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CALL  作者: スピカ
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(130)1週間の休養

 巻き気味にして山間部を終え、回復のために1週間休みにする。


 今は国土の中心から南西に抜けた辺りだ。リタの近くなので、折角(せっかく)なので休み中はリタで過ごすことにした。(リタは西部の主要都市。(ちな)みに南の中山間地域のまとまりが(しゅう)(威咲(いさき)の村のある地域)で、南西の沿岸にはもう1つの主要都市であるチタがある。鉄道は南北線が2本東と西にあり、その間を北側と南側で2本の東西線が(つな)いでいる。他はバス利用だ。)


 多摩(たま)はレターセットを買った。威咲が聞いた。

「誰に出すの?」

「故郷の家族よ。しばらく連絡してなかったから」

「へー。ついでに(れん)君にも出してあげなよ」

「えぇ?いいわよそんなの」

「そんなこと無いよ?きっとすっごくすっごーく、喜ぶよ」

「すっごく?」

「うん」

「まあ、書いてもいいんだけど…」

 顔が少し赤くなっている。

「あ、そうだ私たちのことも書いてね?」

「分かってる」

 多摩ちゃんも実はまんざらでもないよね。

「なぁに?威咲ちゃん嬉しそうね」

「え?そうかな。だってなんかホンワカしていいなぁって」

「~~いっとくけど押しきられてるのよあたしは?」

「うん知ってるよ」

 多摩が本当に赤くなった。分かりやすくて可愛いなぁ多摩ちゃんてば。

「あ、そうだ、多摩ちゃんそれ1つ(もら)えない?」

「いいわよ誰に出すの?」

「スズミさんたちへだよ。一夜(いちや)も一言書きなよ」

 振り向いて言ったら一夜は一瞬目を大きくしたがすぐ細めて言った。

「面倒だからお前が書いて」

「えー、いいの?」

「いいの」

 さっきの一夜の表情、可愛いかったな。と内緒で思いつつ、威咲は仕方ないので(あきら)めた。




 多摩が家族に手紙を出したのは帰郷のためで(実家には電話機が無い)、じゃあ行ってくると言って行ってしまった。この近くなんだそうだ。

 垂華(すいか)が簡単に地図を書いて説明してくれた。

 湖南(こなん)村。沿岸にあり土地の7割が畑ののどかな場所で唐辛子が特産品。

「多摩の家も唐辛子農家だよ」

「へーそうなんだぁ」

「どうりで(から)いもん食い慣れてるんだよな」

「小さい村だから退治は1日で済むけどその時は是非(ぜひ)とも本場の湖南料理を食べさせたいな。すごく辛いけど美味しいんだ。もう1度食べたくなる味っていうのかな?覚えると癖になるから」

「わぁ、私も食べてみるよ、楽しみ」





 これから先のエリアにはまだ魔物は目覚めていないので封印を強化し直すだけでいい。念のため見回りはキチンとするが。


 威咲は、あの夢のことは気にしないことにした。気にしても分からないから。

 後は、ただ頑張ろう。何事も楽しむのがいいってお父さんにもよく言い聞かされてたし。




「アイル達は今どうしているの?」

「アイルは地道に戦争回避派の人達と関係を結び始めているよ。将来派閥が出来たらアイルはその中心的人物だね。

結局父親譲りのいい為政者になりそうな感じだな」

「すごいね、私には真似出来ないよ」

「でも威咲ちゃんも結構平和に貢献してると思うよ?民間レベルでね」

「特に何もしてないよ?」

「そんな事無いよ、威咲ちゃんはいつも人の為に頑張ろうとするじゃん。それに威咲ちゃんがいると(なご)むし」

「そうかな」

 威咲がはにかんだ。

 今は、オープンテラスというか、路地裏によくある道路にテーブルと椅子を出した店で昼食をとっている。

 一夜は思う。垂華のやつ余裕が出てきたら軟派(なんぱ)さも回復しやがって。まあその方が安心するけどさ。

 メニューはハムや野菜を挟んで特製のタレをたっぷりかけたパンだ。

「食べたら映画でも見に行ってみよう」

「うん」





 リタでは映画を見て、カフェでお茶して、ケーキ屋に行って、川辺で遊んで、と楽しむことに専念した。話しながらの散歩もたくさんした。

 そして3日後多摩が合流した。

「そう、じゃあかなり楽しんでたのね。良かったじゃない」

「うん、思い出がいっぱい出来ちゃった」

「そう」

 この時の多摩の微笑(ほほえ)みは余りに自然だったから、それにもう1つの理由があったとはその時は思いもしなかった。

 多摩は切なさを隠す。垂華はこの退治が終わったら自然に帰るつもりなのは多分本気ね。身体ももう限界だし、仕方ないのよね…


「あたしも入った4人の思い出も作りましょ!」

 寂しさをこらえて元気に多摩が言った。あと3日間は休養日だ。

「街歩きに行くわよ!」

 多摩がグイグイ引っ張って見所を全部回った。

 大きな噴水のある公園、駅前の有名な像、アートな落書きだらけの通り、無料公開の有名な庭、大通りのショーウィンドウ…


「流石に疲れたわね」

「1日中歩いたからな」

「あ、夕焼けになりそうだよ」

「!それがあったわ!最後の締めに川辺で夕焼けを眺めましょ?」

 みんなで賛同して川辺に移動する。

「ただこんな風にみんなで歩くだけでもいい思い出よ?」

「ふふっ多摩ちゃんがいない間にもたくさん3人で歩いてたよ?」

「そうなの?あたしがいない間に」

「湖南はどうだったんだ?」

「相変わらずだったからなんか気が抜けちゃったわ。…まあ気にしないように(まじな)いをかけたのはあたしだけどね…

変わらないから安心したのよ。おかげでこっちも久しぶりに羽を伸ばしてこれたわ」

「お前普段から羽開いてんじゃん」

 一夜が突っ込む。

「う、まあ、はたから見たらそう見えるのかしら?」

 夕焼けが街のシルエットに段々沈んでいく。全てを優しいオレンジ色に染めながら。

「…みんなでこんな風に夕焼け見れるのってあと何回あるかしら」

「さあな…」

 垂華も多摩も穏やかな表情で、それを見た威咲は言った。

「また集まればいいよ。終わっても、またいつか会おう?」

「そうね」

「そうだよ、約束しよう!」

「ええ、いいわよ」

 この約束がきっと守られますように…

 威咲は願った。





垂華は、一夜&威咲には内緒だけど実は、死体なんです。それも50年前の…

多摩は垂華ととっても仲良しなので、別れがせまるのが悲しい…

今回はホンワカだけどそんな話。あ、サンドイッチ美味しいんだよ~?(サイズは約20㎝)ソースはニンニクの効いた白いのと、トマトがベースの赤いのが両方かかっているの!

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