●(105)光と闇
ついに出てきた魔物。一夜は無事に助けるため多摩は頑張るっ!
魔物が目を輝かせて妖気を爆発させる。
普通の人間なら破裂してしまうが多摩は瞬時に気の盾で相殺してやり過ごす。
「殺す、死ね…!」
再びさっきより強い妖気を放ち、多摩はまたやり過ごし、魔物が怒って掴みかかる。
多摩は術で空間から青白い光の剣を取り出して応戦した。剣がかすり魔物が声ならぬ叫びをあげる。
この剣は肉体は切らずに魔物の体のみ切る。なので一夜の身体は傷つくことは無いが中の魔物は切られた部分が焼けて消滅する。
今現れている魔物は今まで形を持たずに一夜の中に存在したものがエネルギーを貯め込み一夜の身体の中で形を成して乗っ取っているものだ。
この状態になったなら魔物を身体から引き剥がすことが出来る。だが一人では出来ないので垂華が来るまでに出来るだけ弱らせておくのだ。
魔物は体から黒い透明な触手を出し多摩を絡め取ろうとするがそれを剣で切り伏せると切られた触手は青白い残滓を残して消滅する。
「おのれ…!」
魔物がまた今度は最大の妖気を爆発させた。
気の盾で身を守りながら多摩は素早く術を放った。部屋全体が結界で取り囲まれる。
「これで逃げられないわよ!」
そこに扉で戻ってきた垂華と巫女が加わる。
多摩が結界を収束させ魔物を動けなくする。
垂華と目配せを交わし、二人で同時に1つの術を使う。魔物を一夜の身体から引き剥がすのだ。
魔物が吠え、抵抗が手にビリビリと伝わる。
「負けないわよ…!」
集中し更に力を込める。
魔物が叫んだと思った瞬間、一夜の身体から分離して一瞬無防備な状態になる。
それをすかさず垂華が捕縛して光の網で締め上げる。出来るだけ締め上げた所で多摩に合図する。
「いくわよ…食らえ!」
渾身の気合いを込めて剣を振り下ろす。
魔物に到達した瞬間に反駁する力同士激しく反応したが力でねじ伏せるように押していく。剣は魔物の身体に刺さり、中から光が魔物を灼いていく。
そして、バーンっ!と青白い光が爆発したように見えて終わった。
相当力を使った多摩が肩で息をして言った。
「やったわよ…っ」
見届けて巫女が前に進み出る。
「よくやったな。次は私の番だ」
そう言うと呪文を唱える。するとそこらに満ちていた妖気が浄化されて無くなった。
「次は一夜だな」
一夜に手をかざして気を発し、一夜の身体を浄化の光で灼いていく。これで体内に残る妖気もろとも魔物の残滓を残らず無くすのだ。
そうして、それで一夜の問題は解決されたと思った。
が身体から魔物が一掃されきった瞬間、一夜の身体から光がほとばしった。
巫女が驚いて手を引く。垂華と多摩も目を見張った。
「これは、巫女の力…!」
すぐに二人同時にその力を無くす術を使った。
すると光は収まっていったので胸を撫で下ろす。
じっと真剣に見つめていた巫女が一夜にそっと触れた瞬間、また光が爆発した。
「なんで…っ」
一夜が身をよじり苦しんでいる。
多摩が再び呪文を唱えると光は収束し一夜の苦しみも終わった。ぐったりして浅い呼吸になっている。
「…どうやら、魔物が消えて私だけの力が残り均衡が崩れたらしいな。恐らく私が力を使えば一夜に余波が伝わり、一夜はその力に耐えられないだろう」
「…」
垂華と多摩は何も言えなかったが同じ見解だった。
今までは魔物の力と相殺していたから何も感じなかったのだろうと。
巫女は目を閉じ、重い決断を下した。
「私は今後力を使えない。すまないが残りの仕事は二人でしてくれないか」
「なんでこうなるのよ…っ」
多摩は悔しがったが、二人とも頷いた。
仕方ないのだ。やはり普通の人間の肉体にはこの力は多大な負荷となるということなのだ。その魂の宿る身体だけが使えるものなのだ。
巫女は目を閉じ、威咲に戻った。
巫女は再び自分は裏に回ると選択してくれた…譲ってくれて…威咲に久しぶりに戻ったね。でも、あぁも~なんでどっちかなの?




