(12)夏祭りで
Birth placeの後2ヶ月くらい空いてます。その間のこともいつか書けたらいいな。思いついたらですが。
一夜と威咲はある街に立ち寄った。バスの中継点の街だ。ここで2、3日羽根を伸ばそう。
二人で街中を歩いているとあるポスターを見つけた。それはあちこちに貼ってあった。
「へぇー、祭だとさ。しかも今日じゃん。だからなんか賑わってるのか。見に行くか」
宿の部屋に荷物は置いてメイン会場の広場へ向かった。
その途中、交通量の多い道で事故に遭遇した。跳ねられて倒れた人が血を流していた。
「うわー…ついてないな、こんな日に。なあ威咲」
そう言って振り返ると威咲の様子がおかしい。
目を見開き胸元を押さえてその場に立ちすくんでいる。親父さんのことを思い出したのかとわかった。
「威咲大丈夫か?」
支えると膝が折れしゃがみこんで激しく呼吸を乱した。
一夜は抱き抱えるようにして道路の端に寄ると背中を落ち着くまでさすった。
「一夜…ごめんね、もう大丈夫…」
そう言いながらも顔は真っ青だった。
尚更気晴らしになればと公園に連れて行った。
広場中央にはやぐらが組まれ、人でごった返していた。出店も並んでいて楽器を演奏している人もいる。
園内を歩くうちにいつもの調子を取り戻していったので一安心した。
「――――――――?」
それも束の間、威咲はふいに振り返った。
「なんか見られてる気がする」
「これだけ人がいるからそんな気がしただけじゃねぇの?お前気にし過ぎだって」
「そうかな」
その場はそれで何もなかった。
ぶらぶらしてやがて日が暮れると楽隊が出てきて軽快な曲を勢いよく演奏し始めた。
人々は次々にペアを組んで踊り始めた。くるくると激しく回る踊りだ。見ているだけでも目が回りそうだった。
「俺この踊り知ってる。前に職場で仲間に教わったんだ。その時は男だけだったけど」
ここではペアが多い。
その時おじさんが後ろ向きにぶつかってきて、振り向いて威咲に目を留めるとダンスに誘ってきた。
「あの、私は」
「こいつの相手は俺なんですいません」
にこやかに威咲を引き離すとさっさと手を引いてその場を離れた。
「…ねえ、私に踊り教えて?」
「は?やりたいのかあれを?」
みんなくるくる回っている。一夜は思った。この踊りって。
「うん、お願い」
「ちっ仕方ねぇな…そのかわり倒れても知らねーからな」
そう言うと一夜は片足を半歩引き片手を前に出してお辞儀をした。
威咲が目をぱちくりする。
「じゃあお願いします。手とれ」
軽く手を掴むとぐいっと引っ張られて急に回される。思ったよりきつい。
「きゃ…」
「ほら言ったろー?いっとくけど手加減しないからな」
「一夜…目が回る~」
「ははは」
容赦なく回されまくり、威咲はすっかり目を回してダウンした。
周りにも結構そういう人たちがいて、皆草むらで談笑していた。
威咲は頭がまだぐるぐるしていたが、一夜は涼しい顔で休んでいる。回す側だからそんなもんかと威咲は思った。
「ほ、本当に効くね、この踊り」
「だろ?俺なんか教えられてから二度と回される側にはなりたくないって思ったし」
「はあ…まだ踊ってる人たちいるね」
「…さっきは黙ってたけどこれって女を落とすための踊りらしいんだよな一応。ほらお前も目回ってダウンしたろ?そういう状態にして介抱してる間に恋に落ちちゃうーとかゆう。まあ今時そんなの話だけだろうけどな」
「そうなの?知らなかった」
「お前知ってても関係なさそうだもんな」
「まあ、そうだね」
少しだけ口を尖らせる。
「お前はそれでいいの」
一夜は両手を後ろについて両足を投げ出した。
「子供扱い…」
次からは曲が変わり、ゆったりした曲が演奏された。
しばらくその曲が演奏され、終わると太鼓がうち鳴らされ始めた。同時に広場にいた人たちがわーっと歓声を上げ、休んでいた人たちも一斉に広場に出て騒ぎ出した。
「?」
一夜と威咲が訳が分からず呆気にとられていると、近くでボッと音がした。ヒュルルル~~~
「!」
バーン!!真上で花火が炸裂した。小さな打ち上げ花火だ。火の粉が落ちてくる。人々はそれをわざと浴びては騒ぎまくっている。
「えらい過激だな」
ヒュルルル~~~…点火台が引き出され、花火が次々に上がる。
一夜と威咲は逃げずに座ったまま花火を見続けた。
「綺麗…」
「…だな」
一夜は威咲の頭を撫でてやった。
今笑っている笑顔は完全に純粋な笑顔だと思った。夏の終わりの夜空に大輪の花が咲いた。
最近、今度は白ワインに挑戦中。赤より飲みやすい。でも基本酒あまり飲まないんでチビチビやります。焼酎も少しだけ飲んだことあるけど、私は一番好きなのは日本酒かな?まだマッコリとか飲んだことないけど、その内試そう。
今回で起承転結の起は終わります。次回からもよろしく★




