(159)play the piano , softly
サブタイ意味/優しくピアノを弾いて
今後のことを話し合って、アイルは仕事上日曜しか出てこれないのでとりあえずロイを呼び手伝ってもらい急いで封印以外のことを終わらせていくことにした。
ロイがしていた封印済みの地域の見回りはアイルが担うことになる。(アイルは官吏だがロイはアイルの私的なパートナーだから仕事に就いている訳ではない)
「威咲ちゃんはこれからは本当に封印だけでいいわ。他はあたし達がやるから」
そう言った多摩は真剣だがひとつ安心したような言い方だった。これで威咲に何かあった時はすぐにストップ出来るからだろう。
「うん、分かった。ごめんね」
「いいえ、助け合うための仲間なんだからいいのよ」
多摩はウィンクした。
ロイが来て、垂華、多摩と3人で威咲に気を送り、1ヵ所封印をした。
それでやはり続きはアイルが来てからということになり、日曜まで4日間待機となった。
「威咲ちゃん元気無いわ。一夜君何かした?」
多摩が一夜を追ってきて言った。
「してねーよなんで俺なんだよ」
「だって何かあるなら知ってるかと思ってー」
あ、威咲ちゃん、と多摩が顔を上げた所で威咲が膝を折った。
「威咲!」
「大丈夫…」
そう言うが建物の中に入り安静にさせる。
「…シンハが魔物と闘ってる…」
座らせてあおいでやる。
「…魔物が、力で勝とうとして、それでせめぎ合ってるの…
それでシンハも疲れてるみたい」
「威咲ちゃん…」
「でも私は最後まで頑張るよ。力を貸してくれるから、やれるよ…絶対死なないから安心してね?」
「そうね、あと少し、絶対成功させましょう?」
多摩が気を与えようとすると声がかかる。
「僕がやるよ」
「ロイ、じゃあ頼むわ」
ロイが膝を立てて威咲の背中に手を添えて手をとる。
「威咲が良ければこれからは僕がやるよ。多摩はもう疲れてるだろう?」
「…そうね」
ロイは俯いた多摩に更に言った。
「お前はこれからは垂華のことだけやれ」
多摩はロイを見た。
「巫女はもう垂華に気を与えられないだろ」
「分かったわ」
「じゃあ、僕でいいかな?威咲」
「お願いします…」
威咲は微笑んだ。
気を与え終わったロイがピアノをいじっている。それ前からいじっていたようだった。
「壊れてるな…」
高いラは出ない。
不意に旋律を奏でだす。綺麗で劇的なメロディ。
長椅子で休んでいた3人は聴き入った。ロイは上手だった。
「あたし上手じゃないからな」
頬杖の多摩。
「多摩のは弾けるとは言わないだろ」
弾きながら言うロイ。
「聞こえたの?耳いいんだから」
曲が終わって多摩が駆け寄る。
「次は優しい曲がいいわ」
「いいよ」
リクエストに応えて弾き始める。
「聴いたこと無いけどなんて曲?」
「昔田舎の教会で聴いた曲だよ。確かこうだった」
「そう、いい曲ね」
ロイの演奏はしばらく続いた。
それからも時々ロイはピアノを弾いて、綺麗な音色を聴かせてくれた。
日曜日、アイルが来て威咲のメンテナンスをした。魔物の気を抑え込むのだ。
それまでの数日間もロイが一応気を与えてはいたがアイルは桁が違う。
「よし、これで封印出来るだろう」
そして立ち上がり。
「それにしてもよくこれまで我慢したものだ。バカか?」
「ちょっ…」
「…バカだよ。でも絶対やり遂げたかったから」
「フン。それは見上げた心がけだが、そのせいで己の身を滅ぼすことなど無いようにな。迷惑をかけないというのはそういうことも含むんだ」
「心配してくれてるの?」
アイルは前髪をかきあげた。
「当然の事を言っただけ」
「ありがとう。でもきっと大丈夫だと思ったんだ、みんながいるから」
「…そうか」
「…とにかく、休みの度にアイルに直して貰って、このやり方でラストまでいこう。みんな協力お願いね?」
「ああ」
「当然よ」
垂華とロイも頷いた。威咲はホッとして笑んだ。
さっき、バカって言う前、多分アイルは気付いた。もう私は助からないかも知れない、それを分かってるって。
でもきっと理解してくれたんだよね?
アイルならきっと分かってくれるよね…?
ロイのピアノ、性格が厳しくてちゃんとした感じだから、音もそんな感じでしかも上手なんでしょ?聴いてみたいですね~☆
さて、威咲は生き残れるのか…現状望み薄くなってるよね、でも弱ってる威咲の感じもいい…
続きも見てね☆




