ。
こいつだけか?
いつの間にか無表情だったアイルの目付きも険しくなっていた。オオクラはそれを見て笑った。
「安心しろ、万朶が話したのは私だけだ」
とりあえず二人は胸を撫で下ろす。
「あの使い達も知らないのか?」
「ああ。今のところ妖術使いということにしてある。実際牢から消えた時の番人の知り合いだからな」
痛い所を突かれた。仕方なかったとはいえ牢から消えた事実は消せない。知り合い等はどれくらいいるのか。
「だからな、ここは一つ取り引きをしようじゃないか」
「取り引き?」
「そうだ。私にお前達の力を貸しなさい。その代わりに、私はアイルの復権を約束しようじゃないか。お前達にかかっていた死刑を無くして妖術使いという噂も打ち消してやる。どうだ、なかなかいい話だろう?」
オオクラはパイプをふかしている。断られる訳が無いといった風情だ。
確かにいい話かもしれない。だがアイルにはこの男の手下になって力を貸す気など毛頭無い。それはロイも同じだ。
アイルは静かに言った。
「断る」
オオクラはパイプをくわえたまま二人を見るとニヤリとして言う。
「それはできんぞ。もしここで断ったら私はお前達のことを言いふらす。それはして欲しくないだろう?」
「貴様…」
ロイの目が据わった。
「ああ、それともう一つ。もし私に危害を加えたら、ラウル議員の命は無いと思え」
「!」
アイルが睨む。
「15年前殺されたバートン議員の一人娘。この前の謎の大量死の事件はお前達だろう?研究所の爆発も…巫女をいったん捕らえながら失敗して逃げられたんじゃないのか?」
オオクラは余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)として再度問う。
「ふ、どうやら当たりのようだ。どうだ、私に力を貸すか?」
アイルはしばし黙って睨んでいたがやがて諦めた目をすると言った。
「分かった。お前に従ってやろう。ただし、ラウル議員には一切手出ししないと約束しろ」
「そちらが決まりを破らない限りそれは無いと約束しよう」
オオクラが立ち上がって握手を求めてきたので二人は嫌々ながら応じた。
何やら不穏な感じですねー
オオクラはアイル達に何をやらせる気なのか。どうせ良くないことに決まって…もう二人に悪事させないでー!
さてイラスト描きはノロノロ進んでます!ヘタだけど、見て喜んでくれますように☆頑張って描くよー☆(ほんと描くの遅い)




