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CALL  作者: スピカ
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(28)父を殺したのは誰

威咲(いさき)ちゃん、今まで見た映像で大体必要な所は全部分かったと思うけど、巫女がどんな感じか分かった?」

「うん」

「よし、じゃあそれはひとまず終了。お疲れ様。これからはお勉強です。我々の使う術や(まじな)いについて学んで(もら)います」

 そう言って垂華(すいか)は笑顔を見せた。

「はいこれ、ノートとペン。聞いただけじゃ覚えられないからね」

 引き出しからそれらを出して威咲に渡す。

「あの、垂華君。私見たことは分かったけど、思い出すんじゃなくて覚えただけだし、それに私には何の力もないの」

「知ってるよ」

 威咲は肩の力が抜けた。

「だけど、使えなくても覚えて。じゃなきゃ俺らのやることがわからないでしょ?」

「そっか…」


 ということでその日からは授業になった。

「我々は神官が5人と巫女の計6人だ。皆一応同じ術と呪いを使うことができるがそれぞれに得意なものと苦手なものがあって、そのために普段使う術はそれぞれ違う。まあ、持ち技みたいな感じかな。皆できないわけじゃないんだけどね」

 そうなのか、と素直に感心した。

「皆がよく使うのはテレパシーと遠見(とおみ)。遠見っていうのは目の前でない、離れた所の様子を脳裏に映して見ることができる力。この2つは生まれつき使える。後は呪文を覚えたり繰り返して練習したりして習得する。と言ってもその力は元々あるし呪文も生まれつき記憶にあります。それか成長とともに段々思いだします」

「はい」

 垂華の得意分野は呪術的なもの全般で、多摩(たま)はできるのだろうが普段はそういうことはやらないということで、専ら剣術、ただし垂華は剣術などはやらないそうだ。

 そうなのか、と威咲は思った。だが皆全部できるとは知らなかった。

 そういえば、と威咲は思い出した。今日の分が終わったら聞いてみよう。




「…じゃあ今日はここまでっていうことで」

「垂華君お疲れ様。あの、ね、ひとつ思ったんだけどね、聞いてもいい?」

「何?」

「前に垂華君言ってたよね、私に封じが施されているって」

 巫女が出て来ないように施されていた封じ。

「そのせいで私はいいこなんだって言ってたやつ」

「…それが?」

 垂華の声が(わず)かにかすれたのに威咲は気づかない。

「あれって、一体誰がかけたのかなと思って」

 疑いのない眼差しを垂華に向ける。

「ああ、そうだね…」

「私は赤ちゃんの頃にお父さんに拾われて、ずっとあの村で過ごしてきたから、拾われる前かな。どう思う?」

 ため息をついて垂華は力無く言った。

「…封じをしたのはおそらく神官の一人だよ。そしてそれは…」

 そこで一旦(いったん)言葉を区切り、垂華は威咲を見た。

 その目に曇りが無いのを見て、重いものを吐き出すように言った。

「それは、君のお父さんだ」

「え…?」

 お父さんが神官だった?そして私に封じを施した?

「垂華君それは本当に?」

「そうだよ。いつか言おうと思ってた。ちょうどいいから今言うよ。君のお父さんはずっと君の存在を仲間から隠してた。封じを施し巫女の気を無くし、自らの気も隠して所在不明であり続けた。だから、探し出すのに長い年月を要した」

 そこで威咲の中に疑問が()いた。

「待って。隠されてるならどうやって見つけたの?」

「隠していても僅かに気が発生する。それを見つけたんだよ」

 初めて出会ったのは谷川沿いの街道で。再会した時は攻撃してきた。それらの前からこちらを見ていたということだ。

 威咲の中で何かが急速に組合わさった。かすれる声が口をついて出てくる。

「垂華君…もしかして…」

 そこに多摩が現れた。

「ねえ、今日の夕飯何にする?」

「もしかして、お父さんを殺したのは…」

 多摩がハッとして立ち(すく)む。

 威咲は壁を背にへなへなとへたりこんだ。垂華が手を伸ばす。

「やっ…」

 威咲は反射的にその手をはじくと怯えた目を向けた。

「威咲ちゃん」

「来ないで」

「違うのあれは…っ」

 威咲の心臓が早鐘を打つ。

 威咲はハッとして息を呑んだ。

 前に巫女が出てきた時もこうだった。落ちつかないと。

 懸命に呼吸を沈めて心臓が落ちつくのを待つ。そして、キッと二人を見据えた。多摩が青ざめている。

「あのね、あの時…」

 多摩が苦しげに言葉を紡ぐ。

「確かにあたし達が襲撃したわ。だけどあたしがつけたのはかすり傷程度だけだった」

「…じゃあ、どうして」

「それはね、央円(おうえん)が自分で自分に破滅の術をかけたからなのよ」

 威咲の目が見開かれる。

 央円は父の名前、母は委波(いは)。育ての両親だが母の委の読みを当てて威咲の名前を付けたと父から聞いた。委波は威咲が小さいうちに死んでいるので記憶には無い。

「そんな…なぜお父さんは…」

 手が震えた。

「後は俺が話すよ」

 ふと見ると多摩の握った手の指先が白くなっている。

「垂華君…教えて。何があったのか」





珍しく今日は昼間に投稿…夜にロッキー見るため。あれは面白いので見たことなかったら見てみて下さい。多分損はないです!

話の方は、今日は設定っぽかったですね。このあと割と大事なとこが続くので、続きもどうぞ。軽く言うと、一夜と威咲がどうにかなります。お楽しみに。

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