表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CALL  作者: スピカ
166/190

●(151)少しだけでいい

記憶喪失の兄、(みつる)に真実を伏せたまま去ると決めた一夜(いちや)。そしてまた封印の旅に戻る…

 朝ご飯はゆで卵とパンと野菜スープだった。


「皆さんお元気で」

「すいませんゆで卵こんな(もら)っちゃって」

「明日1日我慢するからいいさ」

「冗談よ?」


 一家に手を振り別れた。一旦(いったん)村を出て帰るフリをしてから扉で例の山小屋に飛ぶ寸法だ。

 ツェベルメ村…ここに来ることはきっともう2度と無いだろうと分かってる。(みつる)とは永遠にお別れだ…

 でも幸せなの分かってるからいいよ。

 この先どっちが先に死ぬかとか分かんないけど、少なくとも俺は生きてる間中満を思い出すから…


 先に遠見(とおみ)で周りに人がいないことを確認してから扉で直接小屋の中に飛んだ。

 (ほこり)っぽかったので最初に戸を開けて置いてある道具で掃除した。

「使う人がその都度(つど)自分で掃除するのねここ」

「だな」

 泊まることも一応出来るが主目的はただちょっと休むため、といった所か。

「2泊するわよ」

 各自の荷物の中は食料だ。ビスケットとかサラミとか。だからゆで卵は非常にありがたかった。

「じゃあ、まだ午前だから夜まで待つのもなんだし、人目が無い確認がとれ次第少しやっときますか。

その前に一応遠見で見回りを俺と多摩(たま)でやるから二人は休んで待ってて。1時間くらいかかるから外見てきてもいいよ」

 垂華(すいか)が言った。

「昼間に2ヶ所封印出来ればいいかしらね?」

「そうだな。で、夜まで休んでからもう2ヶ所やろう」

「私も見回りするよ」

威咲(いさき)ちゃんは、封印の時一番力を消耗するのはあなたなんだからいいのよ。封印のために力を残しといて?」

「そう?ごめんね」

 集中の邪魔になるのは駄目なので、一夜(いちや)と威咲は外に出ていることにした。



 小屋の外に人が座れるくらいの石があったので二人でそれに腰かけた。

指相撲(ゆびずもう)しない?」

「いいぜ」


 威咲は頑張ったが一夜に負けた。

「なんか遊ばれて負けた気がする」

 威咲は(ほお)(ふく)らませた。

「もっかいやるか?」

「ううん、いい。次はにらめっこやろう?」

 少しムキになった顔で言った。

「いいぜ、じゃあにーらめっこしーましょ、笑っちゃ駄目よ、あっぷっぷー」

「ぷー」

 威咲は真剣な顔で見てくる。一夜も真剣な顔を仕返した。

「笑えよ」

「一夜こそ」

「…」

「…」

 なかなか勝負がつかない。

 そこで一夜はそれまでの真顔(まがお)から突然、一瞬で頬を空気で一杯にし目を見開いて見せた。

「!…っ」

 威咲の顔が(ゆる)んだ。

「はい威咲の負け~」

「もう~そんな顔初めて見たよ」

「そうか?」

 また素早(すばや)くその顔をする。

「ぷっ、クスクス、やだー変」

「お前もなんか変な顔して見せろよ」

「え~、…こうかな?」

 威咲はちょうど〈ムンクの叫び〉のような顔をした。

「ムンクだな」

「なにそれ?」

「有名な絵でそういう顔をアップで描いたやつがあんだよ」

「へー」

 変な顔をしあう遊びになった。

 ひととおり笑い合って休む。

「…」

 一夜が寄りかかって威咲に頭をつけた。

 威咲も頭を寄りかけてみる。

「前にもこんなことあったね」

「ああ、フクロウが鳴いてたよな」

「雪の上に天使作った後私に雪ぶつけてきたよね」

「いいじゃん別に」

 あの(よる)一夜は私に家族の事を打ち明けてくれた。心を許してくれてるみたいで嬉しかった。

「…っ」

 一夜が鼻先を威咲の首に向けた。鎖骨(さこつ)の辺りに(かす)かな鼻息がかかる。

「くすぐったいよ」

「ああ」

 威咲に、()れてしまいたい。その気になれば出来るけど…無理矢理したくない。

 いつになったら心の傷は癒える?

 今は、心があればいい。俺を好きなら。

「お前の心臓の音、聴きてーな…」

「一夜…」

 威咲は迷ったが、一夜の頭をそっと胸に抱いた。

「これで聴こえるかな」

「………………あんまわかんねーもんだな」

「!もう~っ」

 威咲が体を離したので一夜も普通に座り直した。

「恥ずかしかったのに!」

「悪ぃ」

「一夜のバカ」

 威咲は膨れて見せた。

 その頬が(かす)かに染まっていて、本当は怒ってないのが分かる。

 一夜は威咲の頭を()でた。

挿絵(By みてみん)


前に「雪の上に天使作った時…」の話は(22)告白 の部分です是非読んで下さい。あの辺はまだ恋人じゃなくてそーゆー意味でまた面白いです★

「扉」とは「空間移動の扉」のことです。

今後もどうか、終盤戦にお付き合い下さいませね★

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ