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CALL  作者: スピカ
122/190

●(109)ぬくもり

 一夜が夕飯の支度(したく)をしているのを多摩(たま)が手伝いながらつきまとっていた。

「そういえばさー一夜(いちや)君の誕生日っていつなの?」

 一夜はギクッとして動きが止まる。

「どうかした?」

「いや?別に?」

「そう。ねえいつ?」

「さあな」

「え」

 多摩が目を丸くする。

「まさか知らないわけじゃないわよね」

「知らん」

「…じゃあ今いくつ?」

「…26」

「え~!?出会った時は23よね。23の11月だから、えーと、2回11月があったから、もう誕生日は過ぎたってこと?

ねーいつ?も~あたしは皆の誕生日を祝いたいのよ!」

 しつこく聞かれて一夜は根負(こんま)けした。肩を落として言う。

「…2月10日」

「へー、って昨日じゃない!すごーい偶然ー!どうして黙ってるのよ」

「別に意味は…それにそんなのいちいち祝わなくても」

 言って思い出したのはオッサンが祝ってくれた去年の誕生日。

 初めて人に祝って(もら)った。温かい思い出。

「俺の誕生日なんて祝わなくていいよ。面倒くせーし」

 フライパンを揺する。オムライスのケチャップライスだ。

「…そうやって自分の(から)に閉じこもってたなんて意外。誕生日は祝わなきゃいけない決まりなのよ?」

「ねえよそんなの!」

「も~一夜君てばもしかして祝われるの苦手?

あのねー一夜君、誰でも一緒に祝える人がいるのは幸せなことよ?貰えるものは貰いなさい?」

「多摩…」

 いつも、()けてきたのに。

 遊び仲間が出来ても教えずに、そもそも一ヵ所に長居しないからでもあったけど、俺が生まれたことなんか祝うことじゃないってずっと思って。

「だけどいいって」

 祝われるべきじゃないんだ本当は。そのせいで不幸になった人がいる。

「え~ダメよそんなの」

 残念そうに多摩が言う。

「せっかくあたしが特製のスープを作ってあげようと思ってたのに」

「お前ほんと祝うの好きだよな」

「ん~しょうがないなぁ」

 言うなよと言おうとして振り返るともう多摩はいない。

 しまったと思ったがもう遅い。




「「「誕生日おめでとう一夜」」君」

 3人に言われてなんか恥ずかしい。

「…サンキューな」

 一応礼を言った一夜は少し不貞腐(ふてくさ)れているように見える。

「照れ屋だよね意外に」

「明日は特製スープ作るわよ?」

「わぁっ久しぶりだねー」

 お構い無しに盛り上がる3人。

 威咲(いさき)はあの激辛でいいのか?そんな嬉しそうに、と一夜はチラッと思った。




 寝る前に部屋で二人でカードをしている時威咲が言った。

「なんとなく聞かないできたけど、どうして内緒(ないしょ)にしてたの?」

「俺が生まれたせいで不幸になった人がいるのにめでたくなんかないだろ」

「…一夜」

 威咲が静かに立って横に回ると腕を伸ばした。

 フワッと威咲に抱かれる。

 意外な行動で一夜は意表を突かれた。

「でも私たちの気持ちも忘れないで?

私たちは一夜を必要だと思ってる。大事だと思ってる。だから、生まれたこと喜んでる人もいるんだよ?」

 威咲の手に少しだけ力が入る。

「それに…私の一夜を好きな気持ちも捨てられることになるんだよ?だからそんなこと言わないで」

「…――――――」

 あったかい、(ぬく)もり。

 誤魔化(ごまか)して否定しながらもずっと心の底で()えている、もの――――――――


挿絵(By みてみん)





威咲が一夜を抱いて、意外な行動というのは、威咲はある事件以来精神的な理由でスキンシップが苦手になってるんです。((52)clossing (53)間に合った…? 参照)一夜は少しずつ慣らしながら様子を見てます。無理はしないけど、たまにギュッとしてるよね。威咲はトラウマだらけだなぁ。

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