(145)シンハからの知らせ
一夜のモノローグ(心の声)から入ります…
この間の夜あんな事があったのにやっぱり威咲はいつもと変わらないように振る舞ってる。
そんなに心配かけたくないのかよ、不安で泣くくらいなくせに…
でも隠したいっていうその気持ちも分かるけど。
俺にも不安がある。本人程じゃないだろうけど、威咲の不安は俺の不安でもあるから。俺もそれを表に出さないようにいつも通りにしてる。
俺の場合は俺が変な事言ってせっかく威咲が気丈に振る舞ってるのを壊したくないから。
威咲のは多分、そんな自分は見せたくないからだろう。あと迷惑かけると思ってるんだろ。
…俺の前ではいいのに…それは言ったら駄目で、そういうやつだって分かってるから。
でもなにもそんなこと話した訳でもないのに封印のスケジュールは出来るだけ巻きで組んでる。
あいつらだって何も言わなくたって威咲の気持ちに気付いてるんだろ。
だけどそれは別な不安を俺に与える。
なぜ巻くんだ?ただ不安がってるだけなら巻く必要は特に無いはず。なのに事実あいつらは急いでる。
なんで。急いで終わらせなきゃならない理由は?急がないと何か都合が悪くなるのか?
威咲の涙がそれを表してる気がして。急がないとまた魔物が出てきそうだから?
休みラストの夕方、いつも通りたわいない話をして一段落ついた時、急にシンハが出てきた。
「大事な話がある」
「?巫女?どうしたの?」
「主に一夜にだが…二人にも言っておこう」
「俺?」
シンハは頷いて一夜を見た。
「次に行く村に満がいるぞ」
「えっ…」
「だあれ、それ?」
多摩が首を傾げシンハが答える。
「一夜の兄だ。一夜は元々放浪しながら兄を捜していた」
言われて焦った一夜を軽く制し、一夜をヒタと見つめる。
「一夜だけ会う訳じゃないから言った。本当は家族のことは秘密にしておきたかったのは分かっているが仕方ない、許せ」
二人に向き直って言う。
「そういう訳だ。もし満に会っても一夜の兄だと言ってはいけない。言い出したりする判断は一夜に任せて知らないフリをしているんだ、いいな?」
「よく分からないけど一応分かったわ。要するに、黙って見守ってろってことね」
シンハが頷いた。
「良かったじゃない一夜君、これで目的が達成されるってことよね?」
「…ああ」
「…無事に再会出来るように祈ってるよ」
それまで黙っていた垂華が微笑んで言った。
「緊張してるの?話したい事とか整理しとくといいわよ?」
「それは…多分大丈夫」
生きていた。死んでなかった。満は生きてる。
「満は村で農家をしているよ。家族がいて、もう子供もいる。そして、これは一番大事な事だが…
一夜には辛いかな。水を差すようで悪いが…」
一夜の心臓が跳ねた。
「なんだ?」
その一夜の顔を見てシンハは目を伏せ首を振った。
「…やはり今は言わずにおこう、会えば分かるよ。
じゃあ私はもう引っ込もう」
そして威咲に戻ってしまった。
「威咲ちゃん、今巫女が出てたんだけど、威咲ちゃんは一夜君の家族のこと知ってる?」
「あ、うん、前に…」
「そ。…あのね、生き別れのお兄さんが次に行く村にいるらしいわよ?」
「!一夜」
威咲が勢いよく振り向いた。
「良かったね、やっと会えるんだね…!!」
自分のことのように。威咲は一夜に抱きついてそのままギュッと抱きしめた。
「良かった、本当に良かった…」
言いながらしゃくりあげ始めたので驚いた。
「どうして威咲ちゃんが泣くの…」
「だって、だって私も本当に嬉しいんだもん…」
「威咲…」
一夜が腕を出して威咲を撫でた。
威咲の息遣いも微かな震えも
「ありがとな」
「あーあ、まったく見せつけるわね~」
「それも旅の思い出だろう」
半目になった多摩に垂華がサラッと言った。
シンハはさっき何を言いかけたんだろう。水を差す事、と言った。
だが考えても分からない。生きていたのにトゥコに帰らなかった理由だろうか?一体何があるんだろう。
この間の夜あんな事が とゆーのは(143)white lily smells sweetを見てくり!スピカの好きなシーンです☆♪
一夜の父が見つかり※(114)~(125)、次回から兄。そしてcallの終劇が近づく。も~ずっとやってたいのにー☆最後まで付き合ってくれたら嬉しいですー☆




