(15)意外な正体は
父親を何物かに殺された威咲を一夜は連れて村を出た。実は一夜が放浪生活するのにも理由があるのだが、それから何ヵ所か街を渡り、互いに近づきあいつつ今度の街に腰を落ち着けた。すると威咲が妙な夢を見始める。声の夢だ。
冬の初め、初めての雪にはしゃいだ威咲だが、ある夜侵入者に襲撃された。それは未遂に済んだが…
次の襲撃は昼間だった。
外から威咲の悲鳴が聞こえたので急いで一夜は飛び出した。
そこには黒ずくめの二人がいた。片方は昨夜の奴だ。刀をひっさげている。
威咲は左腕から血を流してうずくまっている。
もう片方は背の高い男。
一瞬一夜とその男は見つめ合った。一夜の目が見開かれる。男が覆面をゆっくり外した。
片方が話しかける。
「そいつはどうする。処理する?」
「いや、待て」
「垂華…なんでお前が…?」
しばしにらみ合った。
「…安心しろ、殺しはしない」
もう片方が刀をしまい覆面を外した。布から頭の両側の高い位置で結った長い三つ編みがこぼれ落ちた。意外にも若い女だった。
そこで垂華は、ふ、と諦観を思わせる笑い方をし、一夜の方に歩み寄った。
一夜は身構えた。
「安心しろ」
垂華は空中に素早く何かの模様を描くと一夜に手の平を向けた。その途端、何かの衝撃が身体を打ち、力が抜けてその場にへたり込んだ。
「!?」
「…一夜、俺らは威咲ちゃんを試しに来たんだ。用があるのは威咲ちゃんだけさ」
「どういうことだよ」
「話せば長い」
垂華はあの街に住んでいるはずなのに。
「説明してあげたら?どうせ知り合いにならないといけないし、後で面倒になったらその時どうにかすればいい」
垂華は片方を見たがやがて瞑目して頷いた。
「一夜、中に入れてくれ」
そう言いながら上がり込んだ。
「ああそうか。一夜、もう動いていいよ」
そう言われた途端元通り動けるようになった。
家に入る前、女の方が短く何か唱えていた。
居間に四人、威咲は腕を手当てされた。
「どうしてお前がこんなことを?」
「簡単さ。あの街の人間でもない。術で人々の記憶に俺がいたことにして潜り込んだ。去る時はまた記憶から消せばいいのさ」
「―――――――」
一夜は言葉をなくした。威咲も同様だった。なぜ自分を襲ったのか。試したとは。
その意を汲んだように垂華は話し出した。
「俺らは、何回も生まれ変わっては役目を果たしてきた。我々は光の存在を守って、禍気を撒き散らす魔物を退治するのが仕事の神官だった。
光の存在も魔物も転生する。魔物は退治しても時がたてばまた再生してしまうんだ。そしてまたなぜか我々も転生を繰り返す。我々はそうして遥か昔からいたちごっこを繰り返してきたんだよ。
仕えた国は正史には無いしもう昔に消えているけれど転生は続いている。まるで呪われた一族なのさ。
…それで、威咲ちゃんはその光の存在の生まれ変わりなはずなんだよ。もし覚醒しているならあんな攻撃造作もなくはね返すはずなんだ。つまり、まだ光の存在は眠っている…わかったかな?」
一夜は威咲の夢のことを思い出した。だがまだ言うのはよそう。
「それで…」
垂華は続けた。
「威咲ちゃんを俺たちに受け渡してくれないか?」
「…そんな訳わからないのに威咲を渡すのは無理だ」
すると今まで黙っていた女が腕組みをして言った。
「あんた巫女のなんなのよ?」
「巫女?」
「威咲ちゃんのことさ。代々光の存在を宿した女性を巫女と呼んで仕えてきたんだよ」
「俺は…」
「この二人はただの連れだそうだよ。前に聞いた」
「そう、妙に保護者ぶるのね」
垂華は手で軽く女を制した。
「もし今後彼女が目覚めた時、我々がいないと危険なのさ。我々が彼女を支えその力をコントロールしないといけない。君の手では何もどうすることもできないんだよ?」
一夜はいきなり出てきて非現実的なことばかり言われて分かりはしたが少し混乱した。
「もう目覚めるまであまり猶予は無いはずだ。威咲ちゃんを渡してくれ」
威咲は不安げに一夜を見た。垂華はそれに気づいて言った。
「もしなんなら二人で来てもらってもいいけど」
用心深く一夜は答える。
「だけど仕事が…いきなり出てきてそんなこと言われてもすぐにはいなんて言えない」
「これでも?」
垂華が指先を少しひらめかすと小さな白い炎のようなものが揺らめいた。それは手を握ると消えた。
「…っ、…」
「悪いけどこれは議論する気は無い。絶対なんだ。じゃないと危ないからね」
そう言うと威咲に向けてウインクした。それでその場の緊張は解けた。
「垂華君、私…」
威咲はうつむいてしまった。垂華は一夜に向き直った。
「やっぱり一夜もついてきてくれ」
今回の前書きは上手いことあらすじまとめられてる。でも、うーん、一番はやっぱり読んで貰うことなのでどうぞよろしく。我ながら面白い…はず、ですので!




