(66)もう逃げないから
梅雨の晴れ間を縫って魔物退治は進む。
「あれ?威咲ちょっと待って」
一夜が威咲を呼び止める。
「なんか痩せたか?」
「そうかな」
一夜が威咲の肩や体を軽く触って確かめる。
「やっぱり痩せたな」
「魔物と同居するっていうのはそれだけ消耗するんだろう」
「垂華」
一夜はまた恥ずかしいところを見られたと思った。
「些細な変化にも気付くなんて流石は一夜君ね」
多摩も顔を覗かせた。
「からかうなよ…」
一夜はガックリ肩を落とす。
二人が居間に入ってきて座る。
「威咲ちゃん気を整えてあげる」
多摩が進み出て威咲の両手をとる。
「リラックスして目を閉じてね」
二人が瞑目して黙ったところで垂華が言う。
「巫女の力を整えてコントロールするのも我々の役目だからな」
3分位そうして多摩が目を開く。
「もういいわよ。やっぱりちょっと疲れていたみたいね、大丈夫なようでも少し気が薄くなってた。それを補ったから…さっきまでよりも楽になったでしょ?」
「そうだね、なんか体が軽くなったかも」
「これからもたまにこうしてあげるね」
頷いて、少ししてから威咲が言った。
「洗濯物取り入れてくるよ」
あたしも、と多摩も一緒に出ていった。
洗濯物は乾いていた。
取り入れながら多摩は威咲を見て、なんとなく威咲が何を思っているか気がついた気がした。
威咲は何も言わないけれど、一生懸命で気丈なようで、実は不安を抱えている。それはきっと、自分はずっとこのままなのかということ。
魔物を抑えながら毎日魔物退治をして多大なエネルギーを使うことで、巫女は思ったよりも消耗が激しい。
最後まで大丈夫かという心配もある。事実、身体が痩せる程だ。
威咲の様子にはちゃんと目をつけておかないといけない。それとも巫女の方で何らかの対策をするだろうか?するならば、考えられる方法はひとつ。
毎回完全に表に出るより消耗が少なく済む方法。それは、威咲のままに力だけを貸す方法。近いうちきっとそうするはずだ。
「威咲ちゃん、今は巫女のやることが見えるだけだけど、自分の手でそれをやることになったら、出来る?」
「え?どうして」
「このままじゃ消耗するから、巫女が入れ替わらずに力だけを貸して、そうすることになるかもしれない」
「そうなんだ…私…」
威咲は一度俯いたが、顔を上げると真っ直ぐ多摩を見た。
「出来るかな。でも、もしそうなったら頑張る。そして早く終わらせよう?」
多摩はホッとした。
「威咲ちゃん…」
「私、もう逃げないから。今まで何も出来なかったけど、もし役に立てるなら頑張るよ」
威咲は微笑んだ。
一夜が前に恥ずかしいところを見られたと思っているのは、最初の方の、威咲が三日ハシカで死にかけて薬草のお陰で助かった朝のことですよ~☆目覚めて、威咲の呼吸を確かめた後で、ついその頬を優しくつついて微笑んだ所を…垂華に見られたのでした。
((7)朝日と金柑の花 です、読んでね)
すっかり秋風にかわりましたねー。時々牡鹿が鳴く声が聞こえます。
先月から聞こえてたけど、今の方がいい声です。段々気持ちが研ぎ澄まされてくのか…はたまた日々鳴くうちに上手くなるのか…
今は哀愁込みの切ない系?




