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CALL  作者: スピカ
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(122)その微笑みに何を隠す

アイル達の問題も、一夜の体の問題も解決したら…威咲はまた不思議な夢を見て目覚めた。前に見てた声の夢の続きなの?声の彼女は「死にたくないならもうやめろ」と言った…

 その夜は快晴で星がよく見えた。

 シンハが庭で夜風に吹かれている。

 夜はまだ肌寒い。何か考え事でもしているのか。

 廊下から見つけて一夜(いちや)は外に出た。

「考え事か?」

 後ろ姿でもシンハだと分かった。

「………いや、ただこうして夜に耳を澄ますのが好きなんだ」

 シンハは振り向かずに答えた。

「お前は威咲(いさき)が大事か?」

 唐突(とうとつ)な問いだ。だがいつものことだ。

「そうだな」

 シンハにはどうせ見透かされるから。

「…そうか…」

「何でそんなこと聞くんだ?」

「ただ、これからのことでな」

「…」

 そこでようやく一夜の方に向き直った。

「ところで以前ああ言ったが、お前は本当に手を出さないな」

 何のことか分かって一夜は目を伏せた。

 あの日威咲は傷ついた。その傷はまだ癒えてはいない。

「まだいいよ」

 するとシンハが声に出して笑った。(小さくだが)

 本当に愉快(ゆかい)そうに。

「お前は本当に愉快な奴だ。私を気にしているのならいっそ退治が終わるまで待て」

「ふん」

 一夜は特に気にしない。

「…」

 シンハはひとしきり笑ってから聞こえないくらい小さく(つぶや)いた。

「威咲は幸せだな」

 だが一夜には聞こえていた。風が吹く。

「…俺はあんたも大事だと思うぜ」

「は…」

 一瞬だけシンハの表情が変わるがすぐまた元に戻る。

「ありがとう」

 相変わらず感情の読み取れない微笑(ほほえ)みでそう言った。





 次の日、威咲はやはりあの夢が気になってウズウズしていた。

 多摩(たま)の所に行って聞いてみる。

「ねえ多摩ちゃん、前に言ってた死んだ垂華(すいか)君の恋人って何ていう名前なの?」

「え?何で?」

「ただ何となく気になって…」

「ラナよ」

「ラナ?」

「そう。綺麗なコだったわ。華奢(きゃしゃ)で色が白くて黒い目が大きな」

「髪は長かった?」

「ええ。()()ぐな黒髪を腰の上辺りまで伸ばしてたわ」

 やっぱり。多分、あの夢で見たのはラナさんなんだ。

 多摩は腕組みをした。

「…夢にでも出てきた?」

「え…」

 多摩は真っ直ぐ威咲を見ている。

「ううん、ほんとに、ちょっと思い出して気になったから聞いただけ。何でもないから」

「そう」

 なんとなくその場を後にする。

 多摩は見送り、小さく息をついた。





 午後、威咲は窓辺で本を読んでいたが、急に眠気が差したので本を置く。壁に寄りかかって目を閉じるとすぐに意識が遠のいた。


 威咲は夢を見ていると分かった。

 目の前に自分がいると思ったが鏡ではない。

 自分じゃない、これがシンハだと分かった。シンハが口を開く。

「ようやくお前と話せるようになった。もっと早く出来れば良かったんだが上手くお前の意識を(つか)めなくてな。

同時に二人意識を表に出すことは出来ないが、夢の中みたいな所ならお前と話せることが分かった」

「あの、いつもお世話になってます」

 ペコリ、とお辞儀する。これでいいかな?

「よい、威咲に力を使わせるのは私の消耗を()けるためだからな」

 シンハって一見取っ付きにくいけど、って一夜が言ってたっけ。

 そうだ、あのことを聞かなくちゃ!

「あの、聞きたいことがあるんです」

「私が言いたいのもそのことだ。…夢を見たんだろう?ラナの」

「!そうなんです。それで…ラナさんの意識は実はまだちゃんとあるんですか?」

 シンハは此方を見ながら首を振った。

「あれはラナの欠片(かけら)だ。この魂に刻まれたラナの残留思念…。仮にラナが存分していたら威咲は譲る気でいるのか?」

「…いえ、でももし可能なら垂華君にラナさんに会わせてあげられると思って」

「よせ、(つら)くさせるだけだ。

まあ、ラナはもういないからいいんだがな」

 シンハは威咲の目を見たまま言う。

「私の中のラナだった欠片が、お前に訴えたんだろう。私にもその声は聞こえていたから。

私が目覚める前にも聞こえていたんだろう?私もボンヤリ聞いたから…あなたはこっちに来ないで、と…

巫女として目覚めたらいけないと言いたかったんだろう。今後生まれ変わるはずの自分に向けたメッセージとも言えるな」

「どうして…あ」

「…退治中に死んだからな」

 そこで二人共少し黙る。先に開口したのはシンハだった。

「とにかく、威咲はラナのことは気にしないでいいと言いたかったんだ」

 シンハが言い終わると視界に(かすみ)がかかり始めた。夢が終わっちゃう!

「シンハ、また話したい時はどうすればいいの?」

「威咲からは話しかけられないから、(おり)を見て私から話す、今のようにな…じゃあ私は一旦消えるぞ」

 そこで夢の中の意識は途切(とぎ)れた。





ついにシンハと威咲が会って話せました~

この二人、同じひとつの体に宿る2つの違う人格(いしき)…魂は体にひとつで、魂自体はシンハなんだけど、転生したシンハの意識が目覚めるまでの年月を過ごした、いわば時が作った人格が威咲。

だから今回みたく意識の世界でしか会えないです。


前の方や続きも読んでくり★

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