●(156)In all innocence
サブタイ意味…「全く無邪気に」
夜中、3人がそれぞれが封印に散った後、一夜はひとり暗い部屋で壁にもたれた。
「…、…―――――」
威咲が封印の術を使う時に伝わってくる力の波動、それが気のせいか?なんか少し弱くなってる気がする。気のせいならいいけど…
威咲は少し前は不安で情緒不安定気味なことがあったけど、最近は気持ちを落ち着けられてるみたいで普通にしてる。
とりあえず今は心配無いのかな。
それより多摩は何ともないのかと思う。威咲のは勿論、垂華のメンテナンスもしてるから、いいのかって聞いたらあたしはそれなりに自然を利用して気を整えてるから平気だって言ってたし…
―――――威咲ちゃんは自分で気を整えられないからあたしがやってあげるの。でも巫女の力があるから本当にちょっと整えてあげるだけなのよ。垂華は、まあお互い様でやってるわ。
いざとなればアイルとロイがいるけどなんか、少し不安はあるよな。
何も出来ない自分がもどかしい。
「一夜、夕涼みしようよ」
「あー、いいぜ」
もう8月も終わりで、あちこちで虫が鳴いている。
「コオロギって食えるらしいぜ」
「えっ、一夜、食べたことあるの?」
「まさか」
「良かった。虫は声を聴くものだよー」
「俺もそう思う」
宿の近所を散歩だ。
「わ、いい風」
風で威咲の髪がなびいた。
「一番星みっけ!」
少し先を弾むように歩く威咲の髪が動く度揺れる。
今は髪をおろしていて右側だけ細い三つ編みを少しして白いリボンを結んでいる。多摩にリクエストされてから、よく髪をおろしている。
割と無頓着っぽいからなこいつ、と一夜は思った。
だが、こんな風に先を弾むように歩いていく威咲は、出会った時…あの有栖村の一軒家で居候していた時みたいで、とても懐かしく感じる。あの時もこんな感じで畑までの道を一緒に歩いた。
威咲が空を指さした。
「さそり座発見!一夜、夏の大三角覚えた?」
一夜は目を逸らした。
「あー、教えたのに」
「白鳥座は覚えた、一応」
「そう?ならいいことにしてあげる」
また小走りで先に行き、しゃがんで虫の声を聴こうとしている。
「近づくと駄目なんだよな」
「だよね、残念」
また立って一緒に歩き出す。
「ねえ一夜、あのお空の星がホントに降ってきたらいいのにね?
そしたら私いっぱい拾って宝物にするのにな」
「バーカ、んなことあってたまるかよ。大体星ってのは太陽よりデケーんだよ」
「あーっ、もう夢が無ーいっ、カタイことばっかゆうとハゲちゃうよ?」
「なっ…」
「へへっ冗談」
ペロッと小さく舌先を覗かせてまた小走りで先を行った。
「ほら、こうやって…」
両手でスカートをつまんで振り返る。
「ね?」
一夜は呆れるフリだ。
「ハイハイ。ったく、んなガキみたいな…バーカ」
口でそう言っても一夜の表情は和らいでいた。
――――――少なくとも、今の威咲に不安は無いように見えた。
今の威咲には…見えた てことは後でそうじゃなくなるってことかな(おっ、ネタバレか?)
実際は威咲はラナの夢で不安だし、もう、予感している…(前話を見よ‼)
多摩しか知らなくて、威咲は強がってるんです…
続きもどうか見てくりっ★




