(157)midnight , lightning
サブタイ意味は“真夜中、雷光”です
それは9月初旬、南東部のある村でのことだった。
山裾にある使われていない小さな古い教会を宿にすることに決めた。
“ポルケシュ村アレクサンドル・マオ教会”
古い小さなプレートは随分と錆びついておりなんとかそう読めた。
朝から曇りがちだったが、空間移動でここに来ると一層曇っていて、今にも何か降ってきそうな空模様だった。
軽く掃除して一休みだ。
「暗くなるまでゲームしていようよ」
威咲の提案に乗り、みんなで輪になって始める。
いつも通りそうして過ごし、夕食後、遠見を今日の分一通り終えた多摩が言った。
「特に浄化が必要な所も無かったし…もうちょっとしたら出ましょ」
「そうだね。――――――!」
「威咲ちゃん!?」
威咲は眩暈に襲われて、その場に膝を折った。咄嗟に隣にいた多摩が支えなかったら倒れていた。
「危なかったわね…」
「…っ」
しゃがみ込んだ威咲を多摩が支えると威咲は苦しげに自分の腕を抱いた。
「…何か隠してるな。隠さず今教えて」
静かに垂華が言った。
「…ごめんなさい、また魔物が拍動があったのに黙ってた…」
「あたしも知ってて黙ってたのよ、二人だけの秘密にして。…これじゃ退治なんて出来ないわよね」
多摩は青ざめながらも少し安堵したように言った。
確かめると巫女の気も弱かった。
「一夜君?」
「俺にも威咲の血が流れてるのに、魔物のことに気がつかなかった」
「…、一夜君は前に巫女が灼いたから一夜君の中にはもう魔物は完全にいないんだから、気付けなかったのよ。落ち度じゃないのよ?」
「…っ…」
まだ少し辛そうにしながら威咲が一夜を見た。
「…そうだよ?黙ってた私が悪いんだよ」
「あ…威咲ちゃんも悪くないわよ、やっぱりあたしが」
「いや俺も少し前に気付いてたんだ、封印の時伝わる波動がなんか弱くなってるのかもって。あの時言ってれば…」
「誰が悪いかより今後の事を考えよう」
冷静に垂華が言った。
「途中だけど封印はもう止めようか」
「!だめっ…絶対終わらせるよ、お願いそうさせて欲しいの。きっと止めるって言われると思ったから黙ってたの」
少し沈黙がよぎった後、やはり冷静な声で垂華が言った。
「…後少しなんだし、封印し終わるまでもてばいい。もちそう?」
「…」
威咲は頷いた。
一夜は言葉が出かかったが、なぜか口から出ることは無かった。
「とりあえず二人で見回ってくるわよ」
封印にかかる巫女の力を極力減らすように、土地の気をマイナスからプラスに出来るだけ変えてくるらしい。
教会に結界を張り、多摩と垂華は出ていった。
暖炉前の空いたスペースに座りステンドグラスを見上げる。
威咲は一夜に半分抱きかかえられるようにもたれている。
「ずっと前に、夢を見たよ?私そこでラナさんに会ったの。
ラナさん、止めないとあなたも死ぬって心配してた…
でも私、退治を終えるまで頑張るって決めてたから。だってやっつけてしまえば絶対死なないでしょう?」
「そうだな。…あと少しだから頑張れよ?そしたら終わりで、もう何も無いんだ」
威咲が弱く首を振った。
「だめかも知れない」
「威咲、気を強く持てよ?大丈夫だから」
「一夜…」
知らないから元気づけようとしてくれるんだね…
「もし…私が負けたら、私、本当に消えなきゃいけない…怖いよ…」
威咲の白い指が弱く一夜のシャツを掴む。一夜は威咲を抱きしめた。
「大丈夫だから。信じな」
「一夜…」
言葉ではそう言えても信じるしかないだけだ。
身を起こした威咲と見つめ合った。
一夜は僅かに目を細めた。
ああ、助からないとか無いよな?
威咲は、包み込んでくれる優しい光だ。エリアに入ると無条件で温められるような。
いつも両手を広げてくれる。受け止めてくれる。
俺はそれを知ってしまっているから、もう手離したくない。離れられなくなってしまったのは俺の方だよ。
どちらからともなく唇を合わせた。
「二人きりだな」
威咲は何も言わない。ただじっと一夜の目を見た。
「…、」
その瞳の色合いに。もう、限界だ…
一夜が衣の合わせに触れると威咲はピクッとして一瞬こわばった。
一夜が手を引こうとすると威咲がその手をとった。手は微かに震えている。
「止めないで…一夜は怖くないよ…」
小さな声。
刹那的?明日が保証されるなら…
一夜は威咲を見つめた。そして目を伏せ威咲を抱きしめた。首に口づける。
今まで守ってきたものを、今日俺がこの手で汚す――――――――
初めて絡み合った。威咲はやっぱり綺麗で、そのぎこちなさも愛しかった。
痛がった時、もっと威咲が欲しいと思った。そして感じて欲しいと…――――――――
ずっと雨音がしていた。雨は段々強くなってきたようだ。
威咲の頬はまだ少し微かに上気したままで、一夜の肩に頭を乗せている。弱く青い光の中でもとても綺麗で。
だけど。
確かに抱いたのに、まだ夢の中にいるみたいだ。
焦がれていたから…?
全身で、威咲の熱を確かに感じた。震えていた呼吸も。
それでも…なぜか現実感に欠けていて、胸のジレは消えない。
確かに今感じている威咲の重みも、まばたきしたら消えるようにすら思える。
シチュエーションのせい?抱き寄せて、額を合わせる。
そうして、時々光る音の無い稲光で白く浮き上がった威咲の脚を一夜は思い出していた。
とりあえず…良かったね。
じゃなくておいおいヤバイでしょ‼威咲ちゃーんっ無事なの!?しかしこうゆう死期が迫ってやるってゆーのはありがちだなとは思いましたが、このようになりまちた☆なんか教会内の通路を英語でアイスルとゆーらしくて。作話中にアイルの予測変換で出て。それだけ。
でわ次回もこう御期待っ(ピューッと逃げ)




