(56)ON
研究所に青白い光の壁が現れ、威咲を担いだ男が出てきた。
その場にいた金髪の女は満足げに笑った。
「でかしたわ。これで実験に取り掛かれる」
女は威咲を検分し、左手首の傷跡を見ながら言った。
「自殺を図ったらしいな。まあ、理由はすぐ分かったが」
傷跡は赤く残っている。
それから長い髪に目を付けて言った。
「これは後で何かに使いましょう」
髪を結んでいる紐とリボンを解くとハサミをとってきて首の後ろで髪を切った。
毛束を先程の紐とリボンで結んで、机にしまった。
「じゃあ、その子を運んでくれる?」
実験室で寝台に縛りつけられた威咲に、催眠剤の注射を打つ。これで装置に固定されているうちは起きない。
「人間兵器。睡眠無意識下でひどいことばかり聞かせて出る感情の脳波を変換機に送り、アンテナから音波にして飛ばす。
その音波を受けた人は皆知らないうちに感情がシンクロする…誰でもいいけどこの子を使いたいの」
機械をつなげながら話す。
頭に装着した機械からは、拷問を受ける人の音声や、罵声、叫び声等が聞こえるようになっている。
「これで皆段々不安になっていきやがては些細なことでも争うようになっていく…そして終わるのよ」
スイッチをオンにした。
探しても見つからない威咲に半ば放心状態で一夜は夜道を歩いていた。
威咲の言った言葉が何回も頭を回っていた。
あの晴れた日に言っていた、私が消えても忘れないでねという言葉は、これだったんだ。
夕方、抱きしめたぬくもりが胸を締め付ける。
消えるな。死ぬな。
初めて聞いたあいつの気持ちが、その時のあいつが、その声が、瞳が。
背中に伝わった指の感触が。消えるなんてあり得ないから。
―――――――大好きだよ…
そう言った威咲が脳裏に焼きついている。
垂華には俺は俺で探すと伝えて、それからずっと歩き回っている。
さすがに疲れているが休む気もしなかった。
どこに行ったんだよ――――――――
居住地区のブロック塀の所で、平屋の瓦屋根の上に座る人影に気づいた。
黒服に金髪のショートカット。一夜を見下ろしていた。
一夜は一瞬目を見開いたが、無視して通り過ぎようとした。
「あの子は連れ去られたぞ」
一夜は足を止める。
「探しても無駄だ」
上の女を見上げると、女は笑った。
「あんたあの子の何なのさ」
ひとしきり笑った後で女は言った。
「諦めな。きっとお前はあの子を失う」
「…どこに連れ去った?」
睨むと女も目つきを変えた。
「…この死に損ない。我々のする事に手出しはさせない。
…もっともお前には関係ないか」
一夜は見切りをつけて無視すると歩き出した。
女は黙ってその後ろ姿を見送り、やがて呟いた。
「諦めな」
夜風に僅かに砂塵が舞った。
サブタイトルは、スイッチONのON。一夜の気持ちもONなのかな?なんてね☆
インディジョーンズ見てるんだけど、シリーズの放送があるたびに3作目だけ忘れて見ないんだよ…なぜ。やっぱ面白いです。
あと最近ブタ草?窓開けてらんない…




