●(41)wound
半年経って…
晴れた休日、一人で紅葉を見ながら散歩した帰りに一夜は目を疑った。
通りの先に威咲が立っていた。
人を待っているようにして、向こうを見ている。
こっちには気がつかないのか。人違いだろうか。
いや、まさか自分が威咲を見間違えるはずは無い。それに珍しい青灰色の髪とハシバミ色の目。髪型も変わっていない。黒い裾の長い服とスカートを着ている。
一瞬立ち止まってしまったが一夜は歩き出す。
無視してすれ違ってしまうつもりだった。
だが偶然に視線をずらすと、建物の間から出てきた人が服の内から拳銃を出すのが見えた。その拳銃は威咲に狙いが定められる。
男が引き金に指をかける。
一夜は反射的に駆け出して威咲をかばって突き飛ばす。それと乾いた銃声が響いたのは同時だった。
帽子を目深にかぶったその男は踵を返して立ち去った。
一夜は腕の付け根に痛みを感じた。一夜と威咲は折り重なって倒れた。
威咲は知らない人を見るようにして一夜を見ている。
良かった。無事か。
肩から胸にかけてがどんどん温かいもので塗れていく。当たり所が悪かったのか、出血多量だ。
出血を見て威咲の目が丸く見開かれる。
血。目の前が真っ赤に染まる。
同時に激しい頭痛に襲われる。
「あ…っ!」
耐えきれず頭を押さえた瞬間、威咲の中で何かはじけたようになり、一瞬視界が真っ白になる。
通行人が集まってくる。
威咲は全て思い出した。目の前で一夜が倒れている。
「一夜!?しっかりして」
恐らく出血のショックで気を失っている。威咲は一夜を抱えて叫んだ。
「誰か、手を貸して下さい!」
集まった人が一夜を抱えてくれ近くの家に頼み込み、運び入れる。家の人は板の間を貸してくれた。
医者だという人がたまたまいて駆け付けてくれた。
鞄からピンセットを出して弾を取り出す。弾は右肩口に当たっており、割と太い血管を損傷したため出血多量だったのだ。だが幸いに動脈ではなかった。
止血を施して様子を見る。一夜は目を閉じたままで、顔は血の気が失せている。
「だめだ、血が足りない」
その言葉を聞いて威咲が顔を上げる。
「あの…良かったら私の血、使って下さい!」
医者が威咲を見る。
「そうですか」
幸い抗体反応は無かった。チューブが繋がれて、威咲の血が一夜の中に流れ込んでいく。
無意識下で一夜は感じた。熱い。血が、沸き立ってくみたいだ…
「一夜…頑張って」
祈るように一夜を見つめた。
少しして威咲から針が抜かれる。
「…よし、後足りない分は生理食塩水を足そう」
威咲は処置が続くのを見ながら壁に寄りかかった。血を抜いたことで少しだるかった。
良かった。一夜は生きている。目の前に一夜がいる。
涙が出てきた。涙は止めどなく出てくる。
また…会えた…――――――――
一夜は目を覚ました。貧血からか軽い頭痛がする。
うっすら目を開けると見慣れない天井が見える。窓から柔らかい光が射し込んでいる。
そうか、俺、撃たれたんだ…。
包帯が巻かれ、右腕は首から吊られてあった。痛み止めが打ってあるのか痛みは無い。
視線をずらすと威咲がいた。ベッド脇に座って俺の顔を覗き込んでいる。
目が合うと威咲の目から涙が溢れ出た。
一夜は目を細めて左手を伸ばすが届かず、威咲がその手をとった。
「……威咲…?」
「…そうだよ。威咲だよ」
涙はそのままに、微笑んだ。
その瞬間、一夜は全身水に打たれたような、光を浴びたような、そんな感覚に包まれるのを感じた。
そして、はっきり自覚する。
もう誤魔化せない。俺は―――――――――
woundとは傷、弾傷などに使う単語です。何はともあれ再会出来ましたね。
ヘブンズサインて曲名で検索しても歌詞しか出ないと知り、改めて。アルバム名14soulsで検索すると一覧出るよ☆最初聴いた時、まるで天使が舞い降りてくるように感じた名曲。ここ読んだら是非聴いてみて☆☆




