表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CALL  作者: スピカ
2/190

(2)邂逅2

 一夜がバス代をけちったことで出会った一夜と威咲。一夜は威咲の家に滞在することになったがそろそろ去ろうと言い出した朝、威咲の父親が留守中に何者かに殺されていた…

「大丈夫か?」

「一夜…」

 ずっと泣きはらした顔で、目が真っ赤だった。

「おやじさんのこと、なんていうか…」

 遺体は綺麗にしてベッドに寝かせてある。

「お前今この家に一人になるのは危ないよな…」

「…」

 威咲は無言で膝に顔をうずめた。嗚咽をこらえてしゃくりあげる。


 今日の村の様子は明らかに変だった。まるで何かを忌むように避けられた。何か隠されているような。正直、威咲がこの村で一人でやっていくのは難しい気がした。

 言いにくそうに一夜は重い口を開いた。


「威咲、俺今朝も言ったけど…お前はこれからどうするんだ?」

「…分かんない…」

 威咲は混乱したように両手で顔を覆った。混乱したせいで咳き込んで、それでもしゃくりあげるのを必死にこらえている。

「!」

 一夜は威咲を抱き寄せて背中をさすってやった。

「泣きたいだけ泣けよ」

「でも」

「誰も見てないから」

「…うん…」


 威咲は一夜の胸にすがりついて泣きじゃくった。

 一夜はしばらく背中をさすっていたが、やがてこう言った。

「威咲、俺についてくるか?」

「え?…」

 威咲はきょとんとして一夜を見上げた。一夜は返事を待った。

 嘘や冗談ではない。真面目に考えて言ったのだ。この家に一人では置けない。村の人にも預けられない。だが放って行く訳にもいかない。


「威咲?」

「一夜…私…」

 威咲の瞳が大きく揺れた。

「ついてく…本当についてっていいの…?」

「ああ」

 色んな感情が混じり合った顔をした。

「私…一夜についてく…」

 少し安心したのだろうか。血の気がなかった顔に少し赤みが戻った。

「…よし。じゃあ明日の朝までに荷物まとめろよ。今夜は俺もこの部屋にいてやるから」

「うん」

 威咲は頷いてどうにか涙を拭いた。

 


 次の朝、まだ日が昇る前に庭に穴を掘り父親の遺体を埋めた。

 それから朝食をとり荷物を持って、家を出た。金柑をたくさんカバンに入れて。


 二人が村を下りて、見えなくなった時に家から火柱が上がった。






 いくつかの村を通り過ぎた頃には日は天頂まで上っていた。二人は川にさしかかった。

 古い橋の残骸があるが随分前のものだろう。浅いが割と川幅は広く、砂利の河原に大きな岩が大小様々、流れの中にも転がっていた。一夜はそれらを飛び石に見立て、ヒョイヒョイとあっという間に川を渡っていく。


「早く来いよ」

「う、うん」

 威咲は意を決してスカートの裾を持つと一夜の真似をして渡り始めた。が、案の定。

「きゃあっ」

 バシャッ。苔を踏んでしまい、見事にひっくり返ってしまった。

「…。ほんと、ドンクセーな」

 仕方なく一夜は引き返すと威咲の荷物を持ってやった。


 幸い荷物は無事だった。対岸につくと一夜は大きな岩を背に座り言った。

「見ないでやるから早く着替えろよ」

 快晴の下、小鳥のさえずりと川の水音が心地よい。一夜は目を閉じた。



「な~ん~で~起こさなかったんだよ!?」

「だってあんまり気持ち良さそうに寝てたから」

 もう日は暮れるところで一夜はさっきからずっとこの調子だった。

 一夜はつい眠ってしまい、一刻半近くも寝ていたのだ。

 季節は初夏の始め。岩の上に干した濡れた服も乾いた。今日くる予定だった街道までは日暮れ前に間に合ったからいいものの、もしもっと街が遠かったらどうするんだとずっと繰返しブチブチ言っていたのだ。

「でも間に合って良かったね」

「一歩間違えてたら野宿だったがな!」

 谷川沿いの街道に二人はいた。これから適当な宿を探すところだ。さっきから威咲がそわそわ周りを気にしている。


「ねえ、私どこか変なのかな?」

「何が」

「何だかさっきからすれ違う人たちが皆私を見ていくような…」

「あー…そりゃお前がかわ」

 言いかけて一夜はハッとして小さく舌打ちをした。

「川?」

「川で転ぶようなアホだからじゃねえの」

「なっ、なによ!仕方ないじゃない」

「ほら行くぞ」


 二人はちょうど良さそうな宿を見つけて入った。

「二名様ね。生憎だけど今一部屋しか空いてないのよ。同室でもいいかしら?」

「いいですよ構いません」

「兄弟ならいいわよねぇお姉さん?」

「はい?あっ、ええと」

「違います、単なる連れです俺らは」


 そんな訳で滞りなく(?)記帳を済ませ部屋に入ったが、威咲はずっとクスクス笑っている。一夜は半目で言った。

「何がそんなにおかしい」

「だって弟だって」

「どうせ童顔ですよ」


 部屋にベッドはひとつだけで、宿の人がマットと毛布を差し入れてくれた。

「俺が床で寝るからお前ベッド使え」

「ありがとう」

 一つある小さな円テーブルと椅子をベッド脇に移動させると一夜はカバンからカードを取りだした。

「威咲、やろーぜ」

元々威咲が知っていた他にも一夜はゲームを教えていた。威咲はすぐに覚えて、もう大体互角にゲームできた。


大体、寝る前に書いてます。昼の内には考えてます。今のところ大丈夫ですがその内行き詰まるかもしれません…もしそうなっても気長にお待ち下さいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ