(49)変わったこと/護符
一夜と威咲は近所の散歩などは二人で出かけられたが、買い物など遠出、すぐ駆け付けられない所に行く際は必ず多摩か垂華が一緒でなければいけなかった。
威咲と垂華が買い物から帰ってきて穏やかに笑いあいながら台所で材料の下ごしらえをしている。
「あ、一夜」
「水飲みにきた」
「そう、あ、お茶あるよ。今朝入れて冷ましてたの」
「じゃあそれ貰う」
威咲が手を拭いてお茶をついでくれる。
「?なんか…」
「あ、気づいてくれた。庭のレモングラスを使ってみたの。垂華君がこれがそうだって教えてくれて」
「ふーん…ま、悪くはねーよ」
「そう?良かったー」
この頃この二人で一緒にいる所をよく見る。穏やかそうに。
確かに以前二人をくっつけようとしたが、別々に暮らしていた1年間で人間関係が変わったのだろうか…?
下ごしらえを終えて道具や手を洗いながら垂華が言った。
「ちょっと思ったんだけどさ、もしかしたら一夜、誤解してるかも知れないな」
「え、何を?」
垂華は少し笑った。
「俺達が付き合ってると思ってるんじゃないかな」
「…そうかな」
威咲は考え込む。
垂華はその様子を見て微笑むと、手を拭き威咲の頭をクシャリと撫でた。
ドキッとして、垂華と目が合うと垂華はまた小さく微笑んだ。
一夜、その内本当に威咲ちゃんを取ってしまうぞ。…なんてな。それはあり得ない、出来ない話――――――――
この頃眩暈が多いので、威咲は垂華に思い切って相談してみた。
「そうか…」
垂華は腕を組んだ。
「何か自分で出来ることとかある…?」
出来る限り自分で対処できたら。
垂華は軽く笑むと
「お守りのおまじないしてあげる」
そう言い威咲の手をとった。
「手の平に護符を書いてあげるから眩暈がした時は握って」
そして口中で呪文を唱えながら指先で手の平に何か書いた。
書き終わると模様が一瞬発光して、何か冷たいか熱いか分からないが微かに焼けついた気がした。
「…これで大丈夫」
垂華君にそう言われると安心する。信じよう。
最近戦闘が再開していることもあり、それ程多くはないがそれなりに人が死んでいる。
魔物は人の命や負の心を餌に増殖する。きっとその影響が本体である威咲の中の魂に伝わってきているのだろう。段々と育った魔物の力が本体に及び、いつか光を逆転しようとして現れる、と垂華と多摩は前に言った。
私の感じる拍動は、魔物のもの。私の中で育つ。
その時威咲はふと思った。
もし私が死んだらどうだろう?魔物の本体が死ぬことにはならないか?
威咲はハッとして自分で自分を抱く。
それは駄目。死んだら駄目だよね。
でも私が死ねばもうこれ以上みんなに迷惑がかからなくなる?―――――――
威咲の中で今までの悩み全てが繋がって何かの糸が切れた。
威咲はその考えにとりつかれてしまった。気がつけば死ぬことを考えていた。
それは、自殺だ。だが一度思いついたものはなかなか頭から消えない。
日々そんなことばかり考えて暮らす。
元気がない、と多摩に心配されて眩暈が多いからだと嘘をついた。本当に心配してくれるのが嬉しかった。
夜、部屋で一夜とゲームをしていた時、また眩暈に襲われた。
目の前がすぅっと暗くなり意識が薄らぐ。一夜が席を蹴って威咲が倒れるのを防いだ。
威咲は朦朧とする意識でなんとか垂華の護符を握った。手の平から温かい気が流れ込み魔物の気を静めていく感じがした。
「垂華…君…」
威咲の口から微かな声が漏れた。
一夜は威咲をそっと抱き上げるとベッドに下ろした。そして手の平を握り強く念じて呼びかける。
垂華、威咲が――――――――
威咲ちゃん大丈夫!?by多摩、という、飛んでくる様子が浮かぶ…なんかマジでヤバイ。
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