(5)雨が上がってみれば
威咲の父親が何者かに殺されて、一夜は自分の放浪生活に威咲を連れて行くことにして村を出た。
街道で雨のためとどまっていると、止まない雨で堤防が決壊する。避難中、川に落ちた子供を威咲は危険を顧みず助けたが足の骨にヒビが入ってしまった。
朝、昨夜の雨がようやく上がり、嘘のような青空が雲間から覗いている。
二人はまだ眠っている。そこへ握り飯を持った若い男が現れた。
男は一夜の鼻先に握り飯を差し出し何秒で目を覚ますか数えてみた。
57秒で目が開き、目が合った。
「おはよう。これ食いな」
「…サンキュー…」
棒読みで礼を言うと一夜は握りを受け取った。早速食べながら聞いた。
「これどうしたんだ?」
「おばちゃんたちが炊き出ししてんだ。そのこの分もあるぞ」
「ああ、おい威咲起きろよ飯だって」
一夜は威咲を揺り起こす。
「ん…」
「威咲ちゃんっていうんだ?君は?」
「一夜。お前は?」
「垂華」
「スイカぁ?変な名前だな」
「スイカじゃなくて垂華!垂れる華。イントネーションが違う」
「ああハイハイ垂華ね」
「一夜君て年いくつ?」
「23」
「え~うわ、15、6にしか見えない」
「よくそう言われる」
「俺は21。威咲ちゃんは?」
「私は18。ありがとういただきます」
「なんならおかわり持ってこようか?」
「ううん」
垂華は割と軽いフランクな感じだった。地元民との架け橋を買って出てくれた。
「欲しい物があったら言ってね」
お陰で何人かの人達が話しかけてくれた。
昨日の親子が見舞いに来た。
「昨日は助けて頂いて本当にありがとうございます。おかげでこの子は助かりました。そのせいで足を怪我してしまったんですよね?
お詫びに私たちにできることならお手伝いしますから。昨夜はこの子も熱を出してしまってこれませんでした。さっき熱が引いたんです。ほらお礼しなさい」
「お姉ちゃんありがとうございます」
「この子は緋尾っていいます。仲良くしてくださいね」
「お姉ちゃん熱あるの?」
「うん、でも大丈夫多分すぐ治るから」
「治ったら遊ぼうね」
「うん」
親子が去ると垂華が入れ替わりにやってきた。
「一夜、外に行こう」
二人は前庭から街を見下ろした。昨日の今日で、まだ街が川の一部になっている。
「君たちは兄妹…じゃないよな。威咲ちゃんと一夜ってどういう関係なの?」
「…」
「恋人同士でもないっぽいし」
「秘密」
「え~。教えてくれないの?」
「教えない。プライベートだから」
「そうですかー。ケチだな」
「ただの連れだよ、連れ」
「ふうん…。まあそれはいいや。
しかしこの流れじゃ堤防復旧作業大変だな。どっかで橋流れたかも知れないし。そうなったら足止めだね~」
「お前軽く言うなよしかも嬉しげに」
「威咲ちゃんの足治るまで滞在したら?」
「…まぁそうなるだろうけどな。背負うわけにもいかないし」
垂華はカラカラと笑って言った。
「あーあ、後片付け大変そうだよー」
その日は後片付けや復旧の段取りを聞いたり垂華の仲間と喋ったりして過ごした。
威咲の熱はなかなか下がらず、それどころか午後から高くなってきた。それに伴い呼吸も少し苦しそうだ。
また様子を見にきた緋尾の母親が首に一つ赤い点があるのに気付いた。
「これは…」
長老に見てもらうと長老は渋い顔をして言った。
「三日麻疹じゃな」
「三日麻疹?」
「そうじゃ。この辺ではそう呼ぶ。首筋の赤い斑点が証拠じゃ、間違いない」
「それはどういう…」
「身体に赤い斑点が出て高い熱が出て、三日以内に治らなければ、死ぬ」
「!」
その場にいた緋尾が両手をぎゅっと握りしめた。
「お姉ちゃん…僕のせいだ」
それに気付いた一夜は言った。
「緋尾のせいじゃねえって」
「熱が出たのはいつからかの」
「昨夜からだから…1日?」
「うむ。山に生える薬草を飲ませれば助かる。誰か行って採ってきてやりなさい」
何でもその薬草は珍しく、あまり生えていないが麻疹に良く効くらしい。乾燥させたものが普段ならあるのだが運悪く切らしていて採りに行かないとないという。
「よし!俺が採りに行くよ」
「じゃあ俺も」
「いいよ一夜は威咲ちゃんのそばにいろよ」
垂華はそう言い残し仲間と出て行った。それに緋尾もついて行った。
廊下では落ち着かないので使われていない小部屋に移った。
威咲が汗をかいていたので緋尾の母親が身体を拭いて着替えさせた。身体にも赤い点が出ているらしい。
薬草で治るというから垂華たちの帰りをただ待った。
スマホのデータを使いきってしまい次話投稿出来ませんでした。音楽の聴きすぎでした。
まあ、のんびりですので気長にチェックして貰えたら幸いです。




