(111)rescue
再び突然現れたアイルとロイ、今度は一夜をさらって消えた。「ここらが落とし所だ」とすぐ後を追い消えた垂華。
「一夜を返すんだ!」
後を追って現れた垂華をアイルは面倒そうに睨む。
「こいつが何だっていうのよ」
「威咲ちゃんの恋人だ」
「…。アハハハっ!あんたまた失恋したの?その恋人を守ってやろうなんて本当にお人好しね!」
「悪ぶるなアイル!分かってるんだぞお前がオオクラに伯父を人質にとられてることぐらい!」
「…っ!」
睨み合うが黙っていたロイが一歩前に出た。
「…そうだ。お前がいたらと何度思ったか。…力を貸してくれ」
動揺して目を見開くアイル。
「ロイ、何を…っ」
「アイル、もう敵対するのはやめよう。もう仇はとったんだし、無駄に悪者になる必要は無いよ。もう手を汚すのはよそう」
「…っ」
拳を握りしめるアイル。
「アイル?」
あんなことをしたのにこいつらはずっと私達に呼び掛けてきた。
本当はこいつらがいてくれたらと思っていた。けど今更後に引けないと必死に耐えてきた。なのに…っ…
「…そうよ、本当は…。助けて…」
顔を歪めて俯いた。プライドを折る選択をしたのだ。
「…分かった。後は任せろ」
それだけ言うと垂華は空間移動の扉に消える。
「僕も手伝ってくるよ」
垂華を追って消えるロイ。
「…っ、何よ…」
アイルの頬に一筋、雫が伝わった。
さっきの争いでそこら辺は散らかってしまっていたので多摩と威咲は片付けてから家の中に入り、垂華達を待った。
「大丈夫かな」
膝を抱えた威咲が心配そうに言った。
「大丈夫。信じて待ちましょ」
そう言ってもうすぐ3時間になる。時計の振り子の音だけが響き続ける。
更に時間は過ぎ、もう午後2時になった頃、気配が現れたのを察知した多摩が言った。
「帰って来たわ!」
急いで玄関に走る。
玄関にはまだ気を失っている一夜を担いだ垂華が靴を脱いでいるところだった。
「良かったぁ~一夜君も無事ね。他も上手くいったのよね?」
「ああ。居間で説明するよ、まず一夜を下ろしたい」
「そうね」
一夜の靴を脱がし、居間に運んで横たえてから垂華が話し出す。
「ふー。…さて、じゃあ報告。その前に何か…」
多摩がお菓子を取り出した。つまみながら話す。
「まず一夜だけど、二人の後を追ってアイルにラウルのことで脅されてるだろうって言ったら、先にロイの方から態度を変えて折れてきて…アイルにもう敵対するのはやめようって言ってね、そしたらアイルも折れて…
だから俺は一夜をアイルに任せて先にオオクラ達の処理に向かったんだ。ロイが進んで手伝ったよ。オオクラ達や他にも知っている者がいないか調べて、それら全てに一網打尽の記憶操作をしてきたよ。
…アイル達が牢にいたこと自体を記憶から消した。
証拠不充分で捕らえられずにいた内に二人揃って姿を消していたことにして、それをオオクラが探し出してラウルをネタに言うことを聞かせていた、オオクラが欲しがったのは研究データと機械だけってことにして、不思議な力を使う一族の話なんてのも勿論消した。
…これで安心」
垂華は胡散臭い笑顔を見せた。その顔を見てもう本当に解決したんだと胸を撫で下ろした。
最近アブリルのアンダーマイスキン(アルバム、YouTubeで見つけてさー)を聴きながら瞑想してる。このアルバムは瞑想に良い…
一夜は165㎝のやせ形だから、軽く担がれちゃうのだ★
次回も見てね~!




