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CALL  作者: スピカ
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(21)絵描きの少年

一夜(いちや)君良かったぁ~」

 多摩(たま)が抱きつくが今夜はそのままだ。

垂華(すいか)に礼言わないとな。あいつの声がナビゲーションしてくれたんだ」


 部屋に行くと垂華は机で本を読んでいた。

「ああ、戻ったのか。お帰り」

 振り向いて微笑んだ。

「お前何かの術使ったのか?おかげで助かった」

 垂華は本を閉じた。

「我々は普段物事は遠隔操作で行いテレパシーで会話をする。その力の源が巫女なんだよ。だけど彼女には逆の存在も入ってるから我々はそれを見極めなければならない。だからこんな風にかくまったりして一緒にいる。我々の目的は本来巫女一人にある。一夜はあくまでついでだよ。だけど一夜がいないと威咲(いさき)ちゃんが泣き出すから…」

 垂華は淡々と話したが最後に少し目を細めたのでなんとなく一夜は垂華が威咲に何らかの感情を抱いていることを悟った。

「倒れた看守達はどうなったんだ?」

「さあ、生きてるかもしれないし死んだかもしれない」

「…」

「今日暴動が起こると察知できて良かったよ。一夜は運がいい。じゃなかったら…ね。助けらんないし」

 それでも垂華の助けがなかったら駄目だった。

「ほんとサンキューな…」

 そこへ多摩が来た。

「ねえスープあっためたから食べて?」




 次の日、(れん)と一夜が初対面した。(蓮は昨夜熟睡していて起きなかった)

 蓮は威咲が今まで見せたことないような笑顔でいるのに気付いていた。一夜を見て、待ってた奴ってこいつかと思った。

 一夜がその視線に気付き、蓮を見返して舐めるように全身を見た。

 それに気付いた威咲が割って入った。

「蓮君紹介するね、これが一夜。よろしくね!」

「これかよ」

「一夜、蓮君。絵がうまいんだよ」

「よろしく」

 一夜はぶっきらぼうに言った。

「お前ここに泊まったのか?どこに住んでるんだ?」

 蓮が唇を噛む。

「あの…家出なんだって。お母さんと喧嘩して」

 一夜は目を細めた。猫のような表情だ。

「ふーん…早めに帰れよ」

「…分かってる」


「蓮君」

 ちょっと、と威咲が手招きする。呼ぶと威咲は一夜に背を向けひそひそ声で言う。

「一夜は手がはやいから気をつけてね」

「?」

 蓮は少し面食らった。手が早いから気をつけろ?

「どういう…」

「それと」

 威咲の表情がほころんだ。

「すごく、優しいから」

 その顔を見て蓮は負けたとはっきり思った。

 手がはやいの意味はすぐ分かった。一夜と威咲が話しているのを見たら、威咲が軽く小突かれていた。だがそれで優しいのかなと蓮は思った。




 一夜と蓮は庭で布を丸めて作ったボールでキャッチボールをしている。

「お前どんな絵かくの」

「風景とか人とか」

「見せろよ」

「いいけど」

 二人は中へ入った。


 しばらくして二人はまた出ていった。

 二人が来たのは近くの池。小さな桟橋があって、ボートが岸に上げてあった。

 桟橋に二人並んで座る。

「お前なんで母さんと喧嘩したぐらいで?」

「一度じゃなくて、ずっと絵なんかやめろって言われててそれがすごい嫌で、辛くて喧嘩の後荷物持って家出てた」

「でもよ、いつまでも続くもんじゃねーだろ。アパート借りるとか働くとかしなきゃなんねえじゃん、本気で家出て暮らすなら」

「分かってる…」

 下を向いてしまった蓮を見て、一夜はニヤリと笑った。

「すぐ帰るつもりだったな。一時的な家出か」

「その時はこうするしかなかったんだよ!」

「ふうん…でも、ま、俺も人のこと偉そうに注意出来ねぇんだけどな」

「一夜っていくつなんだ?」

 不審そうに蓮が聞いた。

「23」

「まじっ!?童顔~‼同じくらいだと思った~」

 蓮が両手を合わせる。

「よく言われる」

「一夜も昔家出とかしたのか?」

 タメ口はそのままだった。

「してたよ。12、3から友達んち泊まり歩いたりして。俺もその当時はしょうがなかったけど親不孝だったな。もう死んだけどな」

「そっか…」

「だから、生きてるうちに解決しなきゃならんと思うわけよ」

「ジジイかよ」

「家出のくせに」

「チビ!」

「!こいつ禁句を~!」

 一夜は蓮をくすぐった。

「あっ、一夜、やめっ!」

 と、蓮は身をよじりざま池側に倒れ、反射的に一夜の服を(つか)み、二人は池に落下した。

 バシャバシャ

「さみー!」

「お前がくすぐったせいだからな!」

「うるさいわ!落ちる方が悪い」

 急いで桟橋に上がって服を絞れるだけ絞る。

「わー最悪じゃん」

「でも、よ、俺の母さん俺が家出てるうちに死んじまったけど、死んでからじゃ遅いってほんと思うからな…?」

「一夜、まさか俺にそれを言いたくて?」


 二人がずぶ濡れで帰ったので威咲と多摩は驚いた。

「すぐお風呂に入って」




 その後蓮はおもむろに言った。

「俺そろそろ家帰るよ。今日一夜に諭されちまった」

 一夜はあさってを向いている。威咲は胸が暖かくなった。

「そっか、良かったね。仲直り頑張って」




 蓮は次の日の午後、荷物を持って出ていった。

「良かったらまた遊びに来てね」





蓮君、うまくいくといいですね。一夜もなんだかんだいっていつも優しいよね。

では、次回も楽しみにしててくださいね(フフっ)。

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