●(168)Christmas is coming
最終回です、どうぞよしなに♥
その後、一旦宿の部屋に扉で戻り、血の付いた服を着替え、シャワーを浴びて服は風呂場で下洗いしてから宿のランドリーで洗った。(宿は長期宿泊も受入れているのでランドリーがある)
威咲はまだ眠ったままだが、アイルと多摩が血を拭いて着替えさせた。(男二人はもう一室の方で)
そうして休憩をとってからアイルは朝になる前にまた扉でバークスの自宅に帰った。
次の晩、アイルが部屋に大きなスコップを持って現れ、神官3人は昨日そのまま置いてきた垂華を、ちゃんと選んだ場所に埋めにいった。(その場に結界だけ張って置いてきたのだ)
穴に横たえた垂華の上に、三つ編みで央円の白いリボンが結ばれた威咲の髪の毛を乗せて多摩が話しかける。
「これで寂しくないわよね?安らかに…」
そして夜明け前、少し休んだアイルは言った。
「私が垂華の分をキャンセルして宿を出て、そのまま帰るよ」
幻視術でフロントの人には垂華に見えるわけだ。
アイルは3日後にも夜中に来て、威咲に治癒力を使った。(勿論多摩とロイも一緒に)
そしてアイルはまた、今回は威咲に成りすましてチェックアウトすると部屋に戻ってきて。
「さて。じゃあ威咲を連れて行くからな」
「頼むわよ?」
後はアイルの家にかくまって、自然な回復に任せるのだ。
威咲はもう目覚めていた。
「じゃあ一夜、またね」
以前のように無邪気な笑顔に戻った。アイルの家に行くことができるのを楽しみにしていたのだ。
「早く良くなれよ?」
二人が消えて、ロイが言う。
「じゃあ、俺たちも今日帰るか」
その前に夜のうちに垂華の墓に行き、手を合わせた。
あの山の草原の片隅に垂華は眠る。
墓標は無い、土を掘った跡だけが目印だ。
「すぐ草に覆われて分からなくなるわね」
「それでいい」
列車で1日かけてバークスに向かいながらの時間は、穏やかで、小春日和に相応しく平和だった。
ロイもリラックスした顔で話していたので余計にそう感じたかもしれない。いつもロイはピンと張り詰めた空気感だったから…
途中、チタで乗り換えで1時間あいた時。
「そうだ、多摩、蓮…だったか?に手紙書いたらどうだ?」
「えっ!?い、いや、いいわよ別に」
「諦められてるかも知れないぜ?
せっかくやりたい事とやらが終わって戻ったらもう後の祭りだったとか、無いとも言えない」
「う!?そんな事あるかしら?」
不安そうになる多摩。
ロイがニヤリとした顔を初めて見た。
で、多摩は以前買ったレターセットの残りで簡潔な手紙を書いて駅のポストに投函したようだ。(すぐ書き終わっていたから)
夜、バークスでロイと別れ(ロイはアイルの家に住んでる)、あの郊外の邸に帰った。
「二人だけだと余計に広いわねー」
それぞれ寝室を掃除して休んだ。
次の日は家中を掃除して。
「さあて、これからこの缶詰めと粉と乾麺を食べ尽くすわよ~」
そんな感じで一月半が経ち…
今日は威咲と待ち合わせだ。
「ロイが一緒よ」
アイルは来れない。もう会わないのかな…
「あっ、いたっ!おーい!」
雑貨屋の前の街灯の下、商店街の入口。
威咲も気付いて笑顔で手を振ってきた。
女子二人は互いに駆け寄ってはしゃいでいる。
「もういいのか?」
「一夜、うんもうすっかり」
「そっか、ロイ、今までサンキュな」
アイル宅で毎日二人が治癒力を与えてくれていたのだ。
「ふん、今日はアイルの分まで別れを言いにきてやったんだ」
「…、もう会わない、か?」
「ああ」
いつも通りのクールで簡潔な物言い。分かっていても一抹の寂しさがよぎる。
「最後に」
ロイが手を差し出してきたので一夜は握手した。
すると、ロイがハグしてきた。こんな事もする奴なのか。
一夜もハグ仕返して背中を軽く叩いてやった。
ロイは威咲ともハグすると一夜を見てクールに言った。
「威咲はアイルとも風呂に入ってたぜ?」
「だから何だよ」
一夜は半目になって。
「フフっ綺麗だったな。羨ましいでしょ」
いやロイが言ったのはそっちじゃないから。そう思っても言えずにちょっとふて腐れる一夜を不思議そうに見た威咲。
「はっ…、お前ら」
少し口元を隠して笑うと。
「じゃあ元気でな」
と、あの綺麗な笑顔と美声で言って去っていった。
「もう本当に終わりって感じだね」
「そうね…」
ロイの後ろ姿を見送る。
「じゃあ行こっ?」
威咲が多摩の腕をとって歩き出した。
「ちょっ、どこ行くの?」
「どこって、VERYじゃないの?ロイが」
「はあ!?あいつ~」
一夜はあのニヤッとした顔を思い出した。
「まあ、どうせ暇だし俺行ってもいいけど」
「ま、待ってよまだ心の準備が出来てない!」
(※旅?から帰ったら結婚前提で付き合う約束がある)
「じゃあまた今度にする?」
「う~、いいわよ今行く。ちゃんとついてきてね!?」
「分かったよ~」
かくしてVERY。多摩の背中を押して入ると。
「こんにちはー…」
「あら、確か蓮のお友達ね?ちょっと待って。蓮ー!」
「…なんだよー?」
「友達だよ!」
「えー?」
奥の部屋から出てきて3人を見ると。
「あっ…なんだ、おかえりー」
「えっそれだけ?」
多摩は気が抜けた。
「なんだ、あたしてっきり…」
ゴニョついて一人で赤くなった。
「こっち来て!」
蓮が多摩を引っ張って部屋に引っ込んだ。
ドアを入ってすぐ多摩は抱きしめられた。
「母ちゃんの前だったから」
「あっあたしは!」
「約束、覚えてるよな?」
真剣な顔で多摩を覗き込んだ。
「…、はい」
多摩は素直に頷いてしまっていた。
「やりっ!一夜と威咲も来いよ!」
「もう来てる」
「ごめん聞いちゃった…」
「嘘っ!?」
多摩は両手で顔を隠してしゃがみ込んでしまった。
「やだもお恥ずかしいよー!」
「お前ら証人だからな!?」
蓮が一夜と威咲を指さす。
「蓮お前マジ必死だな」
帰り道、多摩はずっと言い訳している。
「しょうがないのよ、あれはね、蓮が勝手に抱きついてきて…それに、あたし的にも、まあ、あれだけ押してくるなら、まあまあの落としどころかなーとかなんとか?」
「クスクス、蓮君けっこう顔いいもんね」
「宿屋の跡継ぎって決まってるしな」
「もう、仕方なくなんだってば!」
そう言いながらも多摩は頬を染めていた。
「ハイハイ」
「そういやもうすぐクリスマスだな」
一夜が空にハーッと息を吐いた。
白い息は陽射しに溶けていった。
「クリスマスどうしよっか?」
威咲が笑顔で言った。
あと少しだけ、まだ3人でいようねって決めてる。
蓮君も入れて、バークスでのクリスマスは最後かな、と威咲は思い、なら楽しまなきゃね、と思った。
一夜はそんな女子二人を見て、ふっと表情が和んだ。
俺は、また威咲の笑顔が見れるようになって、素直に嬉しく思うよ。
そして、この先も、ずっと――――――――
街はあちこちに飾り付けが見えて華やいでいる。
蓮&多摩のイラストまで描けなかったー力尽きた。一夜の胸のマークはBUMP OF CHICKENのマークだよ★
でもよくぞ今まで頑張ったスピカ!感涙の心境だ!
けど…「終わった…」と無言で無になるスピカ。
あとがきとオマケページを付けるので、また4日後、見てくり!★




