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CALL  作者: スピカ
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●(54)let me go

 一夜(いちや)威咲(いさき)を見、問うた。

「どうして逃げたんだ?」

 一夜だってこんなことを聞きたいわけではない。

 威咲は小さな声で答えた。

「だって、私がいると皆に迷惑がかかるから」

「迷惑じゃないって言っただろ」

「…でも、迷惑になる…たし、私、分かるから。何かが脈打って、私の中で育ってる。

 そのうちきっと私はどうにかなってしまうの」

「巫女がいるから大丈夫だって」

「ううん、そのうちきっと…私は私じゃなくなってしまうの」

 一夜が目を細める。

「私それが怖くて、皆にこれ以上迷惑かけたくなくて…っ、お願い私のことはもうほっといて!」

 一夜は威咲を抱きしめた。

「迷惑じゃないって言ったろ。それにあいつらをもっと信じろよ」

 威咲の体が震えていて、その訳に気づいて一夜は腕に力を込める。

 脳裏にさっきの映像が甦る。組み敷かれた姿が。

 レイプなんて。こんなに簡単に傷つけられるなんて。

「私…いなくなった方がいいんだよ…」

 威咲は泣いている。

「私なんて、死…消えちゃった方が」

「そんなこと言うな」

「ううん、私なんて」

 そこで、一夜は威咲の唇を自分の唇で(ふさ)いだ。

 威咲の体が大きく震えて強張(こわば)る。

「威咲」

「い…」

 また唇を塞ぐ。

 今度は体から力が抜ける。

「…っ」

 一夜は威咲をそのまま押し倒した。そして頬と首にキスした。

「―――――――っ!」

 首をすくませ威咲の体は小刻みに震えていた。

 一夜は動きを止め、じっと威咲を見下ろす。

 何やってるんだ俺は。これじゃあさっきの男達と同じじゃねえかよ。

 ただ、言葉では伝えられない気持ちが先走って。


 威咲は驚いたが一夜を見た。

 その目が揺れている。何か色んなものをはらんだ目が。

 一夜のこんな顔ははじめて見る。

 一夜がいつも何かを押さえ込んでいること、知っていた。目を見れば分かるよ私。

 一夜の肩越(かたご)しに見える空は、黄昏(たそがれ)。オレンジ色から薄いブルーに変わっていく、夜と昼の狭間(はざま)の色。


 一夜が身を起こして言った。

「ごめん、どうかしてた…」

 威咲は首を振った。

「ううん、…一夜は怖くない…」

 一夜の目が見開かれる。

「怖くない…大好きだよ…」

 好き。一夜なら構わない。

挿絵(By みてみん)

「威咲…」

 威咲は少し青ざめていて、目が潤んでいた。

 一夜は切なげに目を細め、威咲を起き上がらせた。


 威咲は手が震えた。

 やっと気持ちを伝えられた。その気持ちが大きくて。

「威咲…」

 見つめ合って、一夜が小さく言った。

「俺も好きだよ」

 それからまた抱きしめられる。

 温かい気持ちが溢れ出して止まらない。

 ソロソロと威咲も腕を伸ばしてみる。

 一夜の背中。抱き合って、一夜の腕の中で満たされた気持ちになる。

 ずっとこの時が続けばいいのに。時間が止まってしまえばいいのに。




 しばらくそうしていて、やがてどちらからともなく腕を解いた。

「戻らないとな。垂華(すいか)が待ってる」

 一夜が立ち上がって手を差し出す。

「ほら、行こうぜ」

 威咲は手をとって立ち上がると言った。

「一夜、ごめん、ちょっとトイレ」

 一夜が怪訝(けげん)な顔をする。

「本当か?」

「うん。すぐ戻るから」

 一夜が手を離す。

 茂みの中の方に威咲は消えた。




 一夜は待ってもなかなか威咲が帰ってこないことに気づいた。

「威咲?」

 入って行った方の茂みに呼びかけてみるが返事は無い。

 大きい声でしても同じだった。つまりはそういうことだ。

「…んで…、なんでだよ…っ!」

 辺りはもう薄いブルーに包まれている。じき暗くなる。





レットミーゴーはブルックのアルバム、「カミングホーム」日本盤のボーナストラック(は日本盤のみ)の曲のタイトルなのだ!この曲めちゃ好き~。すごくキレイな感じ。良かったら検索してみてね☆

今回のシーンは、とても好きです。威咲の「大好きだよ」に答えた一夜の小さな声。今までずっと押し殺してきた気持ち、ようやく手を伸ばせたね…って感じ。

でもこの後どうなるのか。次も見てね☆

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