●(79)特製スープ
夜、部屋で寝る前。
一夜は、威咲が昨夜は幸せそうだったのに今日は朝からなんだか沈んでいるようだったので気になっていた。
だが聞くのはやめていた。
あいつのことだから、仕方ないよな。シンハにも悪いし。
威咲は1日考えていた。
やっぱり、良くないことかもしれない。
「電気消すぞ」
「ねえ一夜、ゆうべは私、ああ言ったけど…もしかしたらそんな約束出来ないかもしれない」
「…どうして」
「…だって私、いつまで私でいられるか分からないから」
「…そんなこと分かってる。でも俺はそうしたいって思ったんだ。だから…気にしないでそばにいろよ」
「一夜…」
私は、ずるい。この瞬間に私は、このまま一生私でいられればいいのにと思ってしまった。
それはシンハに一生裏でいてくれと言うようなものなのに。
「でも…この体はシンハのものでもあるんだよ?」
「…それでもいいから、そばに…いてくれ」
「…、私は、酷い人だ…だってずっとこのままがいいって思ってる」
「威咲…」
一夜が歩み寄ってきて抱いてくれる。
私は本当に酷い。…でもそれでもいい。私でいられる限り、どうか夢を見させて下さい。
もう自分に素直でいたいと、そう思った。
次の朝、威咲が一夜を揺り起こして言った。
「ねえ一夜」
「何…」
「昨日のこと、二人に教えようか」
「え?いや、いいよまだ。からかわれるぞ」
「でも一緒にいるのに内緒だと変じゃないかな?」
一夜は腕を伸ばして威咲の頭を撫でてやった。
「…全部終わったらその時言おう」
「…うん、そうだね」
威咲が照れたようにはにかんだ。
買い物に多摩と威咲で出掛けたが、多摩がおもむろに切り出した。
「そーいえばだけど威咲ちゃんは退治が終わったらどうするの?一夜君と付き合ってる状態よね今のところ。離れちゃうの?そこんとこ一夜君とちゃんと話し合った方がいいわよ?」
「そうだね」
「…いっそ結婚しちゃえば?」
「あ…」
「…え?」
威咲がしまったというような顔をする。多摩の目が丸くなった。
「えぇ!?もしかしてもうその約束した!?」
「…うん」
威咲が恥ずかしげに頷いた。
「ちょっとちょっと~、いつ決めたのよ?」
「おととい、部屋に戻ってからやっぱり終わった後の話になって…」
「ひゅ~やるわね一夜君も。そう、結婚するのね。そうと決まれば」
多摩は腕組みをしてうんうんと頷いた。
「今日の昼ご飯あたしが作るからとっておきの料理を作ってあげるわ」
そしてお昼。
「一夜、おめでとう」
席につくなり垂華が言った。
「?」
「結婚するんだろ?」
「!なんで知って」
「あの、ごめんなさいバレちゃったの」
「~~」
「一夜が申し込んだの?」
「…。終わったら解散っていうからさ、それならって。離ればなれになりたくねえって思ったし、いいきっかけだろ」
「ひゅ~う、言うわね」
「コホン、じゃあこの場を正式に婚約発表の場にしようか」
「そうね、二人から何か言いなさいよ」
「何かって言われてもな」
「じゃあ、一夜、これから何があっても一生威咲ちゃんを大事にすると誓いますか?」
「あのな」
「垂華、それじゃ結婚式の神父よ?」
「そう?じゃあ、そうだな、誓いのキスをどうぞ」
多摩が大きな目で見てくる。
「はぁ…」
一夜はため息をついた。
「キッス、キッス!」
二人にからかわれる。
「バーカ、しねえよ!」
無視してスープを一口飲んだ一夜がいきなりむせた。
「…っ、なんだこれ辛…っ」
「特製ピリ辛スープよ。あたしの村でおめでたい時に食べる定番なのよ」
「ひがみか?」
垂華が言って、一夜はまだむせている。
「そうね、ついに一夜君がひとのものになったのかと、じゃないわよ違うって言ったでしょ。
あ、それと威咲ちゃんこの焼きニンニクも食べてね?体に精がつくから」
「ありがとう」
からかいながらもちゃんと心配はしてくれているのだ。
その横で垂華は涼しい顔でスープを口に運んでいた。
「お前ら、この辛さに慣れてんだな」
「気をつけて食べれば辛さが爽やかで夏にぴったりだよ」
「また作るから慣れてね?」
投稿がいつもより遅くなってごめん。
文を打ち込んでから途中でみてみん開いたら、戻ったら文が消えてたのよ…
もっかい急いでやりました!




