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CALL  作者: スピカ
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(165)決戦

威咲は身に棲む魔物に侵食されながらどうにか最後の封印まできた。だが巫女(シンハ)もずっと魔物を相殺し続けたせいで限界になりつつあった。

一夜は威咲に言う。“待ってる”

だから必ず生きて帰ってくれ――――――

 魔物は結局最後まで何もしてこなかった。

 けどそれはジリジリと巫女を弱らせて、巫女の力が落ちるのを待っているからかも知れない。

 そして最後の最後での逆転を狙って。

 現にシンハは魔物に侵食され続けて、それに抵抗するためにもうかなり消耗してる。

 私を()くまで、どうか何事もありませんように――――――――




 神官たちがサポートしてくる力の奔流(ほんりゅう)

「!…っ」

 魔物の激しい憎悪と反発に苦しみながらの封印。

 身体の中で燃えたぎるように荒れ狂うのを感じつつ、神官たちの助けを受けてなんとか完遂(かんすい)した。


「終わったわね…」

 どうにか封印は終わった…でもまだ気を抜いちゃ駄目だ。

 威咲(いさき)はぐったりして(ひざ)をつき、多摩(たま)も膝に手をついた。

 垂華(すいか)とロイも呼吸を整えている。

「あとは私を()いて本体を消滅させるだけだね」

「そうね」

 威咲と笑みを軽く()わして多摩が歩み寄った瞬間。


おのれ……


 ゾクリと威咲の背中に冷たいものが走った。

「!」

 爆発的に増大する魔物の力を感じた。

「――――――!!」

「威咲ちゃん!?」

 神官たちは緊張が走り構えた。威咲は。


―――――させない!


 シンハの声?ああ……


 威咲の意識は視界が真っ白になり、フッと途切(とぎ)れる。スローモーションのように倒れて…

「威咲ちゃん!」

 多摩が抱えて(ほお)を叩いても反応しない。

「…っ…これは、今すぐやるしかないわね。すぐ山の草原に行くわよ!」

 空間移動の扉を多摩が開いた。

「俺は一夜(いちや)を連れて行くよ」

 垂華が自分も扉を開こうとするとロイが止めた。

「いい、俺が連れてく。あとアイルも呼んで行くよ」

「助かる」

「頼んだわよ」

 二人が消えて、ロイはアイルに呼びかける。


――――――封印は全てやったが威咲がまずい、一刻を争う。すぐ決戦の地に。

――――――分かった。


 簡潔な会話。そしてすぐロイは一夜を迎えに消えた。




 山の草原。威咲は目を閉じて意識が無い。

 身体を流れる気を確かめると、巫女の気と魔物の気が激しくぶつかって争っていた。まるで見えない火花が散るような。

「威咲ちゃん…頑張って」

 多摩が威咲を抱えて抱きしめた。

 ロイが現れる。

 一夜は奥歯をかんだ。

 何も出来ないなんて――――――!

 威咲の肩を揺する。

「威咲!威咲、目を開けろ!絶対あきらめんなよ!」


………一夜の声がする…………




 5分程でアイルも来た。その手にはいつか自分が切った威咲の長い髪の毛があった。

 前の白いリボンも結んであり、三つ編みにして扱い(やす)くなっている。

 アイルは威咲の首にそれを巻くと言った。

「これには巫女の力のみ残っている、今の助けになるだろう。それにこのリボンと(ひも)央円(おうえん)(おく)ったものだ、やつの力もこもっているはずだ…威咲を守るための」

 アイルは一夜を見た。

「威咲の運命に()けろ」

「…威咲を頼む」

 アイルは目で(うなず)く。

「さて、じゃあやろう」

 そう言ったアイルに多摩が問う。

「アイル、長距離移動で休まないで平気?」

「なんともないさ、今までずっと酷使(こくし)してきたお前らよりは元気だよ」

「そ、じゃあやるわよ?」

「了解!」

「一夜は離れてろ!」


 一夜は下がって姿勢を低くした。

 神官たちは呼吸を合わせると一気に力を解放して巫女に同調し、威咲の中の魔物を()きにかかった。

「これ…でっ…魔物は反撃のためにこの身体から離れざるを得なくなるはず…っ!」

 威咲の身体を気にしながら、身体を破壊しない最大限の力を解放して魔物を追い詰めていく。

「早く離れろ――――――!」


 次の瞬間、威咲の腹部が内部から破裂して黒い濃い影が飛び出して広がった。

「威咲!!」

 囲んでいた神官たちが血まみれになる。

 駆け寄り威咲を抱く一夜。

「出たわね本体!」

 多摩がすかさず青白い光を(てのひら)に現すと影はそれを相殺した。多摩は(ひる)まずに連続で青白い光で切りつけた。

 音にならない魔物の声。威咲の身体から分離する。

 ロイが素早(すばや)く一夜と威咲を(おお)うだけの結界を張る。

 その瞬間神官達に影が襲いかかり、本体との闘いになった。



「威咲!威咲…っ!」

 血ぬれた体は、ぐったりとしていつもより重い。

 垂華が素早く呪文を唱え、何かの術をこっちに飛ばした。

「?あ…っ」

 威咲の(まぶた)が震え、目を開いた。

「威咲――――――!」

「…たし…っ…」

 血で咳き込んだ。

「…たし…そっか、痛みを術で消して…」

 ああ、あの夢と同じだね、私…やっぱり死んじゃうのかな?

「アイル!(すき)を見て治癒に向かえ!」

「ああ!…っ」

 だが本体はそうさせまいとするかのように攻撃してきて、神官達を威咲に近付けさせない。

「くっ、巫女を殺すつもりか…!」

 それを見て威咲が言う。

「巫女の力じゃないとだめなのに…」

「これじゃ無理だろ?」

「…でも…」

 力の入らない声。まばたきをしたようにしてシンハに()わった。

「すまない一夜、だが少し話さ…てくれ。私は、本当は分かっ…ぃたんだ…死ぬこ…を…(あきら)めさせたく…から黙っ…いた」

 ああ、あの屈託(くったく)ない笑顔が、優しい瞳が、俺の聖域を汚したあの夜も、あの綺麗な稲光も…全てが今、終わった?俺を残して


「ラナの意識の欠片(かけら)が…私の先見(さきみ)を見て、威咲に訴えていたんだ…だが先見は絶対じゃな…未来は変わ…から…威咲の運に()けて…黙っててすまなか…一夜」

 頑張って歩いたこいつの命が終わる?

 一夜の唇から震える声がもれた。

「…俺の身体を使え。アイルの術を()けばシンハの力が解放されるんだよな?」

 多摩が二人に近付いた影を()りざま言う。

「駄目よ!そんな事したら一夜君の身体がもたないわ!壊れちゃうわよ!」

「いいんだ、やってくれよ」

「駄目よ!」

「いいだろうその案に賛成だ」

「アイル!?」

「どのみち本体は神官だけでは取り逃がすだろう、巫女を守るだけで精一杯(せいいっぱい)だからな。だから…一夜の身体は私が絶対に守ってみせる!」

 一瞬で気を高めたアイルの体が淡い光を(まと)った。

 威咲(シンハ)の瞼が閉じ一夜の頭に直接シンハの声が聴こえた。


――――――分かった、ならやるよ、一夜、(しば)し借りる――――――





うぉ!威咲は死ぬんかーいっ??

ラストがハピエンかアンハピかは内緒にしてきたけど、こうゆう事ですよ…

「俺の身体を使え」その結末は!?


次回も見てね★

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