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CALL  作者: スピカ
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(37)一人で

「久しぶり。元気だったかぁ?」

 スズミに歓迎されて和む。

「わー、買い物してきてくれたのか。ありがとな。タクは仕事だよ。中入って荷物置きな。あたしはこれ干したら入るからさ。お茶入れるから待ってて」

 そう言って促す。

 一夜(いちや)は頷いて中に入る。


 居間に入るとあの赤ちゃんがいた。

 腰に紐を結ばれ、その紐はちゃぶ台の足に結ばれていた。

「あー」

 一夜を見て声をあげた。

「お前育ったなー…」

 恐る恐るそばにあったおもちゃを振ってみると、立ち上がり一夜の腕につかまるとおもちゃを(つか)んだ。とりあえず泣かない。

 ほっとして(かたわ)らに腰を下ろしておもちゃで遊んでやる。

 そこにスズミが来て言う。

「大きくなっただろ?それに最近はあまり人見知りしなくなってさ」

 子供の頭を撫でる。

「お茶入れてくるね」


 持ってきたのは麦茶だった。

(あさひ)、お茶」

 哺乳瓶に入れた分を子供に渡す。

「もう自分で飲むからな」

 自慢気だ。

「で、用はどうだった?」

「それがさ…」

 こういう訳で明後日また行く、と言うとそうか、と頷いた。

「去年来た時に言えば良かったかな。気が利かなくてごめんな」

「いや、俺も頭から諦めてたから確かめることが思いつかなかったし」

「そうか、…ところでさ、威咲(いさき)ちゃんは元気にしてる?」

「!あいつとはもう一緒にいないんだ」

 スズミの目が大きくなった。

「ちょうどいい預け先が出来たからさ、もうそこで置いてくことにして別れた。多分仲良くやってると思う」

「そう、か…」

 少しだけ沈黙した。

「だけどまあ、あんたたちがそれでよしとしたんなら、しょうがないか…。でもまた会いたかったな」

 困ったような笑い方。一夜は首を振ってみせた。




 夕方タクは帰宅してスズミと同じことを聞いてきた。

「…でまた明後日来いって」

「ふーん。ところで威咲ちゃんは?」

 同じように答える。

「なんだ、会えるのかと思ってた…残念だな。にしても、俺はてっきりその内二人がくっつくと思ってたけどな…現実は違ったか」

 一夜は呆れ気味に返してやる。

「本気で残念そうだな」

「だって威咲ちゃん可愛いじゃん」

 さらっとそう言うとまたあー残念、と言った。




 今回は一人で居間に寝る。

「寂しかったら一緒に寝てやるぜ?」

「いや遠慮する」

「そうか、ならごゆっくり」

 語尾にハートが付きそうだと思った。年のせいもあるだろうが昔と大違い、幸せは人をこんなにも変えるのかとおかしかったが口には出さない。

「お休み」

 そう言ってタクは寝室に消えた。自分も寝よう。明かりを消した。




 次の日は当然一夜は子守り係になった。だが今回は泣かないので調子よく遊んでいる。

 少し歩けるくらいだがすぐ行きたい所がある時は抱けとせがんで指さしをする。元気な男の子だ。

 髪は茶色で目と鼻はスズミ、他はタク、両親色白なので旭も色白だ。

 おぶって畑までついて行きスズミが花の世話をするのを眺めたり、オムツを替えたり、おもちゃで遊んだり…、結構疲れたが楽しかった。

 花はポピーが今盛りで、花が咲く期間は朝イチで花屋に卸すそうだ。

 明日も早朝仕事に行く前にタクが刈り取って出荷するらしい。バイクにバケツをつけるための手製の背当てに似た(くら)が置いてあった。




 翌日、一夜は9時に区役所に行った。

 約束通り串田(くしだ)さんを呼び出してもらい、座って向き合った。

「あの、一昨日の件、分かりましたか?」

「はい、言ってもよろしいですか?」

「お願いします」

「お兄さんは契約した兵役の期限は6年前に終わっていました。でも帰って来ないということで軍部に確認した所、軍部の方でもわからないという答えでした」

「え?」

「軍部によると、兵役の途中で敵襲に()って、遺体は回収されなかったらしいですよ。となるとひょっとすると生きてるかも知れませんが消息は不明です。

 行方不明では相続人にはなれません。行方不明者は行方不明になってから17年経つと死亡の扱いがなされます。出来れば今日届けを出していって下さい。勿論見つかり次第届けは取り消すことが出来ますから」

「そう、ですか…」

「はい、そうすると今相続されるのであれば貴方が相続人になるしかありませんがどうします…?」

 気遣わし気にたずねられ、一夜は考え込む。

「そういえば、お父さんの行方不明届けも出していって下さいね、蒸発したんですよね?」

「あ、いえ父は…生きていてたまに気まぐれみたく叔父に手紙を出すらしいです。といっても前にきたの2年前だけど…この間叔父が街で見かけたと言ってたので生きてます。

 でも…無理だと思います」

「そうですか…じゃあお父さんの行方不明届けは出さないんですね」

「はい」

 そして一夜は考えてから言った。

「あの、やっぱり俺が相続人になります」

 串田さんはにっこり笑って言った。

「分かりました。では手続きのための用紙を取って来るのでここでお待ち下さい」





ゆうべ寝る前にARTSCHOOLの14soulsという曲(これは良曲です)を繰り返し聴いたので今日は一日そんな感じでした。爽やか気味な気分です。

今回は一夜は一夜の人生を歩む、て感じですね。次回もお楽しみに~⭐⭐

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